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回胴式優義記  作者: 煙爺
第二章
92/171

フレッシュマン応援キャンペーン

5月21日 火曜日 7時11分


日の出の時間も早くなり

すっかり春めいた5月も終わりの朝

春眠暁を覚えずの言葉通り

アタルも布団の中で春を満喫していた


しかし…

それを邪魔する刺客が

すぐ近くへと迫っていた


ドルルルル…ドルルルル……キキィ…


ザッザッ……


……


ドンドンドンドン!


突然強く叩かれたドアのノック音に

アタルの意識がボンヤリと目覚める

(………あ……あー……あー?…)


更に


ドンドンドンドン!


2度目の強い音に驚きながらも

完全に事態を把握した

(うおうぃ!……あ………嘘やろ……)


ドンドンドンドン!


3度目の音に曝されるも

布団から出たく無いという気持ちが勝つ

(……嫌や……今日は嫌や……)


しかし……


ドンドンドン!ドンドンドン!

ドンドンドンドンドンドンドン!


「リズム刻むなぁー!!!」


三三七拍子でのノック音に思わず飛び起き

ツッコんでしまったアタル


「アタルー…アタルくーん…起きてやー…

なぁーアタルってー……」


ドンドンドンドン!


未だに続く安眠妨害に痺れを切らしたアタル

ドスドスという強い足取りでドアに向かい

招かざる客に対応した

「わかったから…今開けるって……」


ガチャ


っと鍵を開けると

勢いよく外側へとドアが開く

アタルがウンザリした顔で声を掛けた

「こんな早よから堪忍してや……マサやん」


「エエからちょっと来いって!!」


そう言ってアタルの手を取り

強引に引っ張るミヤマサ

何やら興奮した様子


(ち、ちょっと!?…うお!)


慌ててツッカケを履き 外に出るアタル

興奮するミヤマサを何とか宥める

「わ、わかったから…引っ張らんといてや

アンタは力強いんやで!ホンマにもう…」


すると少し落ち着いたミヤマサが

それでもアタルを急かす

「ハッハッハ…いやースマン

でもちょっと見ろ!ホレ凄いやろ!な?」


そう言うと

アタルの自転車の隣に停めたソレを自慢する


(あぁー……なるほど…そんでか)


そこに停まっていたのは1台のバイク


ワインレッドのXJR400だ


さらに興奮して話出すミヤマサ

「これ見ろ!カッコええやろ!?

マフラーもモリワキ菅やし

ショックもオーリーや!!

シートもアンコ抜きのタックロールやで?

ほんでこれ!ブレーキホースもゴールド!

あとシフトもオーバーやし完璧やろ!な?」

と熱く語り出す


しかしあまりバイクに詳しく無いアタルにとってはほぼ謎の呪文

その辺りを伝えつつ落ち込ませない様

やんわりと褒める事に

「いや…そんなメーカー言われてもわからんねんけどな……

でもそんな俺でもカッコええのはわかるわ

凄いなマサやん!遂に買うたんか!?」


「おぅ!カッコええやろ!

いやー高かったで……長かったなぁ…

毎日毎日学校帰りにニューパルの判別して…

勝ったり負けたり……2ヶ月掛かって…

やっと25万貯まったんや!

ほんでこれもや!見てみぃ4回目でやっとやで!」


そう言って財布から取り出したのは

[普自Ⅱ]の真新しい免許証だ

「おぉ!遂に無免許ライダー卒業か!

凄いやんか取れたんや!?」


「そや遂に昨日取ったで!長かったなぁ…

訳の分からん引っ掛け問題に騙されて

学科2回も落ちたで…実技も3回落とされるし

何日も学校休んで…」


(引っ掛け問題に文字通り引っ掛かりまくったんやな……)


「まぁでも良かったやんか…こんで車の時は

実技だけなるんやから楽勝やろ」


メリットに気付き益々笑顔になるミヤマサ

「あっそうかホンマやな!

そうか……でも車は運転した事ないな

今のうちから練習しとかんと」


「まぁ気付けてな……ホナまた今度乗せてや

俺はもうひと眠りするから…じゃあお疲れ」


そう言うと部屋に戻ろうとするアタル


しかしそれを当然の如く阻止すべく

アタルのジャージを引っ張るミヤマサ

「待てや!まだあるんやって!

見ろ!俺も買ったんや!」


そう言って取り出したのは

シルバーのPHS


「おっ遂に買ったんや!番号教えてや」


「おぅ!050の………」


お互いの番号を登録し終わると

ミヤマサがタバコに火を点け

フゥーっと吐き出しながら話出した

「いやー俺もアタルから遅れる事2週間

やっと手に入れたで…オトン説得すんの大変やったわ……」


「何言うてんよ…それが普通やって

俺のは特殊な奴やからな借り物や借り物」


「せやけど金払ってんのはアタルやろ?

しかも3台分や凄いやんけ」


「まぁ必要やからしゃーないわ…

あっそや新聞配達所の子…南山さんか

紹介ありがとうな!助かってるわー…

毎日8時に電話くれるねん」


「ハッハッハ、アイツも真面目やな

まぁ毎朝電話するだけで月3千円やからな

誰でもやるわ…せやけど何でアイツなんや?

新聞取ってる家やったら誰でもエエんちゃうんか?」


「いやいや…ちゃんと理由があるんやって

まぁ時期が来たら話すから…楽しみにな

マサやんにもエエ話やで?ハッハッハ」


「ふーん……まぁエエわ」


「ホナ電話来るまでもうひと眠りするから

またバイク乗せてな!お疲れ!」


そう言うと再び部屋に戻ろうとするアタル

しかし…またしてもミヤマサの手は

アタルのジャージを引っ張った

「ちょっと待てって!

まだあるんやから…最後まで聞けや!」


「あのなぁマサやん…嬉しいのはわかるけど

こんな朝早よ来んでエエやんか堪忍してや」


そう言うとパッとアタルのジャージを離し

理由を説明し出した

「いやそれがやな…ちょっと頼みがあって…

この時間やないとアカンねん……」


「この時間やないとアカン頼み?……

早朝ツーリングとかちゃうやろな?怒るで」


「ちゃうわ!何で男と2ケツで朝からツーリングやねん!スロットやスロット

今日は朝一緒にFN店行って欲しいんや」


「はぁ?どういうこっちゃ?」


早朝からアタル宅を訪れ

謎の頼みをするミヤマサを不思議に思いながらアタルは事情を聞く事にした



部屋に入りコーヒーを飲みながら

話を聞いたアタル

「ふーん…そんで朝から付いてきてくれ言う訳か」


「そうやねん…単車買うて金もだいぶ減ったしこれからは毎月PHSの支払いもあるし……

ガソリン代もいるしな……だから頼むわ!」


ミヤマサの事情

それは春休みが終わった後から段々と勝てなくなって来たという事だった

春休み期間中はそこそこ調子良く勝ち

スロットの種銭を除いたバイク貯金も

15万程まで一気に貯まったらしいのだが

学校が始まってから思うように勝てなくなり

残りの10万を貯めるまでに1月半掛かってしまった

勿論高校生が学校帰りに1月半で10万というのが凄い事だとはわかってはいるのだが……


(なるほどなぁ………まぁ悩んでるんやな

しゃーない…原因だけでも確かめるか)


まずはミヤマサの原因を探る事に

「マサやん…ちょっと原因知りたいから

何個かの質問するから答えてや」


「おぅ…わかった」


「まず1日の行動パターンを教えてや

学校始まってからのな」


「えっ?…えーと…まず1時限目終わったら

学校抜けて原チャでKY店行くやろ…

ほんでモーニング取ってから学校戻るわな…

夕方学校終わってからFN店行って

空き台の中から1番打てそうな台判別して

判別落ちたら打って無理やったら帰る

こんなもんかな?」


それを聞き原因を突き止めた

(あー…そらアカンわ…)


「なるほどな……大体わかったわ

マサやん…そらアカンわ時間掛かる筈や」


「な、何でや!?台の知識も技術も店選びも

ちゃんとやってるやんけ!」


「よぉ思い出してや?俺はあの時

[この基本の3つが無かったら判別なんかいつまでたっても成功せえへん]て言うたんやで?

判別は成功してるやろ?

ほんで実際1月半で10万勝ってるやんか」


「そ、そらそうやけど…アタルは」


「アタルはもっと勝ってるやろって?

当たり前やんか生活掛かってるんやから…

今のマサやんに足りひんのはな

打たへん理由や」


「打たへん理由?」


「そや…単車買ったお祝いに教えるわ

よぉ聞きや」


そう言うとミヤマサの目は判別を初めて聞いた時の様に真剣になった


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