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回胴式優義記  作者: 煙爺
第一章
31/171

タイムイズマネー

修正しました


7月18日 金曜日 23時22分


自分の荷物を大きな鞄に仕舞っていく

作業着にシャツとパンツ

靴下とスニーカーにバスタオル…

そして最後にフライパンを仕舞い

帰る準備は完了した

(あっ明日はE店やから作業着仕舞ったら…

まぁエエか最後やしツナギで)


山村から声が掛かる

「おっ用意終わったんか?ほんなら今までの

経費引いて浮いた分渡すからな」


「あっはい ありがとうございます」


「えーと…ほんならコレや」


渡されたのは結構な量の札と300円

「えっこんなに⁉︎」


「まぁ部屋借りたからな169000円浮きや

で3分の1の56300円や確認せえよ」


「はい…確かにありました」

(結構浮いてんねんなぁ やっぱりホテル代は

デカいな)


「よし それから明日は夕方帰るんやろ?

その分はピンで計算してくれ

組みやとややこしなるからな」


「わかりました」


ここでカオルからも声が掛かる

「あーもうアタル帰んのかー早いなー」


「ハハハ確かに早かったですね お世話になりました」


ここで思い出したかの様に山村が言った

「あっそれからな冷蔵庫の件で頼みがあんねん」


「えっ?いや遠征終わってからでいいですよ」


「いや違うんや えーとな 実は9月から

カズヤが来る事になったんや ほんでな…」


それを聞いたカオルが騒ぎ出す

「えー!カズさん来んのー⁉︎じ、じゃあ

俺のビデオ録画どうなんのー⁉︎」


「いや 最後まで聞けや えーと…そうや

ほんでな カズヤ冷蔵庫持って来るつもり

やったらしいねんけど 事情話したら

ほんなら持って来るつもりやった冷蔵庫

アタルにやるからこの冷蔵庫くれって

言うとってな どうや?」


「あーなるほど 全然いいですよ

早く使えるなら得しかないですし」

(まさかの帰ってすぐ冷蔵庫使えるとはラッキーやな)


「そうか ほんならカズヤに言うわ

ちょっと待ってや」

そう言うと電話し始める山村

一方で隣のカオルは落ち着きがない

「えー…どうなんねやろ…あーあ」


気の毒に思ったアタルが声を掛ける

「大丈夫ですよ もし無理やったら自分に

鍵貸してくれたらビデオ録画やっときますから」(まぁ世話なったしこれぐらいはエエやろ謎のボクシング講座も2週間受けたしな)


その言葉を聞きパッと明るくなるカオル

「えー!?ホンマにー!ありがとうアタル!

命の恩人やわー!!」


「いや命の恩人て…ビデオ録画に命掛けんでも…」


その時山村から声が掛かる

「カオル!うるさいぞ電話中や

アタルちょっとカズヤが代わって欲しい

言うてるから話してくれ」


携帯を渡され少し緊張するアタル

「あっハイ」

(噂のカズヤさんか ちょっと緊張するな)


「もしもし 代わりました 初めまして

神崎 中です」


少し低めの声が聞こえる

「どうも初めまして 桐嶋 一也です

何かスマンの 料理とか掃除までやらしとる

みたいで 2人が迷惑掛けとるやろ?…」


「いえいえ全然 こちらこそ世話なってます

料理はたまに作るだけですし 掃除は便所汚いのが嫌な性格なもんで ついでにやってるだけ

ですから」

(話に聞いてた通り 悪い人ではなさそうやな)


「そうか ならエエんやけど…ほんでやな

初めてで悪いねんけど頼みがあんのや」


「はい なんですか?」


「一回な俺んとこ来て色々教えて欲しいのや

遠征の事をな」


教えて欲しい そう言われて困惑するアタル

「えっ?……教える様な事…ありますかね?」

(いや無いやろ 話聞いてる限り絶対無いわ)


「いや 引き継ぎみたいなもんや

ほれ店の状況とか地図の引き渡しとかあるやろ?クランキーコンドルやったか?

最近出た台やから俺打った事無いのんや

勿論、帰りには冷蔵庫と一緒に送って行くし

だからどうやろか 頼めんか?」


事情を説明され納得する

「なるほど わかりました そういう事やったら行かせて貰います 明後日の日曜日でいいですか?」

(登校日やから昼までやろ)


「ホンマか 助かるわ 日曜やな

店に着いたら店長呼んでくれ

言うたらいけるようにしとくから

一応 携帯の番号教えとくわ

ありがとうな……それからちょっと

カオルに代わってくれんか?

スマンな 日曜待ってるわ」


「あっわかりました ちょっと待って下さい」


携帯をカオルに渡しながら伝える

「カオルさん カズヤさんが代わってくれって言ってますよ」


「カズさんがー?何やろ」


携帯を受け取り話し始めるカオル

「もしもしー?カズさんどーしたん?

…うん……うん…」


その時ふと大事な事を思い出し山村に話す

「山村さんポケベル返しときますわ

忘れてました ありがとうこざいます」


「ん?もうエエんか?別に貸しといたるで

その代わり基本料は自分で払えよ」


「えっいいんですか?じゃあ借りときます

便利なんで」

(携帯に比べたら不便やけど無いよりエエやろ)


「そうか じゃあ2500円」

と言いつつ手を出す山村


「……シビアですね」


「……金は揉めるからな」



8月19日 土曜日

朝早くから駅まで切符を買いに来た…が…

(高すぎやろ新幹線12000円て……

新幹線無しやったら……えーと…6800円か

それやったらこっちの方が得やな

時間は倍ぐらい掛かるやろうけ…ど…?)


ここでアタルは大変な事に気付く

(違う!その分打つ時間増やしたら得や!

今のE店は時給5000円ぐらいやから

新幹線で3時間 普通で6時間やったら

その差は15000円や!ということは

3時間長く打って新幹線で帰ったら

約10000円も得するやんけ!

いやーハッハッハ気付いてもうたわー)


意気揚々と21時10分発の新幹線の切符を買い

アパートに戻りMBを置いて

喫茶店に行き、中にいた山村に挨拶する

カランカラン

「いやーおはようございます 山村さん

タイムイズマネーですねぇ」


訝しげな表情で山村が挨拶する

「おはよう……いきなり何言うてんねん…」


「いやー1万円もお得なんですよ」

そう言って先程思い付いた時給の話をする


「なるほどな ほんなら今日は20時まで打って帰るんやな?」


「はい その方が得なんで そっから駅まで走って帰りますトレーニングがてら」


「そうか 送ったろ思とったけど要らんか?」


「えっ?いいんですか⁉︎…でも時給下がりますよ?」


「まぁ車やったら10分ぐらいやからな

送ったるわ最終日やし」


「ありがとうこざいます!ほんなら20時45分まで打ちますわ いやー助かりました」


その後カオルも合流し Z店に向かうカオルからビデオ録画をくれぐれも宜しくと頼まれ

地図と共に鍵を渡された

「ほんならまたなーアタル 地元帰ったら

メシでも奢るから頼んだでー」


「はい じゃあまた」


そして遠征最後となるE店へと向かう

今日は20時45分でやめる為

途中交換はしなくていいと山村に言われた


E店に着きいつもの様にギリギリに入店して

台に座る 今日は613番台だ

コインを借りて

いつも通り左リールに青7を狙い出す

初当たりは投資6000円

171ゲームでBIG

そこから

27 REG

209 BIG

340 BIG

186 BIG

52 REG

と呑まれそうになりながらも何とか繋がるが326ゲーム回して遂に呑まれてしまう

(あらら)


そこから追加は投資2000円

396ゲームでBIG

そして19ゲームでREGときて…

346ゲーム回して再び呑まれる…

(またかいな…)


嫌な予感がする中

追加投資4000円

476ゲームでREG…しかし21ゲームBIGに繋がり177ゲームREGを引いたところで

215ゲーム回してまた呑まれる……

総回転数は2283回でBIG6回にREG5回

時刻は13時24分

まだまだ辞める訳にはいかない

(まぁしゃあないわな…)



そして追加投資は………恐怖の24000円


959ゲームでやっとBIG……

辞める訳にはいかないという先程の決意が

思わず揺らぎそうになる…

(マジか…この台…………あっ613番や!

初日に座って負けた台やろ確か!

うわぁ…因縁の台やんか…

まぁ打ち切って帰ろか……)

少しヤル気を無くしつつ

頑張って打ち始めるアタル


するとその後166ゲームBIGを皮切りに

188 BIG

44 REG

136 BIG

406 BIG

19 REG

442 BIG

18 REG

260 BIG

とダラダラした展開に持ち込まれ

夕方17時の時点で

4712回転BIG13にREG8となり

コインは下皿に600枚程

(17時…ホンマやったら帰ってる時間や

今ヤメたら多分10000円ぐらいやろ

36000円使ってるからマイナス26000円……

あと3時間半のロスタイムで遠征も終わりや

まぁ出ても出んでも最後まで頼むで613番…)


その気持ちが伝わったのか


ロスタイムから不死鳥の如く蘇る613番台

57 BIG

87 BIG

7 BIG

11 REG

134 BIG

103 REG

18 BIG

30 REG

205 BIG

19 BIG

と一気に2000枚枚近いコインを獲得

ここで一旦箱のコインだけを流すことに


ザザーザーッ…カラカラ…カラ…ピッ


表示されたのは2058枚

(おぉ下皿に満タンあるから2800はあるな

よっしゃ続きや!急がんと)

続きを打ち始めるも台の勢いは止まらない

82 BIG

94 BIG

328 BIG

68 REG

58 BIG

117 REG

45 BIG

327 BIG

5 BIG

21 REG

176 REG

47 BIG

と引いたところで

時刻は20時30分

(あと15分か……)


そしてBIG終了後32ゲーム目


カルリッ


っと青テンが決まり

右リールに青7を狙う………も揃わずREG

ラストにBIGをと必死に回すも時間は過ぎ

バケ後104ゲーム回して

20時45分終了となった

(最後に青テンからのバケで終わるのが

613番らしいわ…25日間おおきにな)


ザザーザーッ…カラカラ…カラ…ピッ

表示されたのは2725枚


本日の収支

総投資36000円

回収95700円トータルプラス59700円

6887回転 BIG28回 REG16回 4789枚


すぐに店を出て車に乗り込み山村と共に

駅へと向かう

駅へと向かう途中、山村が話し出す

「どうやったアタル初めての遠征は?」


「いや毎日疲れましたけど楽しかったですわ

それに当面の生活費も出来ましたし

ホンマありがとうこざいます 助かりました」


「そうか それやったらエエけどな

まぁ予定より大分稼げたからな

あとカズヤの件頼むわ お土産あるって

言うてたから楽しみにしとけや」


「えっそうなんですか?お土産かぁ…

楽しみにしときますわ」

(何やろ 海の家やから…サザエの壷焼きかな

大好物やねんけど)


「まぁカズヤに宜しくな」


「はい 言うときます」


「…………」


「…………」


「…………」


「……いや何か無いんですか?

ほら感動する言葉とか…流れ的に

あるでしょう 年長者として」


「いや……特に無いわ……」


「……そうですか」


「……おう」


微妙な空気の中 駅に到着

「ほんなら ありがとうこざいました

また地元で」


「おう また連絡するからな 」


そう言ってあっさりと車は去って行った

(…いやそこは頑張れよとか……)


チラッと時計を見ると時刻は21時

(あっ10分しか無いやん!急がんとホームどこや?)

急いでホームに向かい新幹線に乗り込んだ


窓から見える景色眺めながら思い出す

コンドル456の札

ロッジに泊まりブタキムチ焼き

初日にいきなり負け

新装で山村さんが呼び出し

お茶を渡して懐柔

ホテルを出て部屋を借り

E店に同業者が来て呼び出し


色々な事があったが中学生にしては

内容の濃すぎる夏休みだった

(いやーしかし儲かったなぁー

これで当分は大丈夫やな)



深夜0時47分

4回の乗り換えを経て

地元の最寄り駅に到着

もうヘトヘトだ

(アカン…めっちゃしんどい…眠すぎて)


何とか足を前に出し続け

アパートに着いたのは1時41分

布団を引き寝ようとするがその前に

明日の予定を確認しなければならないと思い

学生カバンの中から登校日のプリントを

引っ張り出し、眠い目を擦りながら目を通す

(えーと……7月の……アカン眠い…

えー……え…え?…えぇ!?

えぇぇぇぇえぇぇぇぇえ!?!?)


そこにはアタルの眠気を覚ます事が書かれていた


登校日のお知らせ


本年度の登校日は20日が日曜日の為

振替で21日月曜日8時45分からとなります

(それやったら明日まで打てたやんけ!!

うおぉぉお!時給分逆に損してるやん……

タイムイズマネぇぇぇぇえ!)


その時


ブーブーブー


とベルが鳴る

(………何や このタイミングで…山村さんか)


表示された数字は5963


(5963……ゴ…ク…ロー…サン………って

このタイミングで……送る……か)


それと同時に布団へと倒れ込んだ


遠征収支

トータルプラス1549400円


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