食い逃げ妖精、七人の小人のおやつを八等分する。
森の奥に、七つの煙突が並んだ家があった。
赤い煙突。
青い煙突。
黄色い煙突。
緑の煙突。
紫の煙突。
白い煙突。
一番端には、煤で黒くなった煙突。
煙は七本とも、同じ屋根から立ち上っている。
家の中には、七つの椅子があった。
七つの木の皿。
七つの小さな匙。
壁には七つの帽子掛けが並び、暖炉の前には七足の靴が置かれている。
その家には、七人の小人が暮らしていた。
小人たちは朝早くから森の下にある鉱山へ入り、夕方まで光る石を掘っている。
仕事から戻ると、必ずお茶を飲む。
その日のおやつは、七つ実のタルトだった。
丸い焼き型いっぱいに、薄い生地が敷かれている。
赤苺。
青葡萄。
黄色い蜜杏。
緑の森林檎。
紫の木苺。
白い雪梨。
黒い夜桑。
七種類の実が、渦を巻くように並んでいた。
朝、七人の小人たちはタルトを焼き上げると、食卓の真ん中へ置いた。
「帰ったら七等分だ」
赤い帽子の小人が言った。
「今度こそ、同じ大きさに切れよ」
青い帽子の小人が言った。
「前は赤苺のところが大きかった」
黄色い帽子の小人が言った。
「その前は夜桑が少なかった」
緑の帽子の小人が言った。
「丸いものを七つに切るのが悪い」
紫の帽子の小人が言った。
「六つか八つなら簡単なのに」
白い帽子の小人が言った。
黒い帽子の小人は、何も言わなかった。
一番小さいので、いつも最後に残った切れ端を渡されるからである。
七人は扉へ鍵をかけ、鉱山へ向かった。
けれど、台所の窓を閉め忘れていた。
昼過ぎ。
リリィが窓から入ってきた。
甘い匂いがしたからである。
タルムは森の入口にいた。
七つの煙突を一本ずつ数えているうちに、リリィを見失っていた。
リリィは食卓へ降りた。
目の前に、七つ実のタルトがある。
焼けた生地の縁は狐色。
果実の蜜がつやつや光り、真ん中には砂糖で作られた小さな花が載っている。
リリィは椅子を見た。
一つ。
二つ。
三つ。
四つ。
五つ。
六つ。
七つ。
それから、自分を指差した。
「八人だ」
食卓には、細長いケーキナイフが置いてあった。
リリィには大きすぎる。
両手で柄を持っても、刃の先は持ち上がらない。
リリィは羽を動かし、空中から柄へ飛び乗った。
体重をかける。
刃が、タルトへ沈んだ。
さくり。
一つ目の切れ目。
リリィはケーキナイフを引きずって回った。
さくり。
二つ目。
さくり。
三つ目。
タルトの上を何度も飛び越え、向きを変える。
砂糖の花を倒しそうになり、慌てて抱える。
蜜杏の上で足を滑らせる。
木苺を一粒つまみ食いする。
しばらくして、タルトには八本の切れ目が入った。
大きさは、だいたい同じだった。
一つだけ少し細い。
リリィは少し考えた。
細い一切れを持ち上げる。
「これはリリィの」
皿へ載せる前に、先端をかじった。
さくっ。
薄い生地が崩れる。
赤苺の甘酸っぱさ。
青葡萄の香り。
蜜杏の濃い甘さ。
森林檎の歯ごたえ。
木苺の酸味。
雪梨のみずみずしさ。
最後に夜桑の深い甘さが残った。
「おいしー!」
金色の粉が、タルトの上へぱらぱら落ちた。
七色の果実が、かすかに光った。
リリィは一口ずつ食べ進めた。
赤苺のところ。
青葡萄のところ。
黄色い蜜杏のところ。
食べるたびに味が変わる。
「忙しいお菓子だ」
けれど、おいしい。
リリィは一切れを食べ終えた。
皿には、七切れ残っていた。
リリィは満足して、砂糖の花を抱えた。
そのとき。
家の外から、足音が聞こえた。
ざっ。
ざっ。
ざっ。
七人分の足音だった。
「今日はたくさん掘れた」
「腹が減った」
「お茶を沸かせ」
扉の鍵が回る。
リリィは砂糖の花を抱えたまま、天井へ飛んだ。
梁の上へ隠れる。
扉が開いた。
七人の小人が帰ってきた。
赤い帽子。
青い帽子。
黄色い帽子。
緑の帽子。
紫の帽子。
白い帽子。
黒い帽子。
七人は靴を脱ぎ、手を洗い、食卓を囲んだ。
赤い帽子の小人が、タルトを見た。
動きが止まる。
青い帽子の小人も見た。
黄色い帽子の小人も見た。
七人全員が、八本の切れ目を見つめた。
「八等分されている」
赤い帽子の小人が言った。
「一切れない」
青い帽子の小人が言った。
「七切れ残っている」
黄色い帽子の小人が数えた。
「なら、一人一切れだ」
緑の帽子の小人が言った。
「だが、一切れ食べられている」
紫の帽子の小人が言った。
「誰かが先に帰ったのか」
白い帽子の小人が言った。
七人は互いの顔を見た。
全員、揃っている。
黒い帽子の小人が、食卓の上を指差した。
金色の粉が残っている。
小さな足跡もついている。
七人は揃って天井を見上げた。
梁の上で、リリィが砂糖の花をかじっていた。
「おいしー!」
金色の粉が落ちた。
七人の帽子が、きらきら光った。
「妖精だ!」
「リリィだよ!」
「なぜ、われわれのタルトを八等分した!」
リリィは七人を見下ろした。
「八人いたから」
「七人だ!」
「リリィもいるよ」
「勝手に人数へ入るな!」
「もう食べたよ」
赤い帽子の小人が、椅子の上へ立った。
青い帽子の小人が、その肩へ乗った。
黄色い帽子の小人が、さらに上へ登る。
七人は順番に肩車をした。
一番上の黒い帽子の小人が、リリィへ手を伸ばす。
「代金を払いなさい!」
「ないよ!」
リリィは梁の上を走った。
黒い帽子の小人の指が、羽の先へ触れる。
リリィは砂糖の花を放り投げた。
黒い帽子の小人が受け取る。
その拍子に、七人の肩車が揺れた。
右へ傾く。
左へ傾く。
最後には、七人まとめて絨毯の上へ倒れた。
リリィは窓へ向かって飛んだ。
「ごちそうさま!」
「待て!」
「一切れ分、働いていけ!」
リリィは窓から外へ飛び出した。
七人の小人は追いかけようとした。
けれど、食卓に残ったタルトから、甘い香りが立ち上った。
七人は足を止めた。
「冷める」
赤い帽子の小人が言った。
「追いかけるのは食べてからだ」
青い帽子の小人が言った。
七人は席へ戻った。
一人一切れずつ、皿へ取る。
今度は余りも切れ端もない。
黒い帽子の小人にも、他の六人と同じ大きさの一切れが渡された。
七人は一緒にフォークを入れた。
赤い帽子の小人の一切れには、赤苺だけが多く入っていた。
青い帽子の小人には、青葡萄。
黄色い帽子の小人には、蜜杏。
緑の帽子の小人には、森林檎。
紫の帽子の小人には、木苺。
白い帽子の小人には、雪梨。
黒い帽子の小人の一切れには、夜桑がたっぷり入っている。
けれど、それ以外の六つの実も、一つずつ入っていた。
どの一切れにも、七種類すべての味がある。
七人は黙って食べた。
さくり。
甘い。
酸っぱい。
香ばしい。
最後に、七人そろって言った。
「おいしい」
窓の外で、金色の粉が少しだけ光った。
それから毎日、七人の小人はおやつを八等分するようになった。
八切れ目は、窓辺の小さな皿へ置かれる。
翌朝には、いつもなくなっていた。
代金が置かれていたことは、一度もなかった。
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