第79話: 鎌倉の我が城から日常のラピスラズリの城へ(場所が変わっても、ぐうたら生活は変わらない?何やっても大事になるよね。)
とうとうプラエクスに帰ってきた。
皆様から生存確認の共鳴歯車が頻繁にかかってくるのが煩わしいし、それに各組合に納品する仕事があるからだ。
12月は鎌倉の我が城がリゾートホテル化すると決まった途端に早めに納品していたんだけどね。そろそろ組合巡りをしないと、またまた共鳴歯車の連絡が来てしまう。
だから泣く泣く帰ってきたよ。
1人だと楽でいいね。ほんとしみじみ思ったよ。
でも心配してくれるのもありがたいんだよね。
二つに引き裂かれる心と心、暁ちゃんは今日も悩める13歳だった。
なーんちゃって。
まずは文明開花の皆様に生存報告をして、それからすぐ隣の時代屋さんに行った。
そしてソファーに座って喋っているときに、隣に座っている風ちゃんをチラチラチラチラと見てしまった。
クリスマスの日のゴスロリちゃん(ヴォルプタス様)の話を聞いてしまったら、直接は何も聞けないけれど、ついついチラ見しちゃうんだよね。
そしたら風ちゃんが、
「暁ちゃんなんか鎌倉に遊びに行った時から私のことチラチラ見てる気がするんだけど? 私なんかしたかな? 何か言いたいことがあるんだったらはっきり言ってよ。すごいうざいんだけど!」
(ガーン! うざいと言われてしまった。でも正直に言えないから、ここはスーパー忍法ごまかしの術だ!)
「いや、もともとかわいいと思ってたけど、最近ますます可愛くなったからついつい見とれちゃったんだよね」
と言ったら、風ちゃんがいつもの冷たい目で私の頭の先から足の先まで見て、黙って正面を向いてしまった。
しかし私は見逃さない。口元が少し上に上がってひくひくしてるぞ。
私の目は節穴じゃないんだ、ごまかされないよ。
でもここは黙っておこう、怖いからね……。
そんなくだらないことをやってたら、源さんが切り出した。
「そういえば、共鳴歯車の距離の問題なんだけど、外国とのやりとりができないかってずっと薫様や蒸気機関組合の人たちと言ってたんだ。でも暁ちゃんが言った通り実験してできたものを、薫様のお友達のエドワード様にイギリスに帰国するときに持ってってもらったんだよ」
(なんですと! いきなりあやつの名前が出てきたな。)
「あっ、そうだったんですか」
「結果的に大成功だったよ。また画期的なことになった。暁ちゃんの言う通りに半分に割った共鳴歯車の素のシュワシュワを一度通して、今度はその上から違う種類の共鳴歯車の素でまたシュワシュワさせると、距離が伸びるのが判明したよ」
(共鳴歯車の初めに渡した炭酸入浴剤はジャスミンの香りで、2度目に渡したのはラベンダーの香り、そしてペパーミントの香りを最後に渡したんだよね。
なんか懐中時計の検索機能で調べたら『重ね掛けすると距離が伸びる』って書いてあったからさぁ、あとは丸投げしたんだよ。)
「それはよかったです。今度から他の2種類も納品する形で良いですか? 3度シュワシュワすると、このデレクトアティオを全部網羅できそうですね。よかったよかった。情報は命ですからね」
(私ったら何を言ってんだろうね。まぁガッポガッポでウッハウッハならなんでもいいんだよ。ただめんどくさいのだけは勘弁なんだよ。)
「そうなんだよ。政治家や企業なんかは喉から手が出るほど欲しがるけど、なかなか数がないから競争率が激しいみたいだ。俺たちも蒸気機関組合に丸投げしてるからさ」
(みんなめんどくさい事は丸投げの丸投げなんだね。これ常識!)
「では、またごきげんよう」
と言って風ちゃんに冷たい目を向けられつつ時代屋さんを出て、蒸気機関組合に行った。
ここではあのビニールもどきの研究はまだまだ続いているけれど、だいぶ進んできたっていう話を聞いた。
納品をして、私はいつもの通りに廃棄処分待ちの部品を大量にゲットして、服飾組合に向かった。
組合に着くと、待ち構えていた副組合長に引っ張られて倉庫に行き、大量の商品を納品してから組合長室に行って環さんとお話しした。
もちろん美味しいコーヒー付きだ。
「暁ちゃん、やっと帰ってきたのね。待ってたわよ」
「さっき組合に入った途端に、副組合長に連れていかれて納品をさせられましたよー」
「そりゃそうよ。需要が高くて、みんな商品が入るのを待っているのよ。今競争なのよね。ちょっとでも遅れるようなものなら大変よ」
(あぁ、めんどくさいね。でも丸投げしているからまぁいいや)
「それは怖いですね」
「ほんと、女性の美に対する執着は怖いわ」
(そういうあなたの執着が一番怖い気もしないでもないんだけど……)
「暁ちゃん、今何か思った?」
(わー、あなたも心が読めるんですか?)
「いえいえ、滅相もございません」
「年末年始はありがとね。とても楽しかったし、有意義に過ごせたわ。薫も久しぶりに楽しい年末年始だったみたい。それからエドワードのこと聞いた?」
「時代屋さんから聞いたんですけど、共鳴歯車の事ですか」
「そうそう、とうとうイギリスとも連絡取れるようになったのよね。すごい進歩よ。さすが暁ちゃんね。それと年末年始を鎌倉で過ごした話をして、暁ちゃんがセンスよく水回りを改装してたのも話したら、羨ましがってたわよ。『見たかったなぁ』って言っていたわ」
(絶対あやつは我が城には入れないからな……)
「いやいや、ご遠慮させていただきます」
と言うと、環さんは爆笑していた。
「それから沖縄の話で、知念ちゃんに暁ちゃんが甘い甘いサツマイモのツルを渡して栽培するように言ったんでしょう?」
「あっ、そうですそうです。甘い甘いサツマイモが食べたかったんでお願いしたんですよ。今のサツマイモがあまりにも硬いし筋張ってるし、はっきり言って美味しくなかったんで」
「薫からの話だとまた大プロジェクトになるみたいよ。あれはもう全国でも売れるし、外国でも売れるから……」
(またですか? 私は自分が食べたかっただけなのに、なんでやることなすことこうなるかなぁ?)
「薫さまにはいつものように丸投げでお願いしますとお伝えください。とりあえずサツマイモのツルはあるだけ今渡すのでお渡ししといてください」
「いつものごとく欲がないのね。ちゃんと対価は払うから、また必要な書類とか契約書とかの事は後日ね」
「なるべくめんどくさくないようによろしくお願いします」
(推しのためならどんな課金も致しますがメンドなことはノンノンよ〜あぁ引き裂かれる乙女心…)
と言って私は服飾組合を出て、建設建築組合にも寄り、リサイクルステーションでお宝を大量に亜空間収納に入れた。
料理組合のいつものスマイル0円のお姉さんに手続きをしてもらって、やっと我が城『ラピスラズリ城』に帰ったのだった。
さぁ、明日から日々のルーティーンのいつもの日常が始まるぞ。
早起きしてクリーンで家の外と中を掃除して、
書斎で電子書籍を読む仕事をし、
文明開花に行って生存確認をしつつ、お昼を食べ夕飯と非常食用の食事を用意してもらい、
我が城に帰って、午後からはリビングで動画鑑賞をして夕飯を食べ、お風呂に入って、電子書籍を見ながら寝る。
この規則正しい生活をまた送れると思うと、余は満足ぞえ~!




