73話 闘いの後で……
予選が終わった後、疲れた体を休めようとフード付きマントを装備してイベントエリアのオープンカフェでまったりしていると。見覚えのある二人が楽しそうに歩いているのを見かけたので、つい声をかけてしまった。
「ソルメイさん、ミルミルキーさん!」
「この声は……プラナさん!!」
「え? ええ?! あの人プラナさん?!? 人違いじゃなくて??」
ありゃりゃ、フード付きマントなんて怪しげな服装していたからミルミルキーさんに怪しまれてしまったか。むしろ声だけで自分を特定してくれたソルメイさんが凄いな。そう思いつつ、駆け寄ってきてくれた二人と少し歓談することに。
「お二人ともお久しぶりです。こんな格好ですがプラナです。」
「プラナさんお久しぶりです! 試合お疲れ様でした! まだ試合のアーカイブは見れてないですが、掲示板でプラナさんの事が話題になってたので、ご活躍してたのは知ってます!」
「え? プラナさん掲示板で話題になってたの? もー、それならそうと教えてよーソルメイさん!!」
「ごめんなさいミルミルキーさん。ちょっと理由があって……」
ちらっとこちらを見るソルメイさん。あー、自分がフロストリザードマンに種族転生したことはなるべく秘密にして欲しいって前にお願いしてたからな……。まあ、ミルミルキーさんなら言っても大丈夫だろう。前のコユキのことも言いふらしたりしないでくれていたし。
「ソルメイさんには自分から秘密にして欲しいと頼んでいたんです。実は、最近種族転生しまして。…こんな感じになってるんです」
そういって、マントの中から青白い鱗の尻尾をチラ見せする。びっくりしているミルミルキーさん。
「わっ?! え、えっと、コレって……。もしかしてコユキちゃんの事も含めるとプラナさんってもしかして、ごにょごにょごにょ(掲示板の山の人です)??」
ハッとした顔でこちらに近づき、耳元でこっそり山の人かどうか確認してくるミルミルキーさんに同意を示す様に頷いた。
「なるほどです! 確かにこれは迂闊に言えないですね! ソルメイさんごめんなさい」
「いえいえ! こっちこそ!」
とりあえずこれで、フレンドの人達全員にはフロストリザードマンの事と山の人である事は伝わったかな。フレンドの面々を思い浮かべながらそう考え、ソルメイさん達を見ると、謝り合戦になっていた。原因は自分なので、謝り合戦になっている二人を止めるべく新しい話題を持ち掛ける。
「そういえばお二人とも楽しそうな様子でしたけど、もしかして予選突破されたんですか?」
「あ、いえ。僕たちは予選の1戦目で敗退しちゃいました……」
「途中までは上手くいってたんですけど、範囲魔法の波状攻撃に合っちゃいまして、みんなもろともダウンでしたぁ〜。乱戦はやっぱりキツかったですよぅ!」
「その後は、カフェでウサ丸達を慰めたり他の試合を見たりしてまして。ついでに掲示板を覗いたら、今日イベントエリアでテイマーの人達の交流会みたいなのをやってるって見たんですよ」
「それで、二人で行ってみよ〜! ってなっていたとこです!」
「テイマー交流会ですか?」
聞いてみると、どうやら秋イベ後にテイマークランを立ち上げようとしている人達が主催で、テイマー交流会みたいなものをやっているらしい。クランに興味のない人でも交流会のみの参加は良いらしい。掲示板で見る限りかなり盛況とのこと。へぇ、交流会か。予選前に見た空飛ぶクラゲみたいな珍しい従魔とかいたら見てみたいな。後は、コユキとミントにも色んな従魔と触れ合う機会を作りたい。
「お二人が参加するなら、自分も参加してみたいですね。コユキとミントに色んな従魔と触れ合いをさせてみたいですし」
「コユキちゃん達を他の人に見せても大丈夫なんですか?」
「今回を機に公開しようかと。コユキとミントも今は珍しいですけど、秋イベ後に『リトル・ポータル』が設置されたら、あの場所にも他のプレイヤーが来る事もあるでしょうから。今のうちに2匹を見せて生息域も示して、後から質問攻撃とかされない様にしようと思ってます。そうしたら、通常フィールドでも2匹を自由に召喚できますし。」
「確かに! 普通の街道とかでずっと秘密にしないといけないのは大変ですしねー。あと、ミントちゃん? 新しい従魔ですか?」
「はい。前に3人で散歩した際に、自分も騎獣が欲しいと思いましてテイムしました。交流会の時に紹介……あっ、コユキもミントも多分凄く目立ちますし、自分もマントを脱いで行こうと思うので更に目立つと思います。お二人に迷惑になりますから、交流会では別行動した方が良いですよね? そうしたら、ミントとは後で個別で紹介の場を」
「あー、ちょっと待ってプラナさん。えっと別行動する必要無いかも。むしろ、一緒に行って欲しいなー。ね、ソルメイさん」
「はい……! プラナさんがご迷惑で無ければご一緒したいです。多分、僕たちも目立ちますから……」
「え?」
ソルメイさん達も目立つ? どういう事かと聞いてみると、なるほどソルメイさん達の従魔もかなり珍しいらしく、必然的に目立ってしまうらしい。
先ずミルミルキーさんの珍しい従魔については、前にファスでの散歩時に見せてくれた「マジックホース」のポニちゃんだ。あの時、自分も薄紫色の馬モンスなんて初めて見たと思ったし、周りの人達も注目していたのだが、やはりポニちゃんは珍しかった。2属性持ちというだけでも珍しいのに、物理系が大半の馬系モンスで魔法特化。更には見た目も薄紫色と一目で他の馬系モンスと違うと分かる色合い(他の馬系モンスは、通常茶色系統か緑系統)。あの散歩の後、ポニちゃんを出すたびに周りから視線が集中するし、マナー違反にならない程度でポニちゃんについて聞かれたりしたらしい。
次はソルメイさん。ソルメイさんの珍しくて目立つ従魔は、「ビューティーローズ」のハナ子だ。実はウサ丸も珍しい種族みたいなのだが、見た目はあんまり他のラビ系と変わらないので目立たない。しかし、ハナ子は違う。前はミニ薔薇サイズで腕に巻きついていれば腕輪系のアクセサリーに見えなくもなかったが、進化したら立派な大きさの美しい大輪の薔薇が咲いており、動きやアーツ発動時のエフェクトも派手になったため従魔だと直ぐに分かってしまうらしい。しかも、プレイヤーの多くがテイムしている植物系モンスはマンドレイク系であり、それ以外となると一部のプレイヤーがジャングルフィールドに出るバイツ系(蔦)やトレント系をテイムしている位である。そのどれでもないハナ子は、とっても目立っていた。ミルミルキーさんと同じく周りから注目され、話しかけられる事が多いらしい。それから……
「最近ピヨ彦が進化したら、見た事ないモンスターになっちゃいまして……」
「ピヨ彦?」
「あ、プラナさんには紹介できてませんでした! すみません。前に会った時に紹介しようと思っていたんですけど、あの時色々びっくりしすぎて、つい……」
「あの時は色々驚かせてしまいましたから……こちらこそすみません」
前に会った時という事は、フロストリザードマンの里のマイルームに招待した時か。あの時は配慮が足りずにほんと、すみません。それにしても「ピヨ彦」とは…うん、ソルメイさんらしいネーミングだ。名前からして鳥系モンスかな?
「ピヨ彦は、【従魔法】スキルのレベルが上がってテイム枠が増えた時にミルミルキーさんと一緒にファスの東側にある雑木林フィールドでテイムしたんです。ウサ丸が【空中歩行】出来るので、鳥系や虫系の飛行モンスも1〜2匹程度なら大丈夫だけど、一斉にエンカウントすると今のメンバーだと辛かったんです。なので空中戦闘が可能な「エアバード」狙いで雑木林フィールドに行ったんです。」
「そうしたら、レアモンスターの「ピヨット」が出たんですよー。雛だからまだ跳べないけど鳥系モンスだしという事でソルメイさんがテイムしたんです。」
「レアモンスターとはいえ序盤モンスですし、他にもテイムしてた人はいっぱいいます。それに「ピヨット」を普通に育てたら「エアバード」になりますから、そこまでは問題ありませんでした。「ピヨット」時点ではまだ飛べなかったけど【風魔法】は持ってて、戦闘にもほどほどに参加できました。ただ……」
「私のポニちゃんが水浴びが好きって前に話したじゃないですか。あれを見てたピヨ彦くんが一緒に水浴びしたり、ソルメイさんが使う【水魔法】にも興味しんしんで、そしたら進化先に「グレイバード」というのが出たんです」
「掲示板で調べたら大きさは「エアバード」より小さめの小鳥サイズだけど【水魔法】と【風魔法】が使える魔法特化モンスってあったので、喜んで進化させたんです! 僕のメンバーって、ウサ丸とシカ太郎は物理系でハナ子がバフと回復系なので、アタッカーの魔法系は願ったり叶ったりだったんです」
「ナイスな進化先でおめでとー!って私もお祝いしたんですが、その後が問題で……。ピヨ彦くん今度はコロちゃんの使う【土魔法】にも興味を示して、水浴びだけじゃなく砂浴びもするようになってて……。まさかって思ったら」
……水浴びだけじゃなく砂浴びもするなんてスズメか? というかこの流れなら次の進化で【土魔法】も覚えられそうだな、3属性も使えるなんて確かに珍しそうだ。でも小鳥系ならそんなに目立たない気がするけど、もしかしてでっかくなったりカラフルになったりしたのかな?
「ミルミルキーさんとの闘技大会に向けての最後の追い込み中にピヨ彦が進化の時を迎えました。ピヨ彦自体は闘技大会メンバーじゃなかったんですけど、他のメンバーの疲労度回復とかもあったので、メンバーはローテーションしてたんです。それで、ピヨ彦もレベルが上がって進化先に【土魔法】が追加で使える「スモールトライシュービル」というのが出たんです。シュービルって何か分からなかったんですけど、【土魔法】が使えるとあったのでつい勢いで選択しちゃいまして……」
「私もやっぱりー!って思って、進化だ進化だー!って浮かれちゃって、掲示板で調べるのを忘れてそのままオススメしちゃいました……。まさか、あんな風に進化するなんて…」
「シュービルですか? 確かに聞いたこと無いですね……ど、どんな感じになったんですか??」
沈んだ顔をした二人に飲まれて、ゴクリと唾を飲み込みながら聞いた。するとソルメイさんはミルミルキーさんと顔を見合わせた後、真面目な顔をして小言で伝えてきた
「あの、その…ハシ……でした」
「え?」
「…ハシ…ビロコウ……だったんです」
「ハシビロコウ……??」
「はい、ハシビロコウです」
……ハシビロコウ? ってアレか? 動物園にいる、嘴がでっかくて厳つい顔の全然動かない鳥で有名な? え、ハシビロコウ?? 小鳥からハシビロコウになったのか?!
「進化したら全然見た目が変わって、大きさも膝丈くらいに大きくなってびっくりしました。名前に「スモール」って付いてるのに全然小さく無いなって思ったんですけど、リアルのハシビロコウはもっと大きいみたいなので、これでも小さめなのかなって……。でもそれより重要な事に気づきました。今までフィールドや掲示板でハシビロコウなんて見た事ないなって…」
「慌てて私も調べたんですけど「シュービル」って名前のつくモンスは全然検索に引っ掛からなくて。これは、ポニちゃんやハナ子ちゃん並に注目されちゃうかもって二人で後から後悔しました……。いやっ、凄い進化先でピヨ彦くんもかっこよくなって嬉しいには嬉しいんですけど、やっぱり目立つのはちょっと…」
「ちょっと見られるくらいだったら、僕も大丈夫なんです。でも、だんだん町やセーフティに入るたびに色んな人に話しかけられたり、フィールドとかでずっと着いてこられたりして…。ピヨ彦の進化前でもそんな感じだったのに、進化したピヨ彦を連れて歩いたらどうなっちゃうんだろうって怖くなって……」
「ストーカーさんは通報したら直ぐいなくなったんですけどねー。前に私がバニーさんに種族転生した時は、結構注目されましたけどそれだけだったので当時はこういうのあんまり気にしてなかったんですよぅ。多分、バニーさんの里の場所は皆んな知ってるし、私の他にもバニーさんになった人が居たからだと思います。でも、こう色々あるとちょっと…。最近はフレの人からあまり人のいない穴場を教えてもらって、2人でレベル上げしてました!」
「それで今回の交流会も不参加か、もしくはハナ子やピヨ彦とかだけ呼び出さないで参加しようかなって思ったんですが」
「私、閃いたんです! 一人じゃなく二人なら注目が分散するんじゃないかな?って。それに、交流会なら掲示板で話題になっていたクラゲさんや大っきい猫ちゃんやダチョウさんも来るかも! それなら、私たちもそう目立たずにすむと思ったんです! ポニちゃん達だけ仲間はずれにするのもあれですし……」
「だから、むしろプラナさんがご一緒してくれたら嬉しいんです! みんなで一緒ならきっと大丈夫ですよ!! それにプラナさんがやろうとしてた、先に情報を開示しちゃうの、僕もやろうと思います! そうしたら僕たちも色々聞かれることが少なくなると思います!」
な、なるほどー。木を隠すなら森の中ってやつかな? まあ、それなら遠慮なく同行させて貰おう。進化したハナ子やハシビロコウだというピヨ彦も気になるし。同行する旨を二人に伝え、交流会の会場にみんなで向かう。会場は、コロシアムから右側に少し離れたところの開けた場所らしい。道中、店の間の路地裏に入ってマント姿から闘技大会用の夢見る王子様ルックに装備を変更する。この装備姿を見たミルミルキーさんはスカーレットさんみたいに目をキラキラさせて褒めてくれたよ。作ってくれたメンマさん達に感謝だな。
路地裏から出ると、コロシアム前あたりで長い黒髪の何処か見覚えのある女性アバターの人が何人かのプレイヤーに囲まれているのが目に入った。周りのプレイヤーが身振り手振りで話しかけ、女性は手を振って何かを断っているように見える。なんだか困っていそうな雰囲気だなと思っていると、ミルミルキーさんが女性に近寄っていった。
「睡蓮さん! お久しぶりです!」
「あ、ミルちゃん…! 良かった! あの…すみません……友達が来たので失礼しますっ…!!」
女性は助かった!という顔をして、周りのプレイヤーを振り切ってミルミルキーさんのところに駆け寄っていた。周りのプレイヤーはなんだかまだ話しかけたそうだったが、これ以上はマナー違反になると思ったんだろう、悔しそうに離れていった。
「なんだか困ってたみたいだったけど、大丈夫でした? もしかして、またクラン勧誘だったり??」
「う、うん……。前も断ったんだけど…また話しかけられて…。ミルちゃん、ありがとう」
「えへへ〜、睡蓮さんにはいつもお世話になってるもん。助けになれて良かったです! あ、ソルメイさんは会った事あるけどプラナさんは初めてですよね? さっき話した穴場を教えてくれたフレンドの睡蓮さんです! 睡蓮さん、こちらはプラナさん!」
「よろしくお願いします、プラナといいます」
「よ、よろしくお願いします……!」
なんだか声の小ささといい、雰囲気といい、ちょっと大人しめな感じの人だなと思ってはたと気がついた。あれ?この人もしかして夏イベの時に出会った、爆走散歩の人では……?!
「そうだ! 睡蓮さん、これから用事ってありますか? もし良ければ一緒に交流会に行きませんか? あっ、プラナさんソルメイさん、睡蓮さんも一緒で大丈夫ですか?!」
「交流会って、あの掲示板に書いていたテイマー交流会でしょうか…? わ、私も一緒に行って、だ、大丈夫……??」
不安げな睡蓮さんを見て、ソルメイさんと顔を見合わせる。うん、ユニコーンが居たらもっと目立つだろうが、もうこうなったらとことん皆んなで目立とう。
「僕は大丈夫ですよ!」
「自分も大丈夫です」
「あ、ありがとうございます…!」
「わーい! じゃあ、みんなで交流会にレッツゴーですね!!」
…そんなわけで、自分とミルミルキーさん、ソルメイさん、睡蓮さんを合わせた4人で交流会会場へ。イベントエリアに最初に降り立った時も空飛ぶクラゲの周りに従魔持ちのプレイヤーが沢山いて色んな従魔を見れたけど、交流会ならもっと色んな従魔が見られる事だろう。うん、楽しみだ! コユキとミントも沢山友達が出来るといいな!
睡蓮さんとミルミルキーさんは、夏イベのドキドキランデブーの後、イベントエリアで再開してフレンドになっていました。
また、ソルメイさんは何回か雑木林フィールドに赴いた事がありますが、レアモンスターに出会った事は無かったです。ミルミルキーさんと一緒に行ったら現れるレアモンス、流石はリアルラック持ちは違うぜ!! ちなみにポニちゃんやハナ子にピヨ彦も珍しい進化をしていますが、一番やべぇ進化をしているのは実はウサ丸だったりします。逆にコロちゃんは今のところ王道な進化ルートを辿っています。今のところは……。
「キュイ?」
「きゅい??」
・ウサ丸進化ルート
プチラビ→ホワイトラビ→ホップラビ→スカイハイラビ
※「ホップラビ」までなら他のプレイヤーの従魔でも結構います。大体はその後の進化ルートとして蹴り特化の「キックラビ」か素早さ特化の「スピードラビ」に進化するのですが……ミルミルキーさんと遊んでいる際に特殊お手伝いクエスト「空のヒーロー」を受ける事になり、その報酬アイテムを使う事でウサ丸は特殊進化しています。進化時にスキル【風魔法】と【ヒーロー】を取得。【風魔法】を持ったものの、ウサ丸のステータス的には物理よりなのでこちらはまだ良いとして、未知のスキル【ヒーロー】が問題。ソルメイさんとミルミルキーさんはカッコいいねーと喜んでいますが、他の人にバレたら騒がれる事必須のヤバいアーツがてんこ盛りなスキルだったりします。スカイハーイ!!
主人公の影響でハナ子が、ミルミルキーさんの影響でウサ丸とピヨ彦がレア従魔になっているソルメイさん。何故、何故こうなった…。
・コロちゃん進化ルート
プチスクレイル→ ブラウンスクレイル→ハイブラウンスクレイル→リトルアーススクレイル
※【土魔法】特化の王道ルートを辿っているコロちゃん。今後はどうなるのか……?




