49 謎解きの続きは王都で
無理。
その一言は、紛れもない否定だ。
けど、ここで取り乱してはいけない。
なにが無理なのか、きちんと確認しよう。
「ムシアラ。なにが無理なんだ?」
「すべてだな」
「マジか!? 結構的を射てるし、筋も通ってると思うんだけどなぁ」
「言いにくいが、アンナの推理には齟齬がある」
「えっ!? どこ? 教えてくれ」
「アンナの話では、アンナの不在が原因で魔獣が王都を襲った、ってことになるけど、それはおかしいだろ。クロムハイツ家と魔族の間にお互いを思いやる約束があるなら、王都にクロムハイツ王宮錬金術師がいる以上、襲われることはないはずだ」
……
その通りだ。
父ちゃん母ちゃんがいるのだから、俺がいなくても問題ない。
…………
みっともない話だが、俺はうぬぼれていた。
自分はすごい。
選ばれた人間だ。
と、無意識に捉えていたのだろう。
……
なんてことない錬金術師なのに、増長したのが恥ずかしい。
「がふっ」
吐血はしてないが、倒れそうだ。
「ご主人様」
「わふっ」
パルマと子ナイトウルフが支えてくれなければ、立っていられなかった。
「傷心のところ悪いが、第二の問題もあるぞ」
信じられない。
このままでは、本当に血を吐きそうだ。
けど、放置もできない。
「その問題って……なに?」
「ポーラド村だ」
よかった。
「それと俺は無関係だ」
「いや、そうとは言えない。実は今、この村に移住を希望する貴族が大勢いるんだ。というのも、王都が魔獣に襲われるようになったのに反して、ポーラド村は平和そのものだからな」
やはり、俺とは無関係だ。
と、決めつけるのはよろしくない。
俺は今いまさに、それを学んだのだ。
「でもそれは解釈の問題だろ? 襲われることがない、って話じゃなく、襲われてるけど被害がない、って話じゃないのか?」
ほぼ素通りだったが、村を囲む防御柵には、俺が譲渡した塗料が塗られていた。
その効果とパルマが作ったゴーレムの活躍が相まり、無害なのだ。
「いや、前者だ。ポーラド村は、魔獣の襲撃を一切受けてない」
ムシアラの断言を、レアハムの大きな首肯が後押ししている。
なら、疑うのは野暮だ。
(んん~)
どうしたものか。
俺の推理は、足元から崩れかけている。
……
いや、もう手遅れだ。
筋違いもはなはだしい。
「イスペンからの使者がどうこう語る以前に、クロムハイツ家の者が住んでいる王都が襲われ、クロムハイツ家の者が住んでいないポーラド村が襲われてないんだから、アンナの意見を通すのは無理なんだ」
ムシアラにトドメを刺された。
俺の推理は完全に崩壊した。
だれがなんと言おうと、どうにもならない。
修復不可能である。
「でも、完全に否定できない点もあるんだ。実はポーラド村が魔獣に襲われなくなったのは、アンナが立ち寄ってからなんだ」
これをどう捉えるべきか。
すべてのことに俺が関わっているようにも思えるし、無関係にも思える。
正直、ここで判断するのは無理だ。
「よし。んじゃ、王都に行くか」
精査するには、それしかない。




