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伊達政宗、輝宗を殺すのは伊達じゃない その参陸

 伊達政宗、倒れたり! 何者も近づけさせない見えない壁のような妖術も切れ、彼を守るものは全て消えた。刀は深く胸に刺さり、政宗はほんの少しも動かなくなった。

 成実は即座(そくざ)に政宗の危険を察知し、急いで救出に駆けつけた。成実は刀を使いて敵を一掃し、政宗を抱き起こす。屋代景頼も政宗が斬られたと知り、二人に近づこうとする敵方を倒す役目を担った。

「成実殿! 若様は無事ですか!?」

「胸が貫かれて出血が止まりませぬ! 直ちに城に戻り、医者からの治療が必要です!」

「では、私が援護(えんご)します!」

 景頼は刀を鞘に入れて、(ふところ)から二丁の拳銃を取り出した。片手に一丁ずつ持ち、引き金に指を掛けた。

「私が時間を(かせ)ぐので、早く若様を城へ連れて行ってください!」

「感謝いたします!」

 景頼は引き金を引いて拳銃から弾丸を放ち、正確に的を射た。殺しまでにはいかないものの、行動不能にするにはちょうど良い威力だった。

 成実は政宗を抱きかかえると、急いで馬の元まで走った。するとその進路を(ふさ)ぐ敵方がいて、景頼は二丁で連射を行った。弾が切れると拳銃を放り投げて、槍にも似たリーチの長い刀を取り出した。この刀は、政宗が景頼の戦い方に合わせて特注したものである。

 この特注の刀は槍のように振り回すだけで威力を発揮(はっき)するものであり、かなりの重さを持ち合わせる。この重さにより、景頼が刀を振り回すだけで直撃した者は、本当の意味で粉骨(ふんこつ)砕身(さいしん)となる。

「いけえええぇぇぇー!」

 また、景頼は政宗から教わった構え方がある。重心が地の底にあるような構えで、攻撃を受けようが倒れることはない。

 変わり種の刀を振り、景頼は敵方の中へ突進していく。成実は景頼が注目を集めている間に迂回(うかい)し、数人の敵方を切り倒しながら馬に近づいていった。

 政宗を馬に乗せ、成実は馬を走らせた。景頼は刀を振り回しながら、成実達が馬を走らせて城へ向かったことを確認する。一安心をすると、刀を再度振り回す。成実と政宗が前線から離脱したため、景頼は主力として大いに活躍しないとならない。

 大きいとも小さいとも言えない、つかみ所のない目を、景頼は(まばた)きさせた。視界は良好、彼は負ける気がしなかった。


 政宗を馬に乗せた成実は、城への最短ルートを辿(たど)りながら馬を走らせる。その間にも、政宗の流血は止まることはない。

「若様、しばらくお待ちください!」

「な......成実か」

「話さないでください! 出血が酷くなります!」

「ああ、そうだな」

 政宗は手を動かし、胸に刀が刺さっていることを確かめた。

「どうしましたか、若様?」

「俺、死ぬのか?」

 彼の頭の中は、死ぬ、という恐怖が(あふ)れていた。無理もない。政宗の傷口から流れ出る血は、馬一頭を真っ赤に染めるほどの量にも匹敵(ひってき)するくらいだからだ。実際に、政宗と成実を乗せる馬の大半は血で赤く染まっていた。

「若様は死にません! 城に到着するまで耐えてください!」

「......おう」

 胸に刺さった刀を抜くと、さらに出血が酷くなってしまう。だから、抜くことは出来ない。政宗は痛みを(こら)え、刀を強く握った。

「成実。馬が走る衝撃で、患部が痛いのだが」

「!?」

 この状況にどう対処するべきか迷った成実は、患部を直接押さえながら政宗に我慢してもらうことになった。

「いっ!」

「ど、どうしました!?」

「痛いんだ......」

「すみません!」

 そういうことがあり、馬は何とか米沢城に戻ってきた。成実は政宗を丁寧に降ろし、医者を呼び寄せた。

「医者! 医者はいるか!?」

 一生懸命な成実の叫び声に、城に居合わせた者達が駆けつけた。そして医者が呼ばれ、政宗の患部を見る。

「これはいけない! すぐにでも治療室に連れて行きましょう!」

 政宗は家臣らに連れられて、治療室に運び込まれた。医者は何をするべきか見極め、治療を(ほどこ)す準備に入った。

 治療室には医者以外にサポートをする者が数人だけ残り、他の者は追い出された。成実は、子供を出産する夫のごとく、治療室の前を歩き回った。

 治療室の中からは、政宗の叫び声が聞こえてきたようだ。成実は治療室の扉を叩いた。

「若様! 若様っ!」

 成実の声に、反応する者は誰もいなかった。やがて治療が終わり、医者が治療室から廊下に出てきた。

「若様は!? 若様は無事ですか!?」

「一応、最善は尽くしました。ただ、奇跡ですよ」

「へ?」

「若様の胸に刺さっていた刀は、ギリギリのところで脈や心臓を外して貫通(かんつう)していました。奇跡に近いことでしょう。そのお陰で死にはしませんでした。出血量は尋常(じんじょう)ではありませんが、あの状態なら助かると思います。まずは安静にしておいてください」

「わ、わかりました」

 成実は安心するのと同時に膝から崩れ落ちて、肩を落とした。

 医者はニヤリと笑みを浮かべながら、その場をあとにした。

「わ、若様!」

 思考回路が正常に動き出すと、成実は治療室の中に飛び込んだ。この治療室も政宗が考案した技術などが盛り込まれていて、これからも若様に習うことはたくさんありそうだ、と思いながら成実は政宗に歩み寄った。

 政宗は息をしている。動いている。成実はそれを自らの目で見ると、手を腰に回して体をそり返す。そして、ため息をもらした。

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