【雨城蝶尾】番外編・ルノとセレーヌの初めの出会い
ルノとセレーヌの出会いは、かなり簡素なものだった。
準騎士爵は貴族ではなく、あくまで平民であるため、出会う可能性は恐ろしく低いものであったのだ。
だが、セレーヌが準騎士爵を持っていることも事実だった。
だからこそ彼女は、貴族に雇われたのである……。
__________
「セレーヌ、今日の仕事はこれで終わりです。みんなも帰るころでしょうから、もう帰ってもいいですわ」
「わかりました! ありがとうございます」
セレーヌは優しげな雇い主の言葉に笑顔でうなずいた。
雇い主は十三歳のセレーヌと同じくらいの年頃の、まだ幼いご令嬢。
伯爵令嬢にも関わらず、下っ端のセレーヌも気遣ってもらえるその優しい心に、セレーヌはこれからも仕えていくと心に決めていた。
「ウェスタ様は本当に優しいお人だわ……」
セレーヌは当時、伯爵令嬢であるウェスタに対して心酔していたと言えるだろう。
そんなセレーヌにある日転機が来た。
どの爵位の人間も参加する、大きな会合が実施されることとなったのだ。
もちろんセレーヌも、ウェスタについてゆく。
「一言も話してはいけませんのよ」
「わかりました」
セレーヌは小声で言うウェスタに対してこくりとうなずき、うしろにそっとついていった。
ずらりと大勢の貴族が並ぶなか、一際幼いのがウェスタともう一人。
ウェスタよりもセレーヌよりも幼い、男爵家の席に座る男の子。
貴族というとウェスタに出会うまでそこまでいい印象はなかったセレーヌだったため、その感情は今でも根深く残っている。
だからこそ、凜々しいというよりはかわいらしい、そんな貴族には珍しい雰囲気のそんな男爵子息がどうも気になってしかたがなかった。
それぞれはもうすでに出会っていたことを知らないまま、このときは通り去った。
その後、再会することは考えもしなかっただろう。




