お姫様救出大作戦
さて、攫われてしまったお姫様ですが、どうなってしまうのでしょうか?
「……最悪だ」
心配になって後ろを振り返った俺、佐倉隆二は呟いた。ちょうど先程俺たちに(というかお姫様に)ちょっかいをかけてきた兵士のうちの1人が、お姫様を抱えあげて拉致する所だったのだ。
クソっ!ちょっと目を離した隙に……あのお姫様はお姫様なだけあってやたらと人に絡まれる体質でも持ってるんじゃないか!?
って、そんなことを考えている場合ではない。すぐに引き返してあの兵士に喧嘩を売るか、交番に駆け込んで助けを求めるかだ。しかし俺1人では武装した兵士に敵うわけもないし、ここは大人しく……とか考えているうちに、兵士はお姫様を連れ去ってどこかへ行ってしまったようだ。なんてこった…
しかもさらに良くないことに、そんな俺の背後から話しかけてくるやつがいた。
「これはこれは、昨日の少年じゃないか。一緒にいた金髪の彼女はどうしたんだ?」
〝死神〟だ。しかも面倒くさそうな金髪ツンツン頭のサングラスアロハ野郎。背後には先日も見かけた長身のスーツ男と、先日はいなかったキャスケットを被った金髪の女の子がいて(こいつも〝死神〟の仲間だろうか)、こちらを伺っている。どちらにせよ逃げるという選択肢はなさそうだ。
「彼女じゃねぇけど、さっき物騒な兵士に連れ去られていったぞ……」
「「「なんだって〜!?」」」
死神トリオはそれぞれ間抜けな叫び声を上げた。
「なんだよ、てっきりお前らの差し金かと思ったけど違うのかよ…」
俺の言葉に3人は同時にブンブンと首を横に振る。
「なんで俺らがそんな回りくどいことをするんだ…」
「お前らの仕業じゃないならなんとかしてくれよ。お前らもお姫様を追いかけてるんだろ?」
俺は一番話のわかりそうなスーツ男に詰め寄って言った。なんとしてもお姫様を助けないといけないが、俺1人で無理ならこいつらを利用してやるのも悪くないだろう。結果お姫様を奪い合うようなことがあっても、兵士20人よりこいつら3人を相手にする方が逃げられる可能性は高くなる。
「私たちは別に追っているわけでは……いや、今更隠しても仕方ないか。ここで立ち話もなんだし、場所を移そうか。できれば静かな場所がいい」
「……それならいい場所を知ってるぜ」
スーツ男の提案に対して、俺は言った。まあこいつらも今すぐ俺やお姫様に危害を加えてくる気は無いようだし、情報の共有をしたいだけみたいだ。
それにこいつらと直接対決しなければいけなくなった場合を考えると、仲間は多い方がいい……ということで俺が指定した場所は……
「ここだよ」
しばらく3人を案内して歩いた俺は、例の林を指さした。古びた神社のある林だ。
「静かな場所とは言ったが……」
苦言を呈するスーツ男。わかる。その気持ちは凄くわかるけど、今は少し我慢してもらいたい。
「大丈夫、ただの林じゃないから」
俺はとりあえず林の中に踏み入ってみる。3人も後に続いて入ろうとしたが……
ゴッ!!!という、人が車に跳ねられたかのような音がして、3人は文字通り〝吹っ飛んだ〟
「いってぇぇぇっ!おいてめぇ!ハメやがったな!」
と、金髪男が頭を押えながら喚く。ていうかなんでまだ生きてるんですかねぇ……しぶといやつだな。
「ハメてねぇよ。俺がやったわけじゃないし」
「はぁ!?」
他の2人もめいめいにぶつけた箇所を押さえながら立ち上がる。……なんでまだ生きてるんですかねぇ……
まあ、結界があったのは予想外だったが、あの3人が弾かれたということは、俺はここにいれば安心ということだろう。そんな俺に背後から話しかけてくるものがいた。
「ちょっとさぁ……ウチ面倒事は嫌だって言わなかったっけ?」
振り向くと、例のケモ耳の女の子だ。わざわざ林の入り口の近くまで迎えに来てくれたのだろうか。
「悪いな。ちょっと非常事態なもので……」
「はぁ……だいたい察しはつくよ?しかもあのめんどくさい女を連れてこなかったことは嬉しいんだけど、〝死神〟とかマジ勘弁だっての」
「あいつ、何故俺らの正体に気づいていやがる!?」
驚いたのは、金髪の男だ。男はすぐさま謎の構えをとると、叫んだ。
「シャドウランス!」
すると、無数の黒い槍が女の子をめがけて飛んでくる。
マジか魔法か!?でもなぜこいつが魔法を使えるんだ!?
俺も驚いたが、さらに驚くことが起きた。
女の子が面倒くさそうな表情で右手を前に出して何やら小声で呟くと、黒い無数の槍は女の子の手のひらに吸収されて跡形もなく消えてしまった。
「「「……!?」」」
呆気に取られている死神トリオ。ざまあみやがれだ。
「ほらめんどくさい!どーしてくれんのよぉ!」
「困ったらいつでもおいでって言ってくれただろこの前」
「確かに言ったけどさぁ……」
俺と女の子は顔を見合わせながら言い争った。今困ったことになっているのは事実だ。しかもとんでもなく困ったことになっている。
「お前に小遣いをくれたお姫様が攫われたんだぞ!?もう少し真剣にやれよもうお小遣い貰えなくなるかもしれないんだぞ!?」
あのお小遣いは俺のものだが、まあ仕方ない。金をエサに釣ってみる。
「むっ……それはだいぶ困るかも」
「だろ?じゃあ力を貸せよ。死神どもも協力してくれるみたいだし」
女の子は死神トリオの方へ視線を向けると、「それが嫌なんだよなぁ」とか呟きながらも、渋々と頷いた。
「いーよ、手伝ってあげる。おめぇらも入っていいよ。ただし、荒らしたりしたらえげつない目に遭うから覚悟しとけよー?」
そう言うと、女の子は林の奥の方へ歩き出した。ので、俺もあとに続く。死神トリオは何か言いたそうな顔をしていたが、黙ってついてきた。今度は女の子のお許しが出たのか、結界に弾かれることは無かった。
女の子は林の奥の小さな祠の前で足を止めるとこちらを振り返って言った。
「で、話を聞かせてよっ。一体何があったの?」
「端的に言うと、お姫様が物騒な兵士20人くらいに攫われた」
「ふむふむ、でウチはなにをすればよいのさ?」
「力を貸して欲しい」
「具体的には?」
「いや分からんわ、そもそも何が出来るのかすらわからないし、どこへ連れ去られたのかもわからないし!相手が誰なのかも…」
機嫌が悪いのか、淡々とした受け答えをする女の子に対して俺はしびれを切らしてしまった。
「居場所なら分かるよ?」
「……まじかよ」
「マナを追うにしても、なにかで隠されているから追えないわよ?」
と、今まで黙っていたキャスケットの女の子が口を挟んできた。
「隠しているのはウチの作った結界を身につけているからで、その結界はウチの魔力で作られているからウチにはわかるのー!」
「はー、あのめんどくさいの作ったのお前だったのか…」
金髪の男が腕を組みながら言う。
「うるさい!追い出すぞ!?」
ケモ耳女の子が凄むと、金髪男は黙るしかなかった。
「つまり、場所は分かるけど、助ける方法は分からないよー?ってことなんだけど」
「それなら私にアイデアがあるわよ。その兵士が私たちの世界から来たやつらならものすごく効くと思うわ」
キャスケットの女の子が右手を上げながら言った。なんだ、この子も異世界出身なのかよ。ってことは死神の一員ではない……?
「kwsk」
とケモ耳少女。
「今の話とさっきのマナの反応からから推測して、その兵士たちはシャインゲートを使って転移してきたんだと思うわ。それなら私たちの世界からやってきた可能性が高い。しかも……まだ確定じゃないけど、お姉ちゃんを攫うなら、マイズナー帝国のやつらの可能性が高いわ。ってことはこの世界の〝科学技術〟には慣れていないはずよ」
「なーる(なるほどね)。つまり異世界から来た人間はこの世界の方法で上手く撃退してやりましょーってことかぁ」
「そんなに上手くいくかねぇ……」
……みんなスルーしてるけど、いま「お姉ちゃん」って言いませんでしたこの子!?ってことはお姫様の妹なのかこのキャスケット!死神と一緒にいたから、仲間だと勘違いしてさっきは酷い目にあわせてしまったな……まあやったのは俺ではないけど。
「言っとくけど、ウチはこの林からは出られないから手伝えることは限られてるよ?」
「大丈夫。とても簡単な作戦だから!さあ、とりかかりましょうか」
はい、奇妙な5人組の誕生です。
こいつらもなんだかんだで好相性だと思ってます。
さて、レーネの考えた作戦とは…?
乞うご期待!




