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お姫様は異世界人  作者: 早見 羽流
動乱編
25/36

お姫様、ゲームをする

お姫様だってゲームくらいしたいんですよっ!

って回です。

「えっ、なに今のうるさっ……せっかくゲームをしようと思ってたのに……」


アキが迷惑そうな表情でいいます。

今日はアキとリュウジが待ちに待ったゲーム?というものが発売される日らしく、学校が終わるや否や、マナ探索はせずに(私はやりたいと言ったのですが、2人は断固として拒否してきました)店でゲームを買い、アパートに戻ってきていざみんなで遊ぼうという段階になって、上の階から「やったぁぁぁぁぁっ!」「うわぁぁぁぁぁっ!!」などという凄まじい絶叫と、バタバタと暴れる音がし始めたのでした。


「パーティーでもしているのでしょうか…」


「ちょっと文句行ってくるー」


いつになくイライラしている様子のアキが、玄関の扉を開けて外に出ていきました。

しばらくして戻ってきたアキは、肩を竦めながら言います。


「まったく……人の部屋の真上でイチャつくなっての……」


「マジか、こんな時間から……最悪だな…」


リュウジも同意します。


「まあいいや、静かになったことだし、早速やろうか!異世界バケーション!」


アキは買ってきたゲーム(小さな板のような形をしています)を見たことがない黒い箱の中に押し込みます(するとゲームは自動的に箱の中に吸い込まれていったようでした)。


「セッティングが終わるまで、異世界バケーションはどういうゲームか姉貴とお姫様に説明するな。まずは世界観だけど…」


リュウジの説明によると、そのゲームは、ニホンに暮らす主人公が自宅の蔵に異世界へのゲートを発見し、夏休み(学校が休みになる期間らしいです)の間だけ異世界で過ごすというストーリーに基づいているようです。

ディスプレイ (スマホやテレビなど、映像が映るものをそう呼ぶらしいです)に映ったキャラクターを操作して進めていくタイプのもののようでした。


「操作はこのコントローラーでやるんだけど、主に普通のRPGと変わらないかな」


「……はぁ」


コントローラーもRPGもよく分からなかったので、私は生返事をしましたが、どうやらコントローラーとはリュウジが手に持っている黒い謎の物体であると推測できました。


「説明しよう!RPGとはロールプレイングゲームの略で、主にファミコンの時代のドラゴンク」


「はいはい、説明長くなりそうだからそこまで!」


語り始めたアキを、リュウジが無理やり遮ります。

そうこうしているうちに準備が整ったようで、ディスプレイに『異世界バケーション』という文字が壮大な音楽や背景と共に浮かび上がりました。


「イセバケのゲームのシステムとしては、最初に何人かのキャラクターの中からパートナーとなるキャラクターを決めて、その子と一緒に異世界を支配する魔王の討伐を目指すんだけど、キャラクターによって難易度やシナリオが変わるし、夏休み中に終わらせなきゃいけないから時間制限があったりして奥が深いんだ」


「……魔王?シナリオ?」


「シナリオは物語のことだよ。魔王は……アイリちゃんの世界にはいないかもしれないけど、強くて悪いやつのこと」


「ふむふむ…」


リュウジとアキの解説で、私もなんとなくこのゲームというものがわかってきたような気がします。要するに仲間と協力しながら制限時間内に悪を倒せばいいんですね?単純明快です!


「じゃあ早速やってみるか。最初だし、パートナーはヒカリちゃんで…」


「だめっ!フブキちゃん!」


と、アキが口を挟みました。


「いや、お姫様もいるんだし、スタンダードなヒカリちゃんでしょ」


「だめ!私が買ったんだよこのゲーム!」


「俺が解説してるんだぞ!?わざわざフラゲの攻略情報調べあげて!」


リュウジとアキはしばらく睨み合いながらコントローラーを奪い合っていました。


「あ、あの……っ」


「そうだ、お姫様に選んでもらおう!」


と、リュウジが言うと、それならまあ…とアキも引き下がりました。


「ええっ、私ですか!?」


「そうそう、お姫様は誰をパートナーにしたい?」


「そ、そう言われても……何がなんだか…」


「じゃあ俺が軽くキャラ紹介を……」


と、困り果てた私に、丁寧にパートナーキャラクターを1人ずつ紹介してくれるリュウジ。

リュウジによると、パートナーキャラクターは10人ほどいるようですが、最初から選択できるのは5人で、残りはシナリオ?を進めると開放されるらしいです。

それで、最初から選べる5人は、魔法使いのヒカリ、剣士のフブキ、錬金術師のホムラ、シノビのフウ、僧侶のアカリで、後に開放されるキャラクターの中には、弓使いのミドリ、槍使いのミズキ、ネクロマンサーのヤミなどがいるそうです。


「……なるほど、私のいた世界にも同じような職業がありました。主に冒険家の方に多いですが…」


「……シノビとかニホンにしかいないのかと思ってた…」


とアキ。ニホンにもシノビはいるようです。これは驚きました。


「お姫様の世界とこの世界、似てないようで似てるのかもってずっと思ってたけど、ちょいちょい共通点があるよな…」


と、リュウジ


「そうですね。お陰でだいぶニホンでも暮らしやすいですけど……部屋が狭いことを除けば」


「はいはい、居候してるんだから文句言わないの!さあ、早くパートナー選んでよ!」


とアキが私の背中を叩きながら言います。痛いです。


「パートナーですか…」


仲間……私のいた世界には、私の仲間がたくさんいました。妹のレーネはもちろん。親衛隊のクリスや、シノビのカスミ……彼女は無事でしょうか?…メイドの皆さんや貴族の皆さん。兵士の皆さん、そして庶民の方々……


皆さんお元気でしょうか……私がいなくてもしっかりと逃げのびているでしょうか……


今はその仲間はいませんが、この世界にはリュウジとアキという心強い仲間がいます!彼らと一緒にいればきっと元いた世界帰ることが出来るでしょう。


「……リュウジさん、アキさん、ありがとうございます…ほんとに…」


「えっ、なんか言った?」


「い、いえなにも!…せっかくですから私に似ているというこのヒカリさんにしようと思います!」


アキが、小声の呟きに反応してきたことに驚いた私は慌てて答えました。すると、リュウジがよしっ!という声を上げます。アキは納得いかないという表情をしていましたが、今回は口を挟んでくることはありませんでした。


「よしっ決定!」


リュウジが選択すると、ディスプレイに映った大きな杖のようなものを抱えた金髪の少女がペコりとお辞儀をして「よろしくお願いしますっ」と挨拶してきました。あれがヒカリちゃんでしょうか?この子が私に似ている…?


「こ、こちらこそよろしくお願いします!」


「アイリちゃん、わざわざ挨拶しなくてもいいんだよ?」


「いいじゃん、その気持ちは大切だと思う」


と、アキとリュウジが口々に言います。

リュウジは時々解説を入れながらどんどんゲームを進めていきました。ゲームは物語がメインのようで、最初の主人公とヒカリの会話から始まり、魔王を倒してくださいとお願いされるくだりから、モンスターを倒しながら強くなり、魔王へ挑むといった流れのようでした。


ヒカリの性格は、明るく丁寧ですが、ちょっと抜けてる部分もあるようです。……どこが私に似てるんですか!私は抜けてなんかいませんけど!


「私はヒカリさんみたいにおっちょこちょいではありません!」


「えー、似てると思うけどなー性格も」


「うんうん」


私の抗議は満場一致で否定されました。……どうしてでしょう?


「……あ、ほら、パイタッチできるって!やってみてよ!」


つまらなそうにゲームに付属していた紙切れ (説明書というらしいです)を読んでいたアキがリュウジに言います。


「はぁ?やんねーよ。出会ったばっかでヒカリちゃんにそんなことしたら」


「うるさい!……えいえい!」


「あっ…」


リュウジが止める間もなく、アキはコントローラーを奪い取って勝手に操作し始めました。

するとディスプレイ上に手のようなマークが出現して、ヒカリの胸のあたりをつつき始めました!


「おらおら!ヒカリちゃん!参ったか!」


「なにやってんだよ返せよ!」


コントローラーを取り返そうとするリュウジ。するとディスプレイ上のヒカリは、顔を赤らめながら「……だめっ」と呟きました。


「……ぶはっ!」


そんなヒカリの様子がクリーンヒットしたのか、リュウジはその場に突っ伏して動かなくなってしまいました。このままではリュウジが死んでしまいます!……正気に戻すにはやはり同等のショックが必要でしょう?


「……だめっ」


「お姫様は真似しなくていい!」


「……だめぇぇっ!」


「うるせえ姉貴!」


アキを追いかけるリュウジと、笑いながら逃げ回るアキ。よかった……リュウジのショックはもうすっかり治ったようです。


狭い部屋で暴れる2人を尻目に、私は放置されていたコントローラーを拾い上げると、説明書を見ながらやっとの思いでディスプレイ上のヒカリに謝罪する方法を探し出したのでした。




ここまで読んでいただいた方、本当にありがとうございます。

もう完結までのビジョンは出来上がっていますのであとは書くだけ!みたいな状態です。

それまでは可能な限り毎日更新でいきますのでよろしくお願いします。

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