EpisodeLookingforfriends
「冒険者登録おめでとうございます!それでは今日からお二人は黒石級冒険者になります。」
試験を終え、細かな事務手続きを終えた二人に受付嬢はそう告げた。
「それではこちらの冒険者証を首にかけておいてください。こちらが今後お二人の冒険者としての身分を示すものになります。それでは最後に冒険者のランク制度について説明させていただきますね!新たに冒険者になられた方は皆この黒石級冒険者になります。こちらの冒険者証でもほとんどのギルドがある街や国なら出入りができます。なので冒険者証を旅の身分証としての扱いにするならそのまま町を出ても構いません。しかし、冒険者として依頼を受ける場合、黒石級のみでのパーティは認められていません。なのでお二人にはまず、自身よりランクの高い冒険者の方とパーティを組んでいただいて、いくつか依頼を達成し、白石級冒険者を目指していただきます。そして白石級になりますと白石級同士のパーティは許可が下ります。いかがですか、何かわからないところなどはありますか?」
二人はいきなりの多くの情報に目を回す。
しかしイリスが先んじて正気に戻り質問をする。
「あの、自分よりランクの高い冒険者さんなんてどうやってパーティを組んでもらえばいいんですか?」
青年もそれに追随するように声を上げる。
「あ、確かに、僕らそんな知り合い居ませんよ?」
そんな二人の言葉を笑顔と艶のある肌で受け流した受付嬢が言葉を発する。
「あら、いるじゃないですか。しかも銅級の冒険者さんが。」
二人がはっとした顔をしたのを見て受付嬢は楽しそうに笑う。
「それじゃ、これから頑張ってくださいね。応援してますから!」
そう言われ二人は解放される。
二人はギルド内を見渡し、先ほどまで試験官だった男を見つける。
「あ、リックさん居た。どうしよう、話しかけていいのかな?」
「でも話しかけなきゃ何も始まらないわよ!」
二人が男に近づいていくと、男が二人に振り返りまるで全てを見通したような顔で口を開いた。
「お。お疲れ様!いいね!その冒険者証。懐かしいね~初々しいね~。それで、僕に何かあるのん?」
からかうような笑みを浮かべる男に青年は問う。
「あ、あの、僕たちが白石級になるまでのパーティを組んで欲しいんですけど、あの、えっと、その...」
話がまとまらず言葉が詰まる青年を見た男は少し顔を険しくした。
「ダリア、それはナシだ。あ、いや、パーティの話じゃない。パーティは組んでやる。でもその話し方はやめとけ。この稼業はよほどじゃなきゃ一人でできるもんじゃない。人との関わり合いで敵は作るべきじゃないが舐められるのはよりまずいぞ。」
男の警告を聞き入れ青年は顔つきを変える。
「はいっ!それじゃあ、改めて僕たちをパーティに入れてください!!」
「よし!いいよ。それじゃ、僕の仲間も紹介したいから後で栗鼠の胡桃亭って飯屋に来てよ。」
そういうと男はギルドの外へと去っていった。
「確かに、俺、甘く見てたかもな、冒険者。」
青年がぼそりとつぶやく。
「そうかもね、でも下向いてる暇なんてないわよ。お父さんの痕跡、探すんでしょ。」
そう、青年が冒険者になった目的の一つ。それが父の冒険者証を探すことだった。
「あぁ、さっき受付嬢さんにも聞いてみたけどこの町のギルドには父さん、ギールって名前の金級冒険者証は届いてないらしい。やっぱり帝都のギルド本部に行かないといけないのかも。」
「死んでるていで喋るのやめなさいよ、生きてるかもしれないじゃない。」
「生きてるならなんで帰ってこないんだよ!父さんは母さんを悲しませることだけは絶対にしなかった!母さん、父さんの話をするとき懐かしそうな表情の中に少し悲しそうな眼をするんだっ!父さんが生きてるんなら母さんにあんな眼をさせない!...っ悪い。大声出して...そう、死んでるんだよきっと。」
「そう、ならあんたもおばさん悲しませるような真似しないことね。」
「あぁ、わかってるよ。わかってる...」
暗い話で沈んだ空気を彼女が切り裂いた。
「あーもうやめやめ!今日は試験にも受かったんだし、今日は暗い話はもうナシ!!リックさんのとこ行くわよダリア!」
青年は彼女の言葉に力強く頷き、二人はギルドの外へと歩き出した。
外はもう昼というには遅く茜色になり始めている空だった。
目的の栗鼠の胡桃亭はギルドの向かいにあった。
「あ、ここだったんだ。」
二人は扉を押し開けて店へ入る。
まだ明るいというのに店内の喧騒と熱気が二人を叩いた。
遠くから喧騒に気圧される二人を呼ぶ声が届いた。
「おーい!こっちこっち!おいで~!!」
テーブル席に掛けていた四人組が二人を呼んでいた。
二人は客を避けながら呼び声の主に近づいて行った。
「やぁやぁ、お二人。ささ、座って座って。それでは紹介しよう、僕の自慢の仲間たちだ!」
そう言い放つと男の仲間たちがそれぞれ自己紹介を始める。
「あなたたちがリーダーが受け入れた新人たちでしたか。私はゴーロック。このパーティで僧侶をしております。等級は銅級です。これからよろしく。」
そう言うのは座っているにもかかわらず巨体を感じさせる男だった。
「まぁたリーダーが新人を拾ってきたって聞いたときはどうしたもんかと思ったけど、うん、今回のは悪くない顔つきじゃない。私、このパーティの魔法使い。サンティよ。私も銅級。ま、悪くないってだけだからせいぜい足引っ張らないようにガンバってね、足引っ張ったらどこでだって置いてくから。」
彼女の深く被ったフードの隙間から覗く長い耳が彼女の種族がエルフであることを知らせる。
「サンティ、いいか、た、よく、ない。だってしょ、しょうが、ない。りーだー、きょうかんのりっく、よばれる。あ、ぼ、ぼく、グ。よろ、しく。やくわり、は、せっこう、だよ。」
そう小型の犬獣人が語る。
「こいつらが僕の仲間だ!気のいい奴らさ!君も早く一人前になってこんな仲間を探すんだぜ!!」
そういうリックに頷きながら青年たちも自己紹介を返す。
「僕はダリアです。よろしくお願いします!」
「あたしはイリスっていいます。よろしくお願いします!」
「よし、じゃあ明日からガンガンやっていくから、今日はしっかり喰って騒ごうぜ!」
六人は話もほどほどにしっかりと食事を済ませ明日に備えて宿屋へ帰っていった。
青年たちもリックに紹介された安宿屋に狼代で二部屋借りたとしても当分泊まることができることが判明した。イリスは同じ部屋でもいいと言っていたが、年頃なのだから泊まれるうちは二部屋借りようと説得した。
青年たちは明日からの冒険に備えてベッドに入る。
ベッドに横たわると眠気が急速に迫ってきた。それに身を任せようと思考を止めると、ふと明日からの冒険のことを考えてしまう。そんなことを何度か繰り返し、青年たちはいつの間にか夢の中へと旅立って行った。




