お姫様、絡まれる②
日本の夏はとにかく暑い。それは夏休みが終わり新学期が始まっても同じことだった。
以前路地裏で謎の魔法反応を探っていた長身のスーツ男は、現場にほど近いアパートに引っ越してきて周囲を探っていたのだが、とあることが気になったのか、仲間の金髪ツンツン頭のアロハシャツ男を近くのファミレスに呼び出した。さすがにこの気温では屋外で立ち話することははばかられる。
スーツ男が店員に案内されて店の奥の方の席に案内されると、早速アイスコーヒーを注文し、懐から取り出した白いハンカチで額を拭った。この席ならば、これから行われるであろう密談にはもってこいのようだ。
しばらくしてアイスコーヒーが運ばれてきて、さらにしばらくすると、アロハシャツ男が現れた。
「お前のその時間を守らないくせはどうにかならないのか?」
スーツ男が苦言を呈すると、アロハシャツ男はあははっと軽い調子で笑いながら
「わりぃわりぃ!まぁ今日は10分くらいしか遅れてないし、誤差の範囲だろ」
悪びれた様子のないアロハシャツ男にスーツ男は呆れた様子でそれ以上追及はしなかった。
アロハシャツ男は店員にドリンクバーを注文し、ドリンクを取りに行くと、怪しい液体をグラスに入れて戻ってきた。
メロンソーダとオレンジジュースを混ぜたもので、アロハシャツ男が愛飲している。その怪しげな色合いに眉をひそめつつ、スーツ男が少し身を乗り出し、小声で切り出した。
「少し調べてもらいたい人物がいる」
「ほう、早速手がかりを掴んだかぁ。早いねぇ」
アロハシャツ男は大袈裟なジェスチャーで応じると、続きを促した。
「俺と同じアパートに住んでいる金髪の少女だ」
「女の子かぁ…」
少し意外な様子のアロハシャツ男。
「この近くの高校の制服を着ていた。15〜16歳くらいだな」
「仲間は?この世界で暮らすなら誰かの助けが必要なはずだが」
「少年が1人、少女が1人」
スーツ男が間髪入れずに答える。
「なるほど、その子が怪しいって感じたんだな?金髪っていうんなら可能性は高いだろうなぁ」
アロハシャツ男はうんうんと頷く。スーツ男の直感は大抵当たっている。あとは裏付けが必要ってことだろう。
「周辺を洗ったりしなくても、オレが会えば一発で魔法使いかどうか分かるぜ」
「そうか、では頼む。私が案内しよう。もし魔法使いだった場合はその場で始末してもらっても構わない」
「まあ任せておけよ。腕が鳴るぜ」
アロハシャツ男はニヤニヤ笑いながらそう言い、謎のドリンクを飲み干すと、タバコを吸いたいというジェスチャーをして席を立った。スーツ男は目の前でタバコを吸われることを極度に嫌っていた。スーツに臭いが移るからだ。
「さて……そう簡単に事が運ぶかどうか…」
スーツ男は1人そう呟いてアイスコーヒーを一口口に含んだ。
「……すっかり遅くなっちゃったね…」
アキが呟きます。
「まあでも手がかりが掴めそうな気がしてきたし、よかったんじゃないのか?俺の金はなくなったけど!」
「リュウちゃんいつまでそれ気にしてんの…」
「いやほらだって明日!」
「明日?」
「明日は念願の『異世界バケーション』のゲームが発売されるんだぞ!?初日に確保したいだろ!?」
「あー……」
アキはあまりそのことには興味が無い様子です。
「今回からは姉貴の大好きなフブキも参戦するぞ?」
「フブキちゃん!?!?」
アキの声色がガラッと変わりました。
「やるやるー!後で貸して!」
「でも金ないし、買うのは諦めるしかないかなぁ…」
「あーもう、いいわよそういうことなら私が出すから買おうよ!」
アキのその言葉を聞いて、リュウジは小さくガッツポーズをしていました。
上手くアキを誘導することができたようです。
「あ、あの……私もやってみたいです」
「お姫様が!?」「ゲームを!?」
驚く2人。
「はい、リュウジさんやアキさんがそこまで必死になるゲームとやらをやってみたいです!」
私の言葉に2人は「また始まった」というような表情をしました。そんなに迷惑なことなのでしょうか……私にはよく分かりません。
そうこうしながら私たちがアパートの近くまでたどり着くと、背後から声をかけられました。
「そこのあなたたち、少しよろしいですか?」
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