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伊達政宗、輝宗を殺すのは伊達じゃない その弐伍

 俺は輝宗を助けるべく、レイカーを信じて作戦会議を開いた。会議には井原、俺、そしてレイカーの三人が出席した。

 レイカーは首を鳴らす。「やあ、名坂君に井原君。重岡君を助け出すために頑張ろうじゃないか!」

 俺はレイカーの右手を掴み、じっくりと観察する。「どうやって実体化したんだ? ちゃんと触れるし、体温もある。外見は神界の時より人間寄りになっているし、声も大差ない」

「これは人間保守派の神だからこそ出来る技なんだ。実体化して、造形(ぞうけい)を人間に近づける。僕がこの技の案を出して、人間保守派の神一同で技を具現(ぐげん)()して生み出したんだ。人間保守派の神には必要不可欠な技だろう?」

「確かにそうだな。メカニズムをくわしく聞きたいところだ」

「そのメカニズムを教えるのは、君が()()()()()()()になってからだよ」

「『人間保守派の神』だって!?」

「君は素晴らしい才能がある。いずれ戦国時代の日本を統治(とうち)して、列強(れっきょう)の国にまで(こま)を進めるはずだ。そうしたら君は神の一柱(いっちゅう)と化す。そして人間保守派になれば、君は僕達の仲間となる。その時にでもメカニズムを教えるよ」

 俺が日本を統治。(のち)に列強にまで駒を進める、か。褒めすぎだな。

針小(しんしょう)棒大(ぼうだい)極論(きょくろん)だが、そうなると俺も嬉しい。神になったらよろしくな」

「ハハハ。仲間が増えるのは大歓迎(かんげい)だ」

 俺はレイカーと握手をして、それから三人で床に腰を下ろす。井原も真剣な顔付きに変化した。

「井原とホームズが今回の作戦の鍵となる。まずはレイカー! どういう作戦にすれば井原とホームズを()かせると思う?」

「そうだねぇ......。ホームズの住む世界に重岡君を移住させるのが、ホームズを活かす作戦だと考えている。ただ、それだと井原君を活かすことは出来なくなる。それに、ホームズの世界は危険だとホームズ自身が言っていた」

「その通り。現状は俺もどんな作戦が良いのかまったくわからない。それでも、必ず輝宗を助ける方法があるはずなんだ」

 井原は一度うなずく。「お屋形様を必ず助けましょう!」

「そう言えば」レイカーは実体化した体の着ている服を探り、長方形の機械を取り出した。「この録音機に、アーティネスと僕の会話が録音されている。これを名坂君に聞いてほしい」

「お、おう」

 レイカーが長方形の録音機のボタンを押して、雑音混じりのアーティネスとレイカーの声が聞こえてきた。


『レイカー、どうしたのですか?』

『ああ、アーティネスに用事があるから来たんだ』

『用事があるなら、済ませてください』

『輝宗を殺すように名坂君を動かしているんじゃないかい?』

『......それがどうかしましたか?』

『僕は人間保守派だ。君達の行為を見逃すなんて無理だ。いずれ革命を引き起こす。君達は虚勢を張るのはもう辞めんだ』

見栄(みえ)を張る人間保守派の神には言われたくないですね。太陽神とは、人間を洗脳して操ってこそですよ』

『人間を操り人形にしたのは、始祖(しそ)の考えに(そむ)いていることになる』

『始祖なんて何百世紀の太陽神に過ぎません。その間に考えが変化するのは当然のことです』

『始祖の時代は人間を尊重する神界だった。古き良き神界を、僕達保守派は守る!』

『構わないですよ。革命を引き起こすなんて、夢のまた夢。頑張ってください』

『そうやって高みの見物をしているといいさ』

『高みの見物? 随分(ずいぶん)と人間の使う言葉を使うのですね。おや、失礼しました。レイカーは人間保守派という変な意識を持つ神の一柱でした。すみませんね』

『構わないよ。いずれ人間保守派の神がこの世界を蹂躙(じゅうりん)するんだ』

『あなた方人間保守派の神が使う言葉を使って言わせてもらうと、「人間保守派がこの世界を蹂躙する」というのは曲論(きょくろん)です』

『一応は人間の使う言葉を知っているんだね。もしかして、人間や人間保守派の神を恐れているのかな?』

『まさか、そんなことがあるのでも思いますか?』

『疑問を疑問で返さないでもらいたい』

『そうですか。私はこれから死んだ人間を(さば)くので、お引き取りください』

『善人までも裁く気かい?』

『そうとも言えます』


 俺は二人の会話を聞き終えて、震え上がった。まさかアーティネスがこんなに怖い奴だとは思ってもみなかったし、神様というのは総じてこんな奴らしかいないのかと絶望した。

 俺が体を()(きざ)みに震わせていると、レイカーは録音機をポケットに入れた。「アーティネスは神の中でもかなり危険な人物だ。だから、これ以後はアーティネスに騙されないでくれ。柳沢氏丸の遺体をヘルリャフカに渡して苗床にさせたのも、アーティネス本人だ」

「はぁ!?」俺は怒りをあらわにした。「何でそんなことをアーティネスはしたんだよ!」

「君の精神に異常を来させて、アーティネスが心の支えとなるような作戦だったようだ。あれは僕も予想外の行動だった。僕は、柳沢氏丸の遺体を玩具(がんぐ)にするものかとかんがえていたからね」

「そうなのか」

 すまないことをしたな、牛丸。許してくれ。もし俺が神にでもなったら、必ず助け出してやるから待っていろよ!

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