EpisodeHelloWorld
ここは世界樹が見守る剣と魔法、そして称号に彩られた世界。
そしてこの物語の始まりは世界の数ある国の一つ、ニンフルサグ帝国。
ここは帝国領辺境の小さな村。
あるよく晴れた日、青年が勢いよく家の扉を開ける。
「母さんやったよ!ついに初級剣術の称号を授かったよ!」
晴れやかな顔の青年とは裏腹に、青年の母親の顔には笑顔や祝福は少なかった。
しかしそれを表に出さぬよう努めて母親は口を開く。
「そう...そう...ついになのね、あなた、本当に冒険者になるの?」
「もちろん!!そのために毎日剣術の練習だってしたんだ!それに家の手伝いだって欠かさずしたしね!」
母親の顔は不安と心配、そしてほんの少しの懐かしさを覚えていた。
「そう、やっぱり止められはしないわね。分かったわ。待っててちょうだい。」
母親は覚悟を決めたような顔をしたのちに納戸に向かって歩いて行った。
そうして母親は納戸から一振りの鉄剣と一着の革鎧を持ち出した。
持ってきた母親の顔にはもう不安は感じられなかった。
「なあに?これ」
青年の純粋な問いに母親は剣と鎧を懐かしむ目で見ながら答えた。
「あなたのお父さんが置いていったものよ。もしあなたが冒険者になろうとしたらこれをって。」
「父さんが?」
ほとんどの記憶が話の中の父親。立派な冒険者だったという。母親からそんな父親の話を聞けば聞くほど青年の中で冒険者という存在への憧れは膨れ上がっていった。
「そうよ。きっとあなたを守ってくれるってね」
青年は幼き日の父親との数少ない伝聞じゃない記憶を思い出す。木剣で遊んでくれた日々の思い出を。
「やっぱり父さんにはぜーんぶお見通しだったわけだ。さすが父さん。すごいや。母さん、父さん、ありがとう。」
青年が革鎧に袖を通すと、まるで誂えたからのようにぴったりだった。
そして腰に佩いた剣は無骨ながらしっかりとした安心感を与える重みをしていた。
その様子を見た母親が口を開く。
「それで、明日にはもう出発するの?」
青年は頷き、いつも村の子供たちを見守ってくれた神父様を思い浮かべ言葉を発する。
「うん。そうしようと思ってる。称号を鑑定してくれた神父様も間を置かず行動すべきっていつも言ってるし。」
「そう。なら今日はもう寝なさい。一番近くの町までもそれなりに歩くんだから剣を佩いて歩くのは疲れるわよ。」
「わかった。お休み母さん。」
そうして世界樹の裏に太陽が隠れていった。
そして明朝。
青年は決意した顔で口を開く。
「それじゃあ、母さん行ってくるよ。」
母親は首を傾げ青年に聞く。
「あの子になんにも言わなくていいの?」
「うん。いいんだ。それじゃ。」
青年は家に背を向け歩き出した。
青年にとって今までの世界は生まれ育った村だった。
今。故郷の村を離れたこの瞬間から青年の世界は驚異的速度での広がりを見せる。
それは多くの期待を感じさせ、また多くの受難を予感させるものであった。
そして子を送り出した母は子の名前を噛みしめるように囁いた。
「ダリア...あなたの旅路に数多の加護があらんことを。」
そして送り出された子は地図を見て行き先を見据え、自身を鼓舞するように叫んだ。
「行くぞ!よろしくな!!世界!!!」




