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回胴式優義記  作者: 煙爺
第二章
76/171

打つ理由

3月26日 火曜日 0時42分


タバコの煙が充満する室内

白くなった空間を一新するべく

アタルは窓を全開に開けた


ガララララッ


「うおっ!寒っ!!」


まだ3月末の夜

冷たい風が一気に部屋の中に入ると

コタツに入りながら攻略雑誌を読んでいた

ミヤマサからも非難の声が上がった

「アタル!風でページめくれて読みにくいから網戸にしてくれ」


が……どうやらクレームの内容が違ったようだ


「マサやん……あんた寒ないの?」


「あ?…いや別に?コタツ長い事入っとって足暑いから丁度エエで」

そう言うとコタツから出て壁にもたれながら

攻略雑誌を読み続ける


(流石生粋の暑がりや

真冬もTシャツとパンイチで寝てたもんな…

さぁ最後に確認だけして早よ寝よか)


ミヤマサの希望通り網戸に切り替え

コタツに戻ると話を進めていく

「どないマサやん、もう聞きたい事ないか?

無いんやったら明日の予定言うて終わるで」


アタルの言葉に本を閉じ

ファンタグレープを一口飲んだ後

こう尋ねた

「最後に一個だけ聞きたい事あんねん

言うてた条件あるやろ?えーと…

他の奴に言わん事とN店ではやらん事

この2つは今の説明でわかってんけど…

最後の情報交換がよぉわからんわ

何の情報交換したらエエんや?」


「あっそうか

それ説明して無かったなスマン スマン

えーとな…何個かあんねんけど

何日に新装あって何が入る

この店はこんなイベントやってる

この辺に新しい店が新規で出来る

こんな台がこの店に入ってる

この店はハズシ禁止でこの店は大丈夫

後は客層とか換金率とかやな」

(まだメールもホームページも無いし

こういう情報は大事やろ間違いなく)


「へぇー…なるほど色々あんなぁ……

せやけどアタルはN店で打ってるやろ

そんなん知ってどないすんねん?」


「そらアカンかった時の保険や

なんぼ俺がN店の常連で判別出来る言うても

毎日エエ台に座れるとは限らんやろ?

ほんでさっきも言うたけどN店がいつアカンようなるかもわからんしな…

特に俺らは4月から毎日昼間は学校あるやん

そんな夕方からしか行かれへん奴らが

金稼ご思たらなるべく打てる店増やすしか無いんやって

しかも俺はチャリしか無いし

行ける範囲も限られてるからな

駅の近くの店やったら電車でも行けるし

どうしても情報が欲しいんや」


それを聞いたミヤマサが真剣な顔になり

アタルを見て尋ねた

「フゥー…アタル何でや?…」


その顔を見て焦るアタル

「な、何が?わかりにくかった説明?」

(何やねん真面目な顔して…

マサやんがこんな顔すんのはなんか悩んでる時ぐらいやろ…)


「ちゃうわ……お前わかってるか?

こんな言い方したら変やけど

ちょっと異常やぞ?

何でそんな金欲しいねん………

まだ中2やろ?話聞いてたら遊びにも行かんと毎日打ちに行って…

なんか理由あるんか?

あのバイトの人に脅されてんのか?

カツアゲか?

ちょっと遊ぶ金やったらモーニング取るか

夕方打ちに行って打てる台あった時に打つぐらいで十分やろ

言われへんねやったらしゃーないけど……

それやったら思い切って警察行くとかした方がええんちゃうか?考えてみ?」

と諭すような話をしたミヤマサ


そんなミヤマサを見てアタルは嬉しくなった

(後輩の面倒見がエエのはこの時から一緒なんか……

自分の周りだけは何とか平和にしようとすんねんから

先輩とか先生には思いっきり噛み付くクセに

相変わらずやな……

昔も初めて事情話し合ったのはマサやんやし

恩人はどないなっても恩人やな)


再び自らの事情を打ち明ける決意と

ミヤマサの事情を受け止める決意をし

先ずは自らの事情を話し始める

「ハハハちゃうよ

あの人には俺から頼んで打って貰ってんねん

俺の家な小5の時に………」


そこから暫く自らの事情を説明するアタル


それを黙ってミヤマサは聞いている


「ちゅうわけでこの部屋のもんは全部俺が金払ってんねん

遊ぶぐらいの金では全然足らんわ

ガスも電気も水道も……

メシ代もトイレットペーパー1つまで全部や

だから真剣に打ってんねん必死なってな

まぁ…はたから見たら変かもしれんけど

俺スロット好きやしな

結構気に入ってんねんで?この生活」


最後まで何も言わずに聞いたミヤマサ


新しいタバコに火を付け

フゥー……っと煙を吐き出す

それと同時に自らの事情も語り出した

「そうか…俺の弟とよう似てるわ

ウチはな 俺が小2の時に離婚して

俺がオトンに弟がオカンに引き取らたんや

でも別れたいうても住んでる家も近かったし

週1ぐらいで弟には会ってたから

俺もガキやったしそんなに気にしてなかったんやけど……

そっから4年半ぐらいかな?

段々と弟に会いに行く時間が少ななった頃や

小学校卒業して中学行く前の春休みに

俺も春から中学やし弟に俺が小学校で使ってたモン全部やろ思てな

色々あるやろ?ロケット鉛筆とか

コーラの匂い付きの練り消しとかな

あー!赤の透けてる下敷きとか流行ったやろ?」


「ハハハあったなぁー…使ってる子が羨ましかったの覚えてるわ」

(……こっからキツいねんよなぁ……)


「せやろ?ウチのオトンなんか

[片親やからいうてナメられたら終わりやどマサ!エエか?学校で流行ってるモンはワシに言え!!]言うてな

ホンマかなー思て言うたら

次の週の月曜にホンマに枕元にあったもんな

見栄っ張りなオトンやで…

ほんでそれ全部持って久しぶりに

弟のとこ行ったんや……

ほんならな……

ほんなら……

芳樹がな………

裸でオカンの家の前に立っとったんや……

俺……走って弟のとこ行って…

どないしたんや!!言うたら

アイツ…

味噌汁こぼしたから立たされてる言うて

ほんで誰にや!言うたら…オッチャンやて…

そんで取り敢えず俺の上着着せて

近くの公園で話聞いたら…

半年ぐらい前から一緒に住んでるオッチャンに殴られたり蹴られたり裸で立たされたりしてる言うんや!!

弟その時まだ小3やで!!?

俺生まれて初めて人殺したい思たわ!!!

ほんで取り敢えず弟を俺の部屋に連れて帰って作った事も無いコーヒー作って砂糖と牛乳大量に入れてな

ほんなら弟それ飲んですぐ寝たんや

疲れてたんや思うわ……

ほんでそっから玄関にあった

木のバット持ってからチャリ乗ってオカンの家戻ってな

玄関開けたら鍵開いてたから入ったんや

ほんなら変なオッサンが不法侵入や何や叫んで来たから

無視して思いっきり左足バットで殴ったったわ!!

弟イジメたんお前かー!!言うてな

ほんならオッサンうずくまって

やめろー!言うから

弟の仇じゃー!!言うてバットで5〜6発殴ってダッシュで逃げたんや

逃げながら何回も後ろ確認してな…

逃げ切った思た時はホッとしたけど

段々怖なって来たんや…

あのオッサン死んだんちゃうか思て怖なってな

部屋帰ったら弟まだ寝てたから

隣に寝転んで…

捕まるんかなぁとか

オトン怒るやろなぁとか

弟は喜んでくれるやろとか

でも……

やっぱり人殺したかも知れんいうのは誤魔化せんかったわ……

ちゃう事考えようとしても全然アカンで

でもな何ていうか……後悔はせんかったわ

あのままやったら弟死んでたかもしれんし

俺があのオッサン殺して弟助かるか

弟死ぬかやったら俺は今でもおんなじ事してると思うしな

ほんでいつのまにか寝てもうて

オトン帰ってくるの待って全部話したんや

ナンボ怒られて警察捕まってもエエわ思てな

ほんなら

[マサ!お前はアホか!

何でワシに電話せんねや!!

ワシがそいつ殺したる!!

お前は待っとけ!!]

言うて家飛び出して行ってな

暫くして帰って来たら

[マサ!心配すな!

そのオッサンなピンピンしとったから

ワシがシバいといたったからな!

マサ!お前のやった事はアカン事や!

でもお前のその気持ちは間違って無い!!

だから今度何かあったらワシに言え!!

これからもヨシを守ったるんやど!!]

言うてな

褒められながら怒られたみたいな変な感じやったわ

何かアタルにだけ事情話さすのも悪いから

俺も言うてもうたけど……

アタル

お前は凄いわ

誰も助けてくれへんのに

一人で全部やって

でもな?

一人では限界あるで

だからな

何かあったら誰かに言わなアカン

俺でもエエし

さっき言うてたジィちゃんでも

ここで一緒に住んでる人でもエエからな

それだけは忘れんなよ」


(そうか……やっとわかったわ…


マサやんて……ジィちゃんに似てるんや


だから気い合うんやな…)


「マサやん」


「ん?早速相談か?」


「いや……

マサやんて

ジィちゃんみたいやな」


心から言った言葉



しかし



「だ、だ、誰がジィちゃんや!!!

お前と2歳しか変わらんわ!!!

アホかぁ!!」


そのまま言ってしまえば只の悪口だった



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