王の前で
第4話です。
ついに王子がバルディア王の前へ。
誇りを捨てない王子と、静かに絡め取る王女。
そのやり取りをお楽しみください。
拘束されたまま、レオナルドは引き立てられていた。
重い扉が、軋む音を立てて開かれる。
――玉座の間。
視線が、一斉に集まる。
中央、玉座に座る王。
その威圧は、ただそこにいるだけで空気を押し潰すようだった。
レオは、その前へと乱暴に突き出される。
「……どうだ」
低く、響く声。
「我が国に亡命する気はないか。悪いようにはせんぞ」
一瞬の沈黙。
だが――
「……誰が」
レオは顔を上げた。
その瞳には、まだ炎が残っている。
「誰が、お前らの言いなりになるかよ」
吐き捨てるように言う。
「俺はアルトリア王国第一王子、レオナルド・アルトリアだぞ!!」
その声が、玉座の間に響く。
「無礼者!」
近衛が一歩踏み出し、剣の柄に手をかける。
「王に向かって、その口の利き方は――」
「待ちなさい、団長」
静かな声が、空気を断ち切った。
その瞬間、場の温度が変わる。
「……はっ」
近衛団長は即座に手を離し、一歩下がる。
ゆっくりと歩み寄る影。
ミレイア王女だった。
レオの前に立つ。
その距離は、あまりにも近い。
「可哀想なお方」
柔らかな声。
そっと、手が伸びる。
レオの頬に触れる。
その指先は、驚くほど冷たかった。
「お辛い思いをなさったのですね」
「……触るな」
レオは歯を食いしばる。
だが、その声にはわずかな揺らぎが混じっていた。
「私は、貴方を否定しませんわよ」
その言葉に。
レオの目が、大きく見開かれる。
否定され続けた自分。
奪われた立場。
失った誇り。
そのすべてを――
初めて、肯定された。
「貴方は、ここで終わるようなお方ではありません」
静かに、囁く。
「……」
言葉が、出ない。
心の奥に、何かが入り込んでくる。
それが何なのか、理解する前に――
「……連れて行きなさい」
ミレイアは、振り返ることなく命じた。
兵が動く。
レオの腕が引かれる。
だが――抵抗はなかった。
その瞳は、どこか遠くを見ていた。
燃えていたはずの炎は――
形を変え、別の色へと変わり始めていた。
第4話をお読みいただき、ありがとうございました。
王子はまだ折れていません。
ですが、その“誇り”こそが——
次の展開へと繋がっていきます。
次話では、彼の内面と“選択”に焦点を当てていきます。
引き続きお付き合いいただけると嬉しいです。
――
最後までお読みいただきありがとうございます。
もし面白いと感じていただけたら、評価やフォローをいただけると励みになります。
――




