伊達政宗、輝宗を殺すのは伊達じゃない その参伍
投稿を忘れていました。すみません。
仁和から受け取った本には『戦国時代の敵方の人数を数える者は、実際の敵方の人数より半分ほど減らして報告する』とあったのだ。
つまり考えるならば、敵方の人数を報告した者は半分減らして報告したわけで、実際は二十万人いたわけだ。だが、俺は素直に十万人だと思い込んで十五万人を向かわせたんだ。
正しくは二十万人VS十五万人だ。そりゃ、十五万人の方が負けるに決まっている。五万人の差でも、戦の行方を左右するのだ。
本を床に置くと、俺は仁和を呼んだ。
「答えに辿り着いたようですね」
「最初からわかっていたのか」
「はい」
俺は当主になったばかりで、戦国時代のそういう常識は知らなかった。仁和の方が戦国時代にくわしかったようだ。
「助かった。感謝を申そう」
仁和は一度頭を下げ、姿を消した。
これで次に活かせることだろう。これから俺がやるべきは、折れた刀の代用品として権次と兼三に特注しよう。
権次がいる場所といえば、あそこかな。俺は権次が設計図を書くのに使う部屋に向かった。するとやっぱり、権次は設計図を書いていた。
「権次! 新たな刀を作ってくれるか?」
「ああ、確かに。刀が戦場で折れたようですね」
「そうなんだよ。新たな刀が必要だ。ついては、また兼三と権次に任せたい」
権次は腕を組んだ。「次は若様自身が自らの刀を作ってみてはどうでしょうか?」
「俺が刀を作るってことか?」
「はい」
なるほど。刀を自分で作るのか。それも悪くない。兼三に教わりながらなら俺でも刀を作ることは出来るだろうし、一度はやってみたいと思っていた。権次にしては良い提案だ。
「よろしく頼もう」
「ではまず、設計図を書くことから始めましょう」
「おう!」
まず権次に、どんな刀が戦に向いているか教えてもらい、究極の刀の形を追求した。
次に兼三に刀の打ち方を教わり、ハンマーで玉鋼を殴りつけた。バンバンバンバン叩き続け、兼三に手伝ってもらいながら整形をしていく。
「これで完成というものですよ!」
完成した刀を受け取り、鞘に収める。腰に添え付けると、案外と様になっているようだ。
「二人には協力してもらった。あとで褒美をくれてやる」
「ありがてぇです」
「助かりますぞぉ!」
俺は自作した刀を大切に持ちながら、翌日に向けて戦の準備を始めた。これに小十郎と仁和は同伴させない。小十郎と仁和には悪いことをしてしまったからな。
今回連れて行く主力は成実と景頼、あとは忠義と二階堂。他は雑兵でかまわない。
明け六つ、雑兵並びに成実と景頼、忠義、二階堂は馬にまたがり、ものすごい剣幕で前だけを眺める。俺は当たり前のことながら先頭に立ち、名馬(?)ウルトラウィークを撫でる。
「進め! 今度こそは誰一人として死んではならぬぞ! 行くのだ! 必ずこの世界を統治し、平和な国を実現させる!」
戦国時代を終わらせるのは徳川家康だ。伊達政宗が戦国時代を終わらせるわけじゃない。ただ、理想を言って悪いことはない。理想を言うだけで行動しない奴もいるが、俺は必ず理想を言って実現までこじつける。
馬は大地を踏んで進む。その大きく硬い足の底は、かなりの足音を発し、戦場に向かう俺達をかき分けながら足音を響かせる。
敵は目の前、人混みが道を塞ぐ。これでは戦うしかない。抜刀し刀を握り、馬の背で立つ。そこから飛び降りると、前に進み出でて刀を振るう。
急所を見極め、そこを微妙に外して斬る。
「来い! 我こそが伊達藤次郎政宗! 伊達家当主にして、貴様らが取るべき首の持ち主なり!」
俺は自分に敵を引き寄せ、刀を振り回す。槍としての戦い方だが、防御壁があるからそこまで危険というほどでもない。俺は刀を振り下ろした。
しかし、振り下ろした刀は真っ二つに割れた。そしてまずいことに、斬ってきた敵は起き上がって襲いかかってきた。おそらく、この時代に見合わない鎧を装着しているか何かなのだと思う。二十一世紀の技術が盛り込まれている可能性がある。
江渡弥平か? ここにきて、奴の存在がまたも邪魔になるとは思いも寄らない。
「掛かって来やがれ!」
刀が折れた理由は、玉鋼の叩きすぎだと思われる。玉鋼にある不純物があればあるほど硬くなる。玉鋼を叩きすぎると不純物がなくなる。つまり、刀の硬さ、耐久力が足りなかった。
攻撃する方法は何があるか。今持ち合わせているものとなると、硬いものは鎧だ。
鎧を脱ぎ捨てて、鉄を抽出して戦えるくらいの耐久度にする。
「鉄塊でどつくんだよっ!」
鉄塊にて頭を叩き、体を床に崩させる。骨の数本を折り、周りの敵を徐々に倒していった。ただ、防御壁にも限界はある。神力にも限度は付きものだ。あと数分でそれは切れる。
それまでに一掃をしないと死ぬことは、俺にもわかる。そうして防御壁は弱まっていき、背後を取られた。
「貴様ぁ!」
俺が叫ぶと同時に敵の刀は俺の胸の貫く。俺の視界には、己の血がべったりと付いた、胸を貫いた剣先が入ってきた。ああ俺はここで死んだのか。アーティネスによる復活も見込めない。
「ぐはぁ!」
意識がそこで途絶えたのは、言うまでもなかろう。




