バッドプレー
柿本が集団でパチンコ台を殴っていた
ヨシキのその話を聞き
嫌な予感しかしないアタルは
直接の目撃者であるタクジに
肝心な部分を尋ねた
「タクジそれ何の台やった?」
「えっ?……パチンコ台…ですか?」
(あーそうか…打った事無い子に聞いても
アカンな…えー…)
「あー…っと……
台の真ん中に液晶とかデジタル付いてる台やったか?
それとも羽根とかある台か?
覚えてる範囲でエエから教えてくれ」
するとタクジから出た答えは
「あっえーと…真ん中に数字付いてました
ほんで後は…真ん中で何か回ってて……
あっ!台の左上に野球帽被ったキャラがおる台です」
やはりアタルの嫌な予感を的中させてしまう
(あー…ファインプレーか…ドツキ確定やな)
答えを聞き
それが羽根モノのファインプレーだと判明
所謂ドツキと呼ばれるゴト行為に手を出してしまった柿本を思い浮かべて
ウンザリした様子で話す
「そうかわかった……ありがとうな……
ハァー………ヨシキ…あとタクジもや…
この事は誰にも言うなよ
ほんで絶対そいつらに近付くな
下手したら巻き添え食うぞ」
アタルの言葉に一瞬の緊張が走る2人
タクジがすぐに返事をした
「えっ!は、はい!」
ヨシキが更に詳しく聞く
「…アタル君これって……ヤバいん?…」
少し噛み砕いて説明するアタル
「せやな分かりやすく言うとやな……
んー……万引きやな…まぁ窃盗や
18歳未満でしかも窃盗やから
店員に捕まったらシバかれてもしゃーないかもしれんな」
(まさか柿本がドツキに手ェ出すとはな…)
それを聞き益々驚くヨシキ
「えぇっ!シバかれんの!?」
更に自分の予想を話すアタル
「捕まって身元調べられたら中学生のイタズラって事で親と学校に連絡されて弁償したら
出禁なって終わりかもしれんけど……
ヤバい店やったらボッコボコちゃうか?
KY店はどうやろな……
でも近くのAO店でやったらほぼ間違いなくシバかれると思うで」
「ど、どないすんの?ヤバいやん」
「さぁそれなんや……ただなぁ…
まぁ道具使ってる訳ちゃうから1回目は店員の超厳重注意で終わると思うんやけど…
いや…一発アウトの店もあるからなぁ…」
「アタル君のツレなんやろ?助けんでエエの?」
「そら一応言うだけ言うてみるつもりやで
でもナンボ言うても結局最後は本人次第やからな」
ここで黙っていたタクジから
思いもよらない予想が飛び出す
「あの……ひょっとしたら……
柿本君てそれがそんなヤバい事やって知らんのとちゃいますか?」
「えぇ?」
(そんなアホな……)
思わず疑問の声が漏れるアタル
しかしヨシキからそれを肯定する言葉が入る
「あぁー…それあり得るな
俺も今アタル君から聞いて初めて知ったもん」
「えぇ!?……そうなんか?」
「うん、そらアカンやろなーとは思てたけど
そんな店員からシバかれたりする様な事やとは思てなかったわ…タクジは知ってたか?」
「いや俺もヨシキと一緒や」
「せやんなぁ…だってそんなん習ってへんし
パチンコ屋のルールなんか知らんわ」
(そう言えば昔は俺もよう分からんかった…
通う内に段々覚えていった事が殆どやし
後は自分で調べたもんな……
そうか……皆んな中学生やからな……)
知っていて当然だと思っていた
パチンコ屋のハウスルールをまだ柿本が知らないのではないか
そんな考えもしなかった可能性に気付かされたアタル
「そうか……ホナしゃーないか……
面倒臭いけど学校戻って柿本に言いに行くわ
一応忠告だけはしとかんとな」
「絶対その方がエエって…ホナ頑張ってな」
「あっ!ヨシキお前サボる気やな!
まぁたまにはエエけど…
エエか?見つからんようにせぇよ
あとシンナーは絶対アカンぞ!
やったらお前を本気でシバかなアカン」
「せえへんよ!怖い事言わんとってや…
ホナ行くわアタル君」
「ちょっと待てヨシキ
エエ情報くれた礼にこれやるから
2人でジュースでも飲めや
じゃあ頑張れよ!
何を頑張るかは知らんけどな!」
そう言うと遠慮するヨシキに250円を渡し
自転車に乗って
再び学校へと向かってペダルを漕ぎ出した
いつもの裏門近くの公園に着くと
時刻は既に13時36分
自転車を隠し校庭を覗くと
グラウンドでは体育の授業が行われている
(あー…こら裏門から入ったらバレるな)
仕方無く遠回りをしてネット裏に向かい
ネットの穴から体育館の裏手に出る
そのまま忍者の様に校舎を移動し
何とか2年2組の教室前までやって来た
攻略雑誌を背中とズボンの間に挟み
後ろの扉を勢い良く開けた
ガラガラガラ
一斉に注目を集めるが
何かを言われる前にこちらから一気に畳み掛けるアタル
「いやー申し訳ない!急に腹が痛なりまして
トイレに篭ってましたわ!
先生遅れてスンマセンでした!」
シーンとした空気の中
教壇から声が聞こえた
「も、もうイイから…早く座りなさい」
(あっ…国語やったか……ミスった…)
よりにもよって1年の時からアタルを
避けている国語担当の女性教師広口の時間
「スンマセンね…」
そう返事をして席に着き
鞄に雑誌を入れてやっと一息
しかし10分もするとあまりの退屈さに耐え切れずいつの間にか寝てしまった
キーンコーンカーンコーン
その音にバッと目を覚まし
教室を飛び出すアタル
すぐ隣の教室である1組に入った
入ってすぐに教室を見渡すと……
教室の後ろ隅に柿本の姿を発見
急いで近付き声を掛ける
「柿本!」
「あれ神崎、珍しいな…何かあったか?」
「大アリや…お前…KYでファインプレーでドツキしてるて聞いたけど…ホンマか?」
事の重大さに気づかず自慢げに語る柿本
「おぅあれ凄いで!この前の水曜に東中の奴に教えてもうてんけどな?
めっちゃ当たるわ!ホンマに玉動くし
オモロいわぁー」
(あ……こらホンマに知らんのか……)
それを聞き注意を促すアタル
「アホか!それはドツキゴト言うてな
立派な犯罪や!万引きと一緒で窃盗やぞ!
中学生がパチンコ屋なんかでやって捕まったら下手したらボッコボコにシバかれて
上手い事いっても親と学校に連絡されて
弁償プラス出禁や!」
それを聞き目を見開いて驚く柿本
更に詳しく質問して来る
「えぇ!ホンマか!?で、でも…他にもドツいてる奴ナンボでもおるやないか!」
違いを説明する
「それはCR機とかデジパチの話やろ!
羽根とか権利モンみたいに直接玉が動く台での無理矢理当てるドツキは御法度や!
特にAOなんかほぼ100%シバかれるからな
エエか?悪い事言わんからもうやめとけ」
それを聞き明らかに落ち込む柿本
「そうなんか…………わかった…もうやめとくわ」
(いやヘコみ過ぎやろ……しゃーないけど)
「そうかほんならエエわ……そんなヘコむなや」
「そんなん言われても……
折角エエ方法教えてもうた思たのに…」
その様子を見て少し手解きをする事に
「ハァー……わかったわかった
柿本お前どんぐらい目押し出来る様なった?
2コマぐらいは押せるか?」
「たぶん押せるけど…」
「明日は空いてるか?」
何かを察知し一気に明るくなる柿本
「おぅ!何かあんのか!?」
「ちょっとエエ事教えたるから
朝9時半にN店来れるか?」
(嬉しそうな顔しよって現金なやっちゃ)
「絶対行くわ!」
「よっしゃホナ明日な」
すっかり笑顔になった柿本を見て
アタルは少し安心していた
フィクションです
絶対にしてはいけません




