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回胴式優義記  作者: 煙爺
第二章
95/171

火の無い処に

6月7日 金曜日 12時46分


衣替えも終わった6月頭の昼休み

カッターシャツ1枚になったアタルは

給食を食べ終わったにも関わらず

腹を空かせ机に突っ伏していた

(アカン…まさか朝作ったサンドイッチを家に忘れてくるとは……凡ミスや……不覚…)


「先生!」


そんなアタルに左から声が掛かる

が、聞き覚えしかないその声と単語に

うんざりしながら応えた

「あのなぁ水村……先生はヤメろって言うてるやないか…頼むわホンマに…」

(こいつは何遍言うても直らんな…

勘弁してぇや)


しかし言われた本人は全く気にしていないような明るい口調で返してくる

「ハハハいやースマン!

でもちょっと聞いてくれや

昨日女とM駅のゲーセン行ったんや

プリクラとかいう奴やりたい言うからな

まぁ置いてなかったんやけど…」


それを聞き更にうんざりしながら応える

「水村……女の話はこの前聞いたやろ?

もうわかったから……頑張れよ」

(何で恋バナ聞かなアカンねん…

興味無いわい!腹も減ってんのに…)


しかし今日は何やら様子が違う

「ちゃうって!最後まで聞いてくれや

ほんならそのゲーセンにミヤマサさんの弟がおったんやけどな

隣に戸池さんの弟も一緒やったんや」


「はぁ?それってこの前喧嘩した子やんか…

何でや?」

(M駅のゲーセンいう事はFN店の隣やろ

マサやんに関係あんのか?)


「いや それを聞こう思ててんけど…知らんのか?」


「知らんなぁ……でも…まぁ良かったんちゃうか?ヤンキー仲間が出来て

戸池の弟も安心したやろ」


「まぁそうやな……

そや!それより今月22日女の誕生日なんや!

先生!何あげたらエエと思う?」


「知るか!自分で考えろ!!」

(ドサクサに紛れてやっぱりそんな話か!

油断も隙も無いわ)


そう言うと席を立ち

後ろの扉から逃げる様に教室を出た



体育館のネット裏から学校を抜け出し

自転車に乗ってアパートとは反対方向へ

パン屋の近くを通って暫く行けば

目的地である緑のコンビニが見えて来た


(腹減って授業なんか受けれるかいな…

久しぶりにカップ麺でも食うか)


店内に入るとまずは本のコーナーへ

今日発売の攻略雑誌を手に取り

パラパラと中身を確認する

(おっ…パラディエンジェル設定判別か

でも入ってる店この辺には無いんよなぁ…

まぁ一応買うねんけど)

カゴの中へ雑誌を放り込み

続いてフリーザーから缶の烏龍茶を入れる

そのままの流れでカップ麺のコーナーへ

(よしこれや)

何の迷いも無く1.5大盛りのカップ麺を選び

レジへと向かう……が、その足を止め

おにぎりのコーナーへ

鮭のおにぎりをカゴに入れ今度こそレジへと向かった

箸を貰ってお会計は836円

店内のポットでお湯を入れ

自転車の前カゴに慎重にカップ麺を置き

慎重に運転する

そのまま50メートル程離れた

コンビニ裏の児童公園に入りベンチに座れば

第二昼食の始まりだ


雑誌を読みながらラーメンを食べる

(トリコロール96の画像入手か…

うわ懐かしいなー!偶に見たなぁこの台)


すぐに麺を食べ終わると残ったスープの中に

おにぎりを入れ、箸でほぐした後に余った海苔を散らせばラーメン雑炊の完成だ

(あー旨い!間違いなく身体に悪そうやけど

この感じは他では出せんで)


最後の一滴までキッチリと飲み干して

漸く満腹になった後

暫く烏龍茶を飲みながら雑誌に目を通していると……


「あれ?ひょっとしてアタル君?」


と思わぬ声が掛かった

(あ?アタル君て…)


そんな呼び方は1人しかいない

ふと前を見ると公園の入り口から自転車を

押しながら夏服姿のヨシキが歩いて来た

後ろにはもう1人……戸池弟だ


それを見てアタルも返事を返す

「おーヨシキと戸池さんの弟か

どないしたんや?まだ学校終わってへんぞ」

(俺も人の事言われへんけどな)


すると案の定ヨシキからツッコまれる

「ハハハ何言うてんよアタル君も一緒やんか

こんなとこでサボってるやん」


「バレた?

いや今日は家から弁当持ってくんの忘れてな

しゃーないからコンビニ行ってラーメン食ったんや

ほんなら何か学校戻んの面倒くさなってきて

このままサボろうか悩んでるんや……

ヨシキ……どないしよ……」


「いやそんなん言われても……

アタル君て見た目は真面目やのに

やる事はヤンキーみたいやな……」


思わぬヨシキの言葉に潔白を証明する

「えぇ!?そんなアホな……

俺はタバコも吸わんし原チャもパクらんぞ?

喧嘩もそんなせえへんし族も入ってへん……

めっちゃ真面目やんけ」


しかし再びツッコまれる

「いやどこがよ…

今も学校抜けてコンビニ来て

昼からサボろうとしてるやんか……

少なくとも真面目では無いわ

なぁタクジ?」


急に話を振られた戸池弟が焦る

「えっ!?いや…俺に振られても…」


その様子を見てヨシキが何かを思い出し

アタルに尋ねた

「何やねん……あっそうか、アタル君!」


「何や?」


「タクジ……あっこいつタクジ言うねんけど

アタル君にあんま会いた無い言うとってんか

何かしたん?」


陰口をバラされ更に焦るタクジ

「おいヨシキ!ヤメろや!

いやそんなん言うて無いですから!」


「大丈夫やって…アタル君絶対そんな無茶な事せんから顔は怖いけど」


「ハッハッハ顔怖いは余計やヨシキ!!

お前はホンマに言う事がマサやんに似て来たな…まぁエエわ……別に何もしてないけど

特に心当たりは………無いな無い」

(兄貴シバいたとは言えん!そんな可哀想な事は出来んで…)


「って言うてるけど…

なぁタクジ何かあるんやろ?言えや

何があってん

アタル君やったら怒らへんから

なぁアタル君怒らへんやろ?」


「まぁ別に聞いたぐらいでは怒らんで

ほぼ間違い無く」


そう言うヨシキの追及に

根負けしたのか

ポツリポツリと事情を話し出すタクジ

「おぅ……いや……こないだ兄貴に……

神崎言う奴には絶対関わるなって言われたんや……

森元さんも兄貴もシバかれて……

松センとかミヤマサさんもシバこうとした

ヤバい奴やって……」


それを聞き先程の発言の手前怒るに怒れず

心の中で怒りが燃え上がるアタル

(戸池ぇぇぇえ!!先輩やからって

言うてエエ事と悪い事あんぞ!!

しかもあれはお前らが悪いんやんけ!!

冤罪や!!)


原因を突き止め驚くヨシキ

「えぇぇぇアタル君!!

ひょっとしてアタル君がシバいた先輩って

タクジの兄ちゃんなん!?

ほんでシバこうとした担任て松セン!?」


これには流石に謝るしか無いアタル

「まぁ…何や…………………スマン…」


呆れた顔で告げるヨシキ

「そらアカンわアタル君………タクジが会いた無い言う筈やわ…」


ビビるタクジに弁明するアタル

「いやタクジ君!聞いてくれ!

初めは森元が金出せ言うて来たんや!

それでついカッとなって……

ほんだらそれに怒った戸池さんに呼び出されて、いきなり胸倉掴まれて腹ド突かれたから

またカッとなって……」


真相を聞き何故か謝るタクジ

「あっそうなん…ですか……何かスンマセン…」


「いやこちらこそ…何かスマンな……

でも別に理由無くド突いたんちゃうからな?

仕方無くやったんや……でも…スマン」


呆れながらも話を続けるヨシキ

「ホンマにアタル君はよぉ分からんわ……

あっ……そや!ほんでもう1個アタル君に言わなアカン事あってん」


「何や?…次は森元の弟か?…」

(もう嫌やぞ…)


そして話題は急に身近な人物へ

「ちゃうって!!真面目に聞いてや!

アタル君って柿本いう人知ってる?」


「おぅ1年の時クラス一緒やったからな

たまに遊んだ事もあるで最近見いひんけど……柿本がどないしたんや?」


ヨシキから出た柿本の話題を不思議に思いながらも話し聞く事に

「うん…昨日兄ちゃんに忘れ物届けたら

小遣い貰ったからそのままタクジとM駅前のゲーセンで遊んでたんやけどな?

その時にタクジがKY…やったかな?

とにかく踏み切り向こうにあるパチンコ屋にその柿本いう人が入るの見たんやって

そうなんやろ?」


証明するタクジ

「あぁ前に何回か兄貴と一緒におるの見た事あるし間違い無いで」


「ふーん…まぁエエんちゃう?」

(エラい遠い店行ってんな…)


更に続けるヨシキ

「いやそれでな?タクジが一応声掛けようとして店の中入ってその柿本いう人探したら

パチンコ打ってたらしいんやけど………」


(あいつまたパチンコ打ってんのか

ひょっとして釘読みまで覚えたんかな?)


そんな風に気楽に考えていたアタル


しかし


話は思わぬ方向へ


「何か見た事ない奴らと

ガンガン台ドツいてたらしいんやけど……

それって大丈夫なん?」


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