↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
13/14

12 「天女天生寵愛乱下」

ラー王国にて催された祭りから、一夜明けた。


 

 城下町は日常に静寂し、溢れ出ていた熱狂はいつも通りの原動力として機能している。

 明ヶ鳥の鳴き声と共に朝は訪れた。


「・・・・頭いってぇ・・・」


 しかし、昨日の衝撃を消化しきれないものもいる。

 のぼせに飲まれ、打ち負かされてしまったものたちが。


「うぅぅ・・・今なん時だぁ・・?」


「朝だぜ騎士様方。仕込みがあんだから、とっとと退店してくれや」


 このオヤジは・・・店主だ、覚えてる。

 自分のお気に入りの酒を、次々と俺たちに飲ませてきてた。それで自分も一緒に飲んで、若い従業員の女の子に怒られてたな。仕事しろよ、おやっさん。


「仕事しろよ、おやっさん」


「飲み潰れた客を追い出すのも、仕事の内だバカヤロー」


 はぁ と店主は呆れ気味に,水の注がれたコップを机に置いた。


 4杯分


「・・・んぁ?・・・あぁ・・・」


 そうだ、4人で来たんだった。


 副騎士長・・・は誘っても来なかったから、むさ苦しい男3人+タダ酒が飲めるからとついてきた一輪の後輩花。


「んぎゃっ・・・ぎゃぁぁ・・・ふへっ、ふへへ・・・」


 覚醒してるのかと思ったが、まだ夢の中にいた。


「ミスターク、副騎士長様がお尻を叩きに来たぞー」


「ぶはっ!?はいっ、よろこんで!」


 変態の目覚めを促すのに、効果的な方法を選んだつもりだったのだが・・・想像以上の効果を発揮したらしい。

 鼻息を淫らに吹き鳴らして、変態騎士”ミスターク”はおはようござった。


「・・・・・・・レウ、おはようございます。副騎士長”グレイス”の姿が見えないのですが」


「夢から覚める時だよ。ミスターク」


 脛を蹴られた。痛い。心が。


「午後の護衛任務までに、肩慣らししておくよーに」


「チッ。了解しました」


 毒をまぶして退店していった。仕事には忠実だが、趣味の領域については扱いに困ってしまう。


「さて・・・起きろおっさんども!!」


 後のおっさん二人を雑に蹴り起こした。

 それなりに力を入れないと微動だにしないほどの大体躯なのだ。


「うぃ〜っ。酒の泉から酒豪の精が・・・・ぬあっ!?目の前に存在しているぞぉい!?」


 店主を見て驚愕しているおっさん。騎士務め15年の大ベテラン”ドボッタ”さんだ


「朝だよ、ドボッタさん。後、あれは店主の酒好きおやっさんだよ」


「・・・おおぉ・・・ああぁ。いい夢を見とったようだの」


 老白の長髭を撫でながら、ドボッタは良い酔いに区切りをつける。


「ぶわっはっはっ!昨晩は愉快な酒盛りだったなぁドボッタ!」


「うむ。浴びるほどの酒は体には良いが・・・懐が切なくなるのが難点よな」


「へいへい毎度。がっぽり稼がせてもらったぜ」


「すすめてきた酒は、おやっさんの奢りだったけどね」


 起きざまでも騒がしいもう一人のおじさん”ボルドフ”は、コップ2杯を片手に持ち、喉の奥へと水を流し込んだ。


「さぁ、いったいった。勘定はすんでんだ。仕事してこい、騎士様方」


 爽やかとはいかないが、上気分で3人は退店した。


 任務は午後から。

 事と次第によっては、否が応でも酒は引く。

 血の気もまたーーーー。



○ ● ○ ● ○ ● ○ ● ○




 凍てついた空気間は、その皇光にて晴解する。




「城下の新作、”ルクティゼイレのレッドフルミルク”を所望します」


 ラー王国女王”ライトニング”は目の前の騎士に命を授けた。




○ーーー「ラー王国 巫女の謁見室」ーーー○




「え やなんすけど」



 3秒にも満たない間で、スモー王国の女騎士は返命した。左の小指で、黒穴1つをほじほじ探索しながら。極めて不服そうに。


「お使いは御免っす。部屋の前の護衛に任せるか、女王ご自身で買いに行かれればどーっすかね?警護なら引き受けるっすよ」


「 ”城上より化身が出づる事能わず” ・・・などという慣習が根付いていなければ、とうの昔に裸足で駆けておりますよ」


「裸足の女王様(じょーさま)は見てみたいっすけどね」


 僅かな興味よりも気だるさが勝り気味に、女騎士”ナレータ”は女王との会話を続ける


「存分に振いたいのは、足じゃなくて腕なんすよねぇ〜」


「ふふっ。スモーの騎士は豪胆でいらっしゃる」


「あっしを舐めてかかってきた輩は、王様だろうと転ばせてきた人生っすよ」


「まぁ。そちらの王も例外ではないのですか?」


「・・・シャドウ王には転ばされったっす。あれは敵に回すとやべー王っす」


 あの時の身震いは、今でも鮮明に思い出せる。いや・・・やっぱ思い起こしたくねーっすね・・・。

 

「ってか、あっしの舌には合わなかったっす。ミルクはどうしようがミルクっす」


 城下で流行りの新作ミルク”ルクティゼイレのレッドフルミルク”。


 見た目をそのまま説明すると、ただの赤いミルクだ。

 大牙獣ルクティゼイレの新鮮な血に、一般的な甘味料のパクティラ (パクティラ花の蜜)。

 それと多分・・・隠し味に剣蛇の炙り汁を数滴たらし、それらをミルクにぶち込んでいる。

 あの蛇は炙ると甘い液を垂らし、それが肉に滴って”甘肉”なんて呼ばれている。その液で甘味を増幅させているんだろう。再度言うっすけど、あっしの舌には合わねーっす。


「生き血とは・・・なんと斬新な事でしょう。昔代と今代における、価値観の移ろいを感じます」


「昔の蛮族さんは、生き血もがぶ飲みしてそーっすけどね」


「返り血を浴びることはあっても、喉に通せるものではありませんでしたよ。・・・だからこそ・・・私は嬉しいのです」


 女王ライトニングは巫座を立ち、透き通る壁の外を見やった。


「このひと時が。過去の私では成すことのできなかった・・・平和が」


 平和を一望し、ひたすらに安堵するように。


「平和を感じたくて、庶民の味わいに触れたいってことっすか?」


「ふふっ。そうとも言えますね」


「・・・・・・・仕方ねぇっすね〜っ。お使いを頼まれてやるっすよぉ」


「命じた立場ですが・・・よろしいのですか?」


「ここにいっぱなしじゃ、腕どころか足まで鈍っちまいますからね。足慣らし・・・っす」


「それは頼もしい。・・・では、お願いいたします」


「へ〜い・・っす」


 気乗りはしていないが、ナレータは女王の命を受けて謁見室を後にした。

 本当に気分は乗らないのだが、それ以上に・・・お願いを断ることへの罪悪感が彼女の心に重くのしかかっていた。

 真面目が故にーーー。



○ ● ○ ● ○ ● ○ ● ○



「あなたの騎士様はとても優秀ですね」


 一人になった謁見室にて、女はぽつりと呟いた。


 外を見やり、その先にいる”あなた”を想いながら


「早く・・・あなたに会いたい」


 400前ーーー味わったことのない胸の高鳴りを


「あなたに、触れたい」


 味わいつくしたい


「もう少しで・・・叶いますね」


 障害を取り除き


「平和なこの世界で・・・」



 あなたと生ていくためにーーーー



「・・・・シャドウ」



 ーーーーー世界の悪を、取り除きましょう。


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。