第1話 そこには文字がある ヒント編
斑目冬馬はクラスメイトだ。
斑目の名前を貼り出された名簿で見たとき、親が遊んだ名前だな。
と思った。
短い髪に長い首、瓜実顔で陸上部。
中距離を走る斑目は「競走馬」と、みんなにイジられていた。
ちなみにオレ、島根琥太郎も、遊んだ名前をつけられていた。
斑目ほど気付かれないが、斑目よりも酷い名前だ。
しまねこ太郎。
なんでだよ。
◇
オレの学校は中高一貫の全寮制で生徒は男子しかいない。
高等部から入学したオレと違って、斑目は中等部から学校にいた。
高校一年生、寮では同じ部屋だった。
「一年よろしく」
斑目はそう言って地元のご当地ジュースをくれた。
オレは斑目に懐いた。
我ながらちょろい。
「陸上部に入らない?」
斑目に誘われたが、断って将棋部に入った。
オレは運動は苦手だ。
斑目はわかりやすく、がっかりしていた。
◇
四月が終わる頃、オレが机の上に広げている将棋盤を見ると玉将がなかった。
オレは趣味で詰将棋をしていた。
落とした、としては不自然だった。
他の駒は、最後に見たままのところにあったから。
斑目のイタズラ。
そう思い浮かんだ。
勉強をしていると、斑目が部屋に戻って来た。
「おかえり。将棋の駒知らない?」
「ああ。隠した」
隠した?
「なんで」
「ヒントをやるから、探してみろよ」
そうきたか。
オレは承諾した。
「じゃあヒント」
斑目は人差し指を立てた。
「そこは文字が沢山ある」
中指も立てた。
「光と影のところ」
さらに薬指を立てる。
「裏側」
斑目が口角を上げた。
「以上」




