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回胴式優義記  作者: 煙爺
第二章
64/171

ゆく年くる年

1月14日 日曜日


(ハァー…どないしよ…)


朝からコンドルの狙い台を取り

リールのガックンを確認

設定上げだと判断し打ってみたものの結果は20時に全てコインを呑まれるという厳しいものだった

(もうアカンな…上げやと思う台6判別しても

落ちひんし突出して出てる台も無い…

全体的な確率見て平均設定出しても1.8ぐらいやし設定1ベースに設定2か3が数台やろ…)

席を立ち上着を羽織って裏口に向かう

シマの端に立ちスロットコーナーを眺めた

コンドルのシマは相変わらずの盛況振りで

日曜日ということもあり10台中8台が稼働中

勿論皆ハズシもしっかりこなす若者ばかりだ

何人かは箱を使いひたすら青7を狙い打つ

(まぁこれ見たら6なんか要らんわな…

設定1でも満席に近い上に出玉あるように見えるしナナロクでも8千円ぐらい勝てるしな

……そろそろ潮時やな……)


U店を出て自転車に乗り

帰り慣れた道を行く

正月明け8日からの今日までの店の状況を

頭の中で確認し、アタルはある決断をした


(よし…やっぱり店変えよ)


いくら甘いコンドルとはいえ

7.6枚という換金率

それ加えてあの設定状況と客付き

1日打ち切れば確かに8千円勝てるのかもしれない

しかし他の客とは違いアタルは一日中打てる日が月6日間[日曜+第2&第4土曜]

平日の殆どが16時〜23時までの7時間稼働

月25日間打ったとして約10万円

これでは少し心許ない

そして何より余裕がなさ過ぎる

捨てるには勿体ない…しかし先は短い

今まで羊一匹で食べていた草場[コンドル]に

大量の羊が現れ、あっという間に草が食い尽くされてしまった

もう毎日生えてくる草の量より羊の数の方が多いのだ

そしてこの草自体が店によって根元から断たれて[入れ替えられて]しまえばそこで終わり


1996年1月14日

U店のコンドルからアタルは旅立った


本日の収支

総投資11000円

回収0円トータルマイナス11000円


(いやー長かったなぁ……9、10、11、12と約4カ月か……遠征入れたら5ヶ月コンドル打ってたんやもんな…長い事ありがとうこざいました またその内)



線路沿いの道を南下し広い国道に出た

ここからいつもとは逆の右に曲がり

薬屋の交差点を左に曲がって商店街の入り口とI店を通過すれば…

目的地であるN店に到着した


店に入りスロットコーナーを覗くと…

アラマスは10台中3人

ニューパルは15台中4人

ピンクパンサーは5台中4人

ダイバーズは5台中0人

スーパーモグモグも5台中0人

時計を見ると時刻は20時41分


(やっぱり新台のピンクパンサーは人気やな

アラマスは一発勝負っぽい客層やし…

あとはやっぱりニューパルか

一応BIG回数だけでもチェックするか…)


ニューパルを端からチェックしていく

14 11 18 9 19 7 ……

(ふーん……)

続いてモグモグのBIG回数もチェック

5 2 13 4 8

(ハァー…)

取り敢えず他の台もチェックする

3分程で全ての台を見終わり一旦店を出て

入り口の自販機でコーラを買い

スロットコーナー端にあるベンチに座って一息つく


(フゥー……アカンな…やっぱりわからんわ)


モグモグやニューパルなど打てる台があり

6を使っているのもわかっているN店

それでもU店からN店に中々移動しなかった理由

それはデータ機器の問題だった

U店では当日の総回転数とBR回数、更に前日のBIG回数もわかる

しかしN店でわかるのは当日のBIG回数のみ

正直言ってこれでは夕方からの稼働が殆どであるアタルにとってかなり不利な状況

いくら精算ランプの消灯や台下コイン仕込み

リールのガックンチェックなどの知識があっても朝イチから来れなければ意味が無いのだ


(何とか朝イチの情報が欲しい

せめてこの店にジグマの知り合いでもおったらナンボか金払ってもエエのに……)


しかしそんな都合のいい話がある訳も無く

この時間から現金を入れる訳にもいかないアタルは静かにN店を後にした


自転車に乗り何とか方法を考える

しかし今日まで何度も何度も考えてきたものが急に出る筈も無く、気がつけばアパートまで帰って来てしまった

(ハァ…しゃーないな、取り敢えず明日は1日打てるからN店のモグモグ6狙いから行くか

アカンかったらニューパル消灯台で判別や)


朝から行けば勝てる道筋は見えているのに…

それが出来ない…歯痒い感じが何とも気持ち悪い


グルォォオ…


(ハハハ…こんな時でも腹は減るわな

メシにするか)

取り敢えず腹の虫を治めることを優先する事に



暫くして

夕飯を食べ終わり洗い物を済ませた後

ホームセンターの初売りでゲットした

3480円正方形のコタツに入りながら

最新の攻略本を読むアタル

(ほー…ピンクパンサーの減算値は

設定1〜4が100で設定5が102で設定6が107か

ちゅうことは5以上の判別やったら……

えーと……紙とペンはどこや…)



ドンドンドンドン!!



「うわぉ!?」


突如部屋のドアが強くノックされ

変な声が出てしまう


(だ、だ、誰や!!もう22時半やぞ!)


ドンドンドンドン!!


「……っ!!」


再び強くノックされるドア

今度は声を堪えた


(クソッ!何やねん一体!?

声はせんな…

黙っとってもしゃあないか………一応ホウキ持っといて…)


唯一武器になりそうな室内掃き用のホウキを持ちゆっくりとドアに近付き…

手を伸ばし鍵を開ける


カチャン……


すぐにドアから離れ

いよいよ声を掛ける事に

(ヨシ…言うぞ…)


「あ、開いてますよー!どうぞー!」


そう言うと遂にドアが開いた


ガチャ


(だ、誰や!!…で、デカっ!!)


現れたのはドアよりも大きな茶色い頭


「おぅアタル!久しぶりやのぅ

元気しとったけ?」


そんな知り合いは1人しかいない

W店の戦艦ことカズヤだった


「…か、カズヤさん!お久しぶりです!どないしたんですか!?急に…」

(ビビったぁー!絶対終わった思た……

1番ドッキリしたらアカン人やん!

老人か幼児やったら危ないで!!)

そんな失礼な事を考えながら何とか声には出さずに済んだアタル


しかしそんな事は気にせずカズヤが話出す

「いや今日帰る言うとったやろ?

今帰って来たんや祝日前やから道混んどってな往生したわ……ほんでついでやからアタル迎えに行こういう事なったんやけど…

俺しか家知らんやろ?だから俺が先頭で来たんや、あの2人も車置いたらすぐ来るわ」


「そうやったんですかベル鳴らしてくれたら良かったのに…あっ汚いとこですけど上がってコタツ入って待っといて下さい」


「おぉスマンの!ほんなら上がらして貰うわ

前も思たけど綺麗にしとるなぁ…というか物が少ないの…」


ドンドンドン


更にドアがノックされる

「おっ来よったな」


「みたいですね…どうぞー開いてますよー」


ガチャ…っとドアが開き荷物を持った2人が順に入って来た

先ずは山村

「おうアタル久しぶりやな、おっ?ちょっと背伸びたんちゃうか?ハハハこれお土産や」

そう言って電気ポットを差し出す


続いてカオル

「アタルー久しぶりやなー あっホンマや!

背高なってるやん!エエなー…あっこれお土産」

こちらはオーブントースターだ


「お久しぶりです!そうですか?最近測ってへんから自分では何とも…さぁ寒いから

コタツでも入って下さい狭いですけど」


「おうスマンな ほんならちょっと…」


「うわーめっちゃ綺麗にしてるなー…ていうか物が少ないやん…テレビすらないし…」


「せやろ?ワシもさっき言うたんや

若者らしない部屋やなぁ言うてな」


「カズヤ…諦めろ…アタルはトロピのコインホッパーから生まれて来たスロット界のサラブレッドなんや…不必要なモンは置かんのや」


「誰がサラブレッドですか!しかも何か進化してるし…やめて下さいよ!」


「アタルートイレ貸してやー」


「あっはい そこのドアです」


「アタルこの本7日に出たやつけ?ちょっと読ましてくれや」


「あっどうぞピンクパンサーの減算値載ってましたよ」


「減算値?…おっ何やこの紙?」


「いや減算値から自分で設定判別手順作られへんかなーと思って」


「………サラブレッドやの」


「………せやろ?」


「ちょっと!!」


この部屋に来て以来の騒がしくも楽しい時間


N店の憂鬱な気分がスッと楽になった


(コンドルは去ったけど楽しい時間は帰って来たな)



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