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召喚から始まる人生二周目〜今度の召喚は赤子から!?〜  作者: 谷口 水斗
学園 初等部編

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23 夏だ!海だ!潜入だ!


王都はすっかり夏の始まりを感じる気温となった。


神器を貰ってから三ヶ月。シグマの身体の研究と神力の制御などを試行錯誤しているとあっという間に過ぎてしまった。


どちらも進捗はいいとは言えない。が、無駄ではないと思っている。


進捗が悪い原因はシグマが神力を認識できないところにある。

バーラントの補助があれば認識はできるが、あくまでそれはバーラントが認識させて制御しているに過ぎないのだ。


だがバーラント曰く、シグマはちゃんと神力を内包していて、バーラントの補助がなくても神力を使うことができるとのことだ。


私が居ないときでもシグマは自分でやっているみたいだが、なかなか上手くいかないようだ。


─────────────────────────────────


「別荘⋯ですか?」

「うむ。ネーデル領よりもさらに南にある観光地。夏の間はそこの別荘に行こうと思っている」


夕飯の席でお父様がそんなことを言う。


「学園もあんなことになって授業もないことだ。メアリも大変だっただろうから息抜きも兼ねてどうかと思ってな。ここ最近忙しくしているだろう?」


確かにここ三ヶ月ずっと動き回っている。気づかなかった。


「だからいい機会だし、海に行こうと思ってな」


この世界の海か⋯そういえばまだ見たことがないな。


ネーデル領のさらに南。セーラム領にその観光地はある。

シーズンには他国の貴族も訪れる王国有数の観光地である。


王国貴族はセーラム領に別荘を持っていることが多く、夏はそちらで過ごすことが多い。


セーラム領は南にありながら、王都に比べ、カラッとしているのが特徴で、意外にも避暑地として扱われている。


「それに⋯ここ数年行っていないのだが、いい加減に来いと言われてしまってな⋯」


セーラム領から?どういうことだ?


「メアリは知らないわね。セーラム領にはこの人の姉が嫁いでるのよ。あなたからすると伯母ね」


困惑していると、お母様がそう教えてくれた。


「あまり得意ではないんだ⋯」

「こんなことを言ってここ数年どころか、あなたが生まれてから一度も行ってないわ」


それはどうなんだお父様⋯だが、確かにそんな避暑地のような場所に行った覚えはない。


「というわけで今年は行こうと思う。出発は1週間後を予定している」


そんなわけでセーラム領行きが決まった。


─────────────────────────────────


「ばかんすたのしみなのです!」


セセリアに髪を梳かれているシグマがそういう。


「バカンスという言葉はお姉ちゃんから?」

「はいなのです!なつのたのしいものっていってたのです」


聖女のくせに意外に俗っぽいことを知っているものだ。


「おねえちゃんはまいとしばかんすにいくっていってたのです」

「え?」


聖女が毎年バカンスに?


「どこに行くとか知ってますか?」

「? しぐまたちとおなじなのです」


セーラム領に聖女が来る?これはまたとないチャンスだ。


「シグマさん。同じセーラム領にお姉ちゃんが来るのであれば、もしかしたら会えるかもしれませんよ」

「ほんとなのです!?」


私の言葉にシグマが大きく反応する。セセリアに引き戻された。


「えぇ。もし会えるのならもちろん会えるようにします。絶対ではないので約束は出来ませんが⋯」


約束はしないが、会わせるのは絶対だ。会うべきだ。


─────────────────────────────────


「ふぅ⋯ここまで来るのは流石に疲れますね⋯」


翌日の夜、私は聖教国に来ていた。その目的は当然、聖女がセーラム領に行くのかを確認するためだ。


聖教国の中枢。この場所は聖女が住んでいる場所というだけあって、警備がなかなかに厳重だ。だがそれは表だけだ。

聖女は触れがたい存在、目に入れがたい存在のように扱われていて、一度内部に入ってしまえば身の回りの世話をしている人間ぐらいしか居ない。


「お久しぶりです。三ヶ月ぶりぐらいですか」

「ひゃあ!?」


聖女に後ろから声をかけるとかなり驚かれた。

周りへの警戒心が薄すぎるんじゃないだろうか⋯


「ふ、普通に声をかけるとか、現れるとかできないんですか!?」

「そう言われましても。見つかると面倒ですし」


既に防音の魔法は展開しているので大声を上げられる分には問題ない。


「むしろその警戒心の無さのほうが危ないと思いますが」

「こんなところに侵入できるのはあなたぐらいです!」


それはたしかにそうだ。だがそういう想定外は常に考えておくべきだ。


「説教しに来たわけではないのでこのぐらいにしましょうか」

「はぁ⋯⋯⋯」


聖女がため息なんてついてていいのか?縁起が悪い。


「それで⋯なぜ来られたんですか?」

「バカンスに行くと聞きまして。どこに行くのか聞きに来たんです」

「シグマから聞いたんですか?まぁそうです。バカンスといっても行幸のようなものです」


大変なものだ。仕事で観光地に行くことほど悲しいものはない。


「どこに、でしたね。場所はこの季節ですから、もちろんセーラム領です。王国ですね」


少し遠い目をする聖女。シグマのことでも考えているのだろうか。


「滞在期間は二ヶ月ほどとかなり長いので、もしまた御用がある時は近いので楽かもしれませんね」

「そうですね。実はネーデル家もセーラム領に来週から行くんですよ」

「⋯⋯⋯⋯え?」


うん、いい反応だ。そういうのを求めていた。


「セーラム領に着いたらまた接触するつもりです」

「ということは⋯⋯」

「もし可能なら、シグマと会っていただけるかと」


私がそう言うと、聖女は感極まったような顔をする。


「あ、そうでした。これをあなたに」

「これは?」

「私の母がそういう物を作るのが好きでして。シグマも最近一緒に作っているみたいで、それはシグマが作ったものです。ただまぁまだ試作の段階のものですよ」


少し形の崩れた髪留めを渡す。それはここ最近シグマがお母様と一緒にやっている手芸。お姉ちゃんに渡したいと言って、今日色々と試作していたものの一つ。何故か私に渡されたのだ。


「⋯⋯横流しなので会うとなったときには付けてこないでくださいね」

「大切にします」


本番のものが渡されたときには回収するつもりだ。私が一回も使わなかったら、それはそれで悲しみそうだからだ。


「では私はこれで。またセーラム領で会いましょう」


そう言って彼女の部屋から出る。

緯度の高い聖教国の夜はまだ少し肌寒かった。


─────────────────────────────────


「うみなのです〜!!」


王都から4日。私たちネーデル家はセーラム領に到着した。


久しぶりに嗅ぐ潮の香り。この世界初の海だ。

こういう時に見る海というのはなんというか特別な感じがする。

海が持つこのよく分からない力はなんなのだろうか。


「身を乗り出すと危ないですよシグマ様」

「うみはじめてみたのです!」


シグマが興奮ながらそう私に言う。

帝都に居たとすれば確かに海は遠い。

シグマの境遇を考えれば、海を見る機会などなかったのだろう。


この夏休みの間ぐらいは神力のことなど忘れて遊んでもらおう。

遊ぶべき年齢だろうし。


「うみはいついくのです?」

「今日は⋯恐らく無理でしょうね。セーラム領主邸で歓待を受ける予定になっているので」

「ざんねんなのです⋯」

「でも、あまり王都では見かけない海鮮料理が食べれると思いますよ」

「おさかな!」


セーラム領はその豊かな海の海産資源が有名で、ここで食べられる海産物が目的で訪れる他国民が居るぐらいなんだそうだ。


この世界ではあまり生食文化は無いようだが⋯新鮮な魚介類となれば期待していいだろうか⋯


─────────────────────────────────


「よく来たわねメアリちゃん!」


セーラム邸に着くやいなや私は酸欠にさせられた。


「そ、それぐらいにしてやってくれ⋯息ができていないようだし⋯」


息を止めるぐらい余裕なのだが、無意識で身体強化まで使って抱きしめてきているので、普通に殺人ホールドと化している。


「あら、ごめんなさい。でも初めて会った姪なのだからいいじゃない」


その姪が私でなければ鯖折りされて死んでいたぞ。ということは言わないでおこう。


「お久しぶりです義姉さん」

「久しぶりねぇシャル。あなたとこの子だけで来てくれても良かったのよ?」

「時間もかかりますから⋯この子にとっては酷でしょう?」

「まぁ⋯それもそうね⋯」


嘘である。夏の間、お母様はかなり暇ということもあり私と魔法の戦闘訓練をしていた。お母様からの誘いで。

なので来ようと思えば来れたのだ。お父様が行きたがっていないことをいいことに行かなかっただけだ。


「そっちの子は?また作ったの?」

「人聞きの悪いことを言わないで⋯この子は訳あってうちで暮らしてるのよ」

「へぇそうなの。よろしくね。えーっと⋯」

「しぐまなのです!よろしくおねがいしますなのです!」

「シグマちゃんね。元気がいいわね〜」


伯母によりシグマがもみくちゃにされてしまった。まぁシグマ本人は嬉しそうだからよしとしよう。


セーラム邸は領主邸ということもあり、王都の屋敷よりも広く豪華だった。

シグマはいろいろと目移りして伯母の話はあまり聞いていないようだった。


「ふぅ⋯⋯」

「長旅お疲れ様でしたメアリ様」

「座ったままというのが疲れますね⋯」


王国内は盗賊なども少なく、街道周辺の魔物は間引かれているので平和なのだ。そのため立つ機会が少なく、変な疲れ方をしてしまった。


「しぐまはおなかがすいたのです」

「じきに食事の時間になりますから、少しだけ我慢を」

「おさかなたのしみなのです」


実を言うと私も少し楽しみだ。王都やネーデル領における魚は、仕方ないことだがほとんどが干物で、物足りなかったのだ。


前の世界の輸送技術に今更感謝している。

今度ミレイに提案をしてみよう。もしかしたらできるかもしれない。


「セセリアはセーラム領の魚は食べたことありますか?」

「はい、もちろんございます」

「やっぱり王都とかとは違いますか」

「そうですね⋯評論家ではありませんのではっきりとは申し上げられませんが、いわゆる新鮮さというのでしょうか。そういったものを感じましたね」


やはり鮮度というのは大事だ。干物にしたり漬けられていないというだけで大違いなのだ。


「変なことを聞きますが⋯生で食べるといったことはありますか?」

「生⋯ですか?聞いたことはありませんね⋯」

「そうですか」


やはり生食には期待できないか。寄生虫などがあるし当然と言えば当然か。


「新鮮な魚介に興味がおありでしたら朝市に行くと良いですよ。あそこでは毎朝揚がったばかりの魚が売られていますので」

「なるほど。ありがとうございます。行ってみますか」


いい魚が見つかるといいな


─────────────────────────────────


「〜〜〜!!!」


大食堂に並べられた魚料理の数々を見て、シグマが言葉にならない声をあげている。


「喜んでくれて嬉しいわ。今日獲れたての新鮮な魚介類を使った料理たちよ。たくさん食べなさい」


早速と言わんばかりにシグマが料理に飛びつく。セセリアの眉間にシワが寄っている。


「まぁまぁ⋯今日ぐらい良いでしょう。身内ですし、お堅いものでもありませんし」


貴族でもないのだし、まだ小さいのだからテーブルマナーを口うるさく言う必要は無い。

身内しか居ないのであれば気にする必要もないだろう。

シグマも最低限のマナーは守ってくれるし、それで十分だ。


私も海鮮料理をいくつか皿に取る。やはり殆どが煮付けや焼きで、生のものは一切無い。


「煮付けだとお米が欲しくなりますね⋯」

「そうねぇ。私も欲しいわ」


いつの間にかお母様がそばに来ていた。


「東の国でね。煮付けとお米の相性がいいって教えてもらったのよ。それで試してみたら本当に美味しくてね。大陸だと味付けが違うからもしかしたら合わないかもしれないけれど。試してはみたいわ」


東の国⋯一度行ってみたいものだ。お約束のごとく文化があの国と似ている。


「そういえば朝市があるらしいですね」

「セセリアから聞いたの?いいわよ朝市は。活気があって、観光地とはまた別の顔が見れるわ。魚を競り落とすのもまた一興ね」

「行ってみようと思ってるんですよ。どんな魚があるのか気になるので」

「いいじゃない。明日にでも行くの?私もついていこうかしら」


朝市とはいえ魚ばかりだとかなり臭うだろうが、お母様は平気なのだろうか。


「あなたが何を競り落とすか楽しみね」

「競り落とす前提なんですか⋯」


まぁよさそうな魚があれば競り落とすつもりではあったが⋯




セーラム家による食事会は、皆が程々に食べた後、見計らったシグマが食べ尽くし、伯母が若干引いていた。さすがにセセリアが一言シグマに言いつけていた。が、シグマは満足そうにしていたのでいいだろう。


─────────────────────────────────

〈聖女side〉


彼女が言っていた日程なら、今日にでもセーラム領に来ているだろうか。


⋯⋯私はなんて無力なのだろうか。彼女に甘えて自らでは何もしていない。

あの子を探そうともしなかった。彼女が接触してこなければ、私はきっとあの子の生存を知らないままだっただろう。


聖女だから(・・・・・)などと言って、私は全てを諦めていた。

大事なあの子でさえ。


「なに辛気臭い顔をしているんですか?あなたは」

「ッ!?」


彼女が現れた。メアリ・ハル・ネーデル。

聖教国の中枢にすらいとも容易く侵入する女の子。


「そ、それは⋯⋯」


見られたくない時に来られた。せっかく彼女があの子と会わせてくれるというのに、私は⋯⋯


「聖女、という肩書きは邪魔でしょうね。それはきっとあなたを縛り付ける鎖になる」


彼女は人の心を見透かす力でも持っているのだろうか。先程考えていたことを当てられてしまった。


「でも、私は思うんですよ。そういう肩書きの人は必要だから居るのでは無いでしょうか。あなたがいなければこの世界の神は、人々に言葉を届けることができませんから」


⋯神の声など、もう長く聞こえていないというのに、そこに私が存在している意味があるのだろうか


「まぁ⋯もっとも、今のあなたには神の声は聞こえてないと思いますけどね」

「⋯⋯何が言いたいんですか」


彼女は私が無意味な存在だとでも言いたいのだろうか。

私にだってなぜ聞こえないのか分からない。


「自分で自分で、なんて思わないほうが良い」


彼女の雰囲気が変わった。まるで長く生きた人のような⋯⋯


「結局、誰だって自分にできることの限界はある。自分だけで全部できてしまう人なんてほんの僅か。それ以外は神かなにかです」

「⋯⋯⋯」


「けれど、自分だけで全部できないからと言って、その人が弱いわけではない。人はお互いに助け合うことで全てを行う。人を頼る事のできる人は強い。自分だけで全部できてしまう人と同じぐらい」


「人に頼るからなんだというのか。頼ればいい。力を貸してくれる、助けてくれるというのなら迷わず利用すればいい」


「私は、自分で言うのもなんですが、全部できる側の人間です。私はただあの子のために行動しているだけです。あの子を生かすと決めたのは私。あの時生かしたのは私だから。生かした責任として、あの子には相応の“幸せ”を与えるべきだと思っているからです」

「生かした⋯⋯」


「殺すことだってできた。むしろ殺すべきともいえた。それでも私はシグマを生かした。まぁ、これは私の甘さです」

「甘さ⋯?」

「私だって人ということです。分かってしまったら、斬れません」


彼女は⋯命がかかっているというのに、あの子を見ていた⋯?


「あの子のために私が勝手にやっているに過ぎません。ならあなたはそれを享受すればいい。もし、あなたがそれに納得がいかないのであれば、頼めばいい(・・・・・)。頼むのもまた、強さでありあなた自身の意思による行動と言えるでしょうから」


いつの間にか、彼女がまとっていた雰囲気は以前からのものと変わらなくなっていた。


「⋯⋯お願いがあります」

「はい、なんでしょうか」

「私と⋯シグマを会わせてくださらないでしょうか」

「言われなくても。ですが、頼まれたということにしておきましょう」


私は引き出しから紙を取り出し、彼女に渡す。


「これは?」

「シグマなら⋯⋯分かります。それが、私が会える日と場所になります」

「なるほど。帝国でどう会っていたのか気になっていましたがこういうことですか。分かりました。シグマに渡しておきましょう」

「お願いします」


彼女は窓から出ていこうとしたが、ふと振り返った。


「そういえば⋯⋯帝国は懲りていないようです。どうするか考えておいてください」

「⋯⋯え?」


それだけ言い残して彼女は去ってしまった。帝国はまだあの実験をやっている⋯?


シグマの失敗がありながら?王国との仲も最悪と言える状況だと言うのに⋯⋯まさか戦争をする気なのだろうか⋯


また⋯彼女に詳細を聞こう。

遅くなりました

ちまちまと書き進めています

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