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回胴式優義記  作者: 煙爺
第一章
32/171

初対面なトロピカル

8月20日 日曜日 9時00分


ジリリリリリリリリリ…バンッ!…リンッ


けたたましく鳴る目覚まし時計を乱暴に止め

(アカン……しんど……)


一瞬意識を失うがあまりの暑さに目が覚めた

(何や暑いなぁ…クーラー止まってるやん…)


薄眼を開けて時刻を確認

(9時か………)


ガバッと起き上がり今度はハッキリと確認

「9時!?アカン二度寝して

うわっ!蒸し暑………………あぁ」


周りを見渡し実感する

あれほど快適だった室温

起きてすぐに飲めた冷たい烏龍茶

まだ寝ている筈の2人の姿

何も無い


(そうか……終わったんやな)


蒸し暑く不快な室温

冷蔵庫すら無く埃っぽい畳の部屋

汗ばんでベトベトした身体

(こうやって見るとホンマにあそこは天国やったな…)


カバンを漁って烏龍茶の缶を取り出し

温くなったお茶を一気に飲み干す

喉が潤い少し気分が楽になった


フゥー……

と溜息を吐きながら気持ちを入れ替える

(良し…もう遠征は終わったんや

気持ち切り替えていこ

今日はカズヤさんとこ行くから

それまでに家事やっとかんとな)


決意したアタルは早速行動を開始する

まずはカバンをひっくり返し

荷物を全て出した

その中から洗濯物をもう一度カバンに入れ

他は全て片付ける

フライパンにペンとメモ帳に後はスニーカーと綺麗なシャツとパンツが2〜3着

大した物は無い

体を濡らしたタオルでしっかりと拭き

下着を新しく着替えた


部屋の隅置いてあった洗濯用洗剤と

カバンを持って外へ

そのまま自転車に跨りアパートを出て右へ

(うわ…ペダル重たっ)


ママチャリ特有の重いペダルが懐かしい

(MBをずっと漕いでたからな

でも座り心地はこっちの勝ちや)

そんな事を考えながら自転車は本屋手前の

交差点に差し掛かった

キキィー

っと一旦道の端に停まり辺りを見渡す

(確かこの辺に……あれ?…無かったっけ?)


キョロキョロと注意深く見渡すが目的の店は

見つからない

(えー……嘘やん…潰れたんかなぁ…昔の記憶やから曖昧なんは認めるけど……)


とりあえず交差点を右折して本屋の前まで

ゆっくりと進む………すると

本屋の向かいのにひっそりとあるガラス戸

の中に何台もの洗濯機が並ぶのが見えた

(おっ…あった!)


キィっと停まり外観を見渡す

民家に挟まれた2枚のガラス戸

そのガラスに内側から貼られた

コインランドリーと書かれた紙

それ以外は何も無い

(わかるかこんなもん!間違い探しレベルやんけ…商売する気あんのか?)

自転車を降り中へ入ると

中は縦長の構造になっており案外広い

縦型洗濯機にシャツとパンツ作業用ズボンを入れ洗剤を1回分セット

300円を入れてスイッチを押すと

残り時間35分と表示された

チラッと時計を見ると時刻は9時14分

(9時49分までかホームセンター行って帰って来たら丁度エエぐらいか)

自転車に跨り軽くなったカバンを持って

何を買うか考えながらホームセンターへ向かう

(ホウキにチリトリと石鹸にトイレットペーパーに便所用ブラシとハンガーにビニール紐か…買うのはそんなもんかな)

考えがまとまり軽快にペダルを漕ぐ

暫くすると懐かしのホームセンターに到着

今着ている物は全てここ出身だ

10分程店内を物色し次々とカゴに入れていく

ホウキとチリトリのセット800円

トイレ用ブラシ478円

トイレ用洗剤218円

トイレットペーパー12ロール446円

ビニール紐239円

針金ハンガー10個入り170円

しかし石鹸のコーナーで迷いが生じる

薬用石鹸3個入り466円と

普通の石鹸10個入り918円だ

(薬用かノーマルか…それが問題や

薬用は高いけど薬用やからな…

ノーマルは安いけど肌がツルツルしにくい…

……うーむ………薬用かノーマルか……

いやここはノーマルや!

身体洗うなら薬用やけどそれ以外にも使う

からな 流石に薬用で食器洗うのは何か嫌やし

決まりや……フー…大変な決断やった…)

そんな下らない決断を下し

レジへと向かう

お会計は3367円

店を出てそれらを全てカバンに入れ

コインランドリーに戻る

カバンからホウキの柄の部分がはみ出しているのは気にしない

コインランドリーに戻ると

洗濯機は止まり洗濯は終了していた

洗濯物をカバンに入れ

アパートに戻った


アパートに戻ると一息つく暇も無く作業を始める

先ずは部屋の掃除

ドアや窓を全て開けホウキで掃いていく

粗方綺麗になったところでチリトリに溜まったゴミをコンビニの袋に入れた

次は嫌な便所掃除

勢い良く扉を開け一気に便器を磨き出す

(悪霊退散!悪霊退散!)

そんな心の呟きを続けながら15分

見違える様に綺麗になった

続いて洗濯物を干す作業

ビニール紐に針金ハンガーを括り付け

窓枠の端に付いている棒にそれを付ける

取れないように頑丈に括り付ければ完成だ

そこに洗濯物を干していく


全て終わり時計を見ると時刻は11時08分

「あぁーしんどーー」

と思わず口に出しながら体を伸ばす

と同時にグルォォォっと腹が鳴った

(ハァ 空腹を騙しながらやっとったけど流石に限界やなメシ行くか)


アパートを出て

自転車を3分程漕ぎスーパーへ

部屋に冷蔵庫が無いので一度で食べ切れない

野菜や肉を買うことが出来ない

自然と足が袋麺へ

袋麺を持ってレジへ行こうとするが

クルッと反転し総菜コーナーへと向かう

398円の弁当と98円の食パンを取り

袋麺と共に今度こそレジに並ぶ

(無理や…この25日間で膨らんだ胃を満足させるには袋麺のみでは…これは冷蔵庫が使える様になるまでの緊急回避なんや!仕方ない!)

そう自分に言い聞かせお会計をしてアパートに戻る お値段828円


アパートに戻り早速弁当を食べ始める

塩昆布の掛かったご飯だけを先に食べ

おかずと食パンで食べ進めて行く

味の濃いおかずで食パンが3口はいける

(500円で満腹になるには今のところこれしか無いやろ)

あっという間に食べ終わり

温い水道水を2杯飲んで食事は終了

何とか満腹になった


何とか落ち着いたところで次の準備に取り掛かる タオルとバスタオルを持ち新しい石鹸を持って銭湯へ向かうことに


銭湯へ着き自転車を停めて中へ入る

30分後 綺麗になった状態で銭湯を出た

(やっぱり普通の石鹸は全身がキュッキュッ

するな まぁこれはこれでエエか)


アパートに戻りタオルとバスタオルを干して

水を1杯

「フゥー」

(さぁ家事もメシも入浴も終わった

カズヤさんに会いに行くか……ちょっと怖いけど)

サングラスを掛けポケベルを持ち

頭にタオルを巻いて完成

作業着は洗濯中の為今日は整備士スタイルだ

(打ち方教えるらしいからどっか打ちに行くんやろうしな)


自転車に乗り駅へと向かう

蝉の大合唱を聞きながら自転車を漕いでいると遠くの方から盆踊りの歌が聞こえる

今夜は何処かで大会があるのだろうか

(久しぶりに屋台のイカ焼き食いたいなぁ

あれはなかなか家では出せん味やからな)


駅に到着し自転車を停めて鍵を掛け

時刻表と値段を確認する

時刻は12時42分

(えーとほんなら47分発で…ここで乗り換えて…690円か)

切符を買いホームに入る

5分程で到着した12時47分発の急行に乗り

都会の大きな乗り換え駅を目指す

途中、U店の最寄り駅に止まったが

上りのホームからその様子は伺えない

(どうなってんのかなぁ約1カ月は顔出して無いもんな明日にでも見に行こか)

そんなことを考えながら電車は25分程で

都会の駅に到着した 相変わらず人が多い

浴衣を着たカップルや女性同士のペアが

チラホラと見られる

(どっかで花火大会でもあんのかな)

線を変わって下りの急行に乗り換え

K浜を目指す


電車の窓に反射する自分の姿は

サンダルを履いた休憩中の整備士

前の座席に座っているのは夏らしい

ショートパンツ姿の2人組のギャル

楽しそうに話している……

何だか少し悲しくなりながら

20分程でK浜のあるN駅に到着した


降りようと席を立つと

前に座っていた2人組のギャルも席を立った

そのままK浜に向かい歩き出す

暫く歩いていると後ろから声が掛かった

「あのースイマセーン、K浜の海水浴場って

こっちであってますかー?」


「あぁ合うてますよ自分も向かってるとこですから」


そう答えると不思議そうな顔で聞いてくる

「えっ海行くんですかぁー?えー意外ですねぇーアハハハ」


少しショックなアタル

「い、いやぁ仕事なんですよハハハ 」

(いやおもんない…全然おもんないから)


「じゃー付いて行っていいですかぁー?」


「あ、あぁどうぞ すぐ着きますよ5分ぐらいです」


後ろで楽しそうに話す2人組を引き連れ

5分程歩きK浜海岸に到着

2人組に別れを告げる

「じゃあ自分こっちなんで楽しんで行って下さいね また」


「はーい お兄さんも仕事頑張ってなーありがとーバイバーイ」


そう言って手を挙げ海の家がある方へ向かう

何軒かある海の家を見ながら

言われていた茶色い外観に青いパラソルの

テーブル席がある家を探す

(あった あれやな多分)


茶色い外環の四角い建物

外には青いパラソルのテーブル席が4つ

そして目印の大きな看板


それをパッと見た瞬間に笑ってしまう

(ハハハハハハッ絶対これや!間違いないわ)


看板には海の家[トロピかーな]と書かれていた


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