10 少年の正体
どうぞよろしくお願いします。
カッシーナ公爵家の客間には、治安警備局のマイヤー副局長が訪れていた。
ルーベルトの上司だ。
あれから、リアーナとエドワードはルーベルトとシャルロッテと合流し、治安警備局も到着して少し話をした。
ルーベルトの運転する車でカッシーナ公爵家に戻り、風呂に入って着替えたリアーナとエドワードから、さらに何が起こったのか詳しい報告を受けていたのだ。
「ジョンの母親の名前?」
副局長がリアーナの質問に戸惑ったように聞き返す。
「ええ、あの女性が母親ですか?
マイアという女性の名を口走っていて。
その時、マイアというのが少年の母で、この人は……母親の友人ではと思ったのですが」
「そうか、そう感じたんだね。
メリメ家も何かを隠しているんだよな。それが何かわからなくて。
で、男が子どもを突き飛ばした時にすぐ君も飛び込んだと」
「はい、思ったより深くて、私でも足がつかなくて……。
エドワード様が助けに来てくれて本当に助かりました」
「本当に後を追って水に入るのは、危険なんだよ。
そういう時はまず人を呼ぶんだな。
……リアーナもエドワードも男の顔は見たんだな?」
「「はい」」とふたりは同時に答える。
副局長は折りたたまれた紙をポケットから取り出してリアーナに手渡す。
広げて見たリアーナが息を飲む。
「この男です! ね! エドワード! ……様」
思わずエドワードを呼び捨てにしてしまい、それに気がついたリアーナは赤くなってから、慌てて様を付け足した。
エドワードはそんなリアーナを見てうれしそうに言った。
「リア、エドワードでいいよ」
リアーナが首を振る。
「いえ、申し訳ありません」
微妙な空気になったのを破ったのは副局長だった。
「確認、ありがとう。
この男はジョンの護衛としてメリメ伯爵家に1週間前雇われたそうだ。
偽名だと思われるがカールと名乗っていたそうだ」
「カール? ジョン? ……マイア」
シャルロッテが真顔で呟く。
「護衛を雇ったということは、メリメ家で何かあったのですか?」
ルーベルトが質問した。
「1カ月前から少年が襲われている事件が続いていると思わないか?」
「……はい、今日で3件目か? みんな6歳くらい?」
「ああ、今回で3人目。
しかも、全員、6歳で、ジョンという名前だ。
それで、2件続いたことを知ったメリメ伯爵家でも護衛を雇ったという訳だ。
しかし、何故、護衛を雇ったかということに対しては、用心のためと言い張るばかりで、詳しいことはだんまりだ」
「そうですね。
ジョンという名の6歳の少年なら、他の家にもまだまだいるでしょう。
何かしら襲われると考えられる理由があるから護衛を雇ったのでしょう」
ルーベルトが考え込む。
「雇った護衛が犯人だったなんて、親としてはショックでしょうね。
紹介した斡旋業者は?」
エドワードが言った。
「急ぎということで十分な裏付けは取れないまま、腕の良さということだけで斡旋したらしい。
それで、メリメ伯爵家から治安警備局に依頼があった。
リアーナとエドワードにしばらくジョンの護衛を頼めないだろうかと」
エドーワードが驚く。
「えっ? リアと俺?」
シャルロッテが静かな声で言った。
「まだ、ジョン少年が襲われる時期は終わっていないわ。
リア、頼んだわ」
リアーナは頷く。
「わかりました、お嬢様」
「たぶん、今の情勢だともう1ヶ月もかからないはず」
シャルロッテの言葉にルーベルトと副局長が困惑の声を上げた。
「シャルロッテ、どういう意味だ?」
ルーベルトの問いかけにシャルロッテは微笑んだ。
「そのままです。
何故、ジョンという名の6歳の少年が襲われたのか。
何故、急に1カ月の間にふたりのジョンが襲われたことを知り、メリメ家では護衛を付ける話になったのか。
メリメ家が動いたことで本当のジョンの存在を知らしめる結果になったこと。
そしてジョンの母と思われたメリメ家の女性は母ではないですね。
さっき、リアが話してくれた『マイア』が本当の母親でしょう。
……犯人の名前、たぶん、本名はカルロスかカルロでしょう。
この国ではチャールズかチャーリーになりますが、呼び名にすぐ反応できるようにバイエルン王国読みのカールを選んだんでしょうね。
そこから導き出されるのは……、たったひとつでしょう」
マイヤー副局長が眉をひそめた。
「バスク王国絡みか?」
シャルロッテが頷いた。
読んで下さりありがとうございます。
歴史を習っている時、国によって名前の読みが代わるのが面白くて、いろいろ調べたことがあります。
カールだとシャルルにもなるかな?
これからもどうぞよろしくお願いします。




