10 私は戦友だと思っています
四ヶ月後――
アリシアへ一通の手紙が届いた。アリシアは自室の椅子に座り、手紙を読む。
大きな窓から優しい日差しが降り注いでいる。
――――
アリシア、新しい生活に少しは慣れたかしら? なんとなくだけど貴女はメイドの頃と同じ様に家事をしようとして、シヴィラ様や宮殿のメイド達を困らせていそうな気がするわ。
あの夜、そう、あの大芝居を打った夜のことを今でもよく思い出すの。貴女は「冗談じゃない!」と怒るかも知れないけど、私には楽しい思い出になってる。とても楽しかった。
あの時も言ったけど「本来いるべき場所にいるべき人物がいる」というのは素敵な事だと思うのよ。
大芝居のシヴィラ様との打ち合わせで嫌でも伝わって来たの。あなたへの想いが。
しかもシヴィラ様は自覚していないみたいで本当に驚いた。
私は疑問に思ったのよ。「アリシアというメイドはシヴィラ様をどう思っているのだろう」って。
その疑問に対して私がどうしたのかは、もちろん貴女は分かっているわね。
話は変わるけど、私はもともと結婚に憧れとか無かったのよ。私はとにかく知識や技術を身に付けたいと思ってた。
自分の国から遠く遠く離れた異国で、自分が知らない全ての事を知ってみたいのよ。
でも仮にも王族の娘にそんな危険な事は許可が下りない。
私は必死になって両親を説得したわ。ずっと。
それでね、遂にお父様が折れたの。妥協案を出してきた。
「そんな遠くの国への留学など絶対に認めない。どうしても他国へ留学したいのなら
――――
コンコン。
自室の扉をノックされてアリシアは手紙から目を上げた。
椅子から立ち上がり、扉へ歩く。
「座ったまま『どうぞ』と応える」なんて出来ない。「そんなに私は偉くない」と思ってしまう。
扉を開けると廊下に二人の女性が立っている。
一人はこの宮殿のメイド。二人の王族女性に挟まれ、緊張で真っ青になっていた。
「……アリシア様。サラサ・クロウ様がお見えです」
アリシアはメイドの背後に立つサラサに疑問を覚えながら、メイドへ返事をする。
「ありがとう。もう戻っていいですよ」
早足で去っていくメイドを見ながら、サラサ・クロウがにこやかに口を開いた。
「アリシア、久しぶり。手紙に書いた通り、お父様がローバリウス国ならいいって言ったのよ。これからよろしくね」
「あの……、まだ最後まで読んでなかったんですけど……」
アリシア・ローバリウスは笑顔で応えた。
「とっ……、とにかく、私は勝手にサラサ様を戦友だと思っているので大歓迎です。これからもよろしくお願いします」
「あんまり仲良くしたら、シヴィラ様にヤキモチ焼かれるかも知れないわよ」
「まさか!」
二人は声を出して笑い合った。
日差しはどこまでも優しく、暖かく二人を照らしていた。
「まったく……。楽しげな声が聴こえたと思ったら」
笑い合う二人を、廊下からシヴィラが優しく、暖かく見守っている。
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ありがとうございました。 野中すず




