お姫様はヘアゴムをてにいれた!
内視鏡検査で死んでいたので更新遅れました。
今回から物語が大きく動き出すはずです。
「ちょっと、うちのリュウちゃんになにすんの!クソビッチ!」
アキが叫ぶと、少女をリュウジから引き離しにかかります。
「初対面でそれは酷くない!?激おこなんですけど!」
少女も抵抗し、アキを振り払うとそのまま睨み合いました。
するとアキはやっと目の前の少女がただの人間ではないと気づいたらしく
「あ〜!!」
と少女の獣の耳を指さして叫び、さらにしっぽを指さして再度叫び……
「あー?」
「……気をつけろ、こいつは…」
首を傾げる少女。そして誰にでもなく警告するリュウジ
「ケモっ娘キタ━(゜∀゜)━!」
「うわぁっ!?」
突然抱きついてきたアキに少女は面食らった様子で、耳を触りまくるアキにただなされるがままといった状態でした。少女はじゃれつくアキに「しっぽは絶対やめてマジで」と釘をさした上で、リュウジのほうを伺いながら
「な、なにこれ?どーゆー状況?」
「それはこっちが聞きたいわ!ケモ耳の女の子なんて現実にいるの初めて見たぞ!」
こちらも少しテンションが上がっている様子のリュウジに、少女は呆れ顔をしながら
「あー、やっぱ入れるんじゃなかった…」
と小声で呟きました。
「さっさとつまみ出そっと……」
「ちょっと待ってください!」
結界とかを使って私たちを追い出しかねない少女に、慌てて私は声をかけます。
「約束したじゃないですか!タピオカとお小遣いあげたらマナを分けてくれるって!」
「へぇ……マナっていうんだこれ…ずっとあれだと思ってた。えっと、ほらあれ!」
「…魔力?」
「そうそれ!」
「同じじゃないですか!まあいいです。約束したんですからを分けてください!」
「恩人だとはおもってるけど、分けてあげるなんて一言も言ってないし……」
少女は、しっぽに触ろうとするアキを振り払いながら、にこっといたずらっぽく笑います。
「嘘はよくないです!」
「ほんとだし、欲しいならタピオカとお小遣いくれたらワンチャン考えてあげるかもよーみたいなニュアンスだったんだけど」
たしかに、たしかにマナをくれると言われた覚えはありませんが……!……が!
「私はマナがないと、元の世界に帰れないんですよ!」
私の言葉に、リュウジがなんてことを言い出すんだみたいな顔をしましたが、知ったことではありません。せっかく掴みかけたチャンスなのですから…
「そっかぁ、まあウチもここ最近の魔法反応からして、異世界の人が来てるかもってことは察してたけど、やっぱキミのことだったかぁ…すごい魔力感じたからね、もしかしたらと思ったんだけど」
少女は、自分は昔からこの土地を守っている地縛霊とか守護神っぽいなにか(自分でもよく分かっていなさそうでした)で、名前は特になくて、少し前まではここに大切に祀られていたのでそれなりに満足していたものの、管理を任されている一家の血筋が途絶えてしまい、以降放置されていて寂しかったこと、気を紛らわすために時々迷い込んでくる人にいたずらしたりして遊んでいたこと、とりあえず今はお金が欲しいことなどを説明してくれました。
「お金が欲しいって……どストレートにきたな……」
とリュウジ
「まあ生きていく上で色んなものがなにかと欲しくなるじゃん?でもウチここから出られないし、バイトとかできないから、ちょっとその子を唆してお小遣いもらおうかなーって。結果大成功なわけだけど」
と、私を指さしながら言います。
私は体のいいカモだったということですか!
「魔法使えるコなんて普通は自分のテリトリーに入れたりはしないんだけどねー」
「あのぅ、もしかして周りの教会とか神社に結界があったのって……」
「うん、正直めんどいんだわ。魔法使えるコとかさ…」
言いにくそうに少女は言いました。
「そういうコたちを狙って、いろいろな組織が動いてるし、みんな面倒事には首を突っ込みたくないのかも。ウチはまあ、貢ぎ物をくれるコなら誰でも助けちゃうけど。あっ、ただし美少女に限るよ?その他の人はただいたずらしてバイバイだね」
あー、なるほどやはり『そういう事』でしたか……
私の世界でも、僧侶が修行をする修道院や寺院は基本的に魔法使いに対して好意的ではありません。それは、魔法使いの使う魔法が僧侶の使うものに比べて『穢れている』と思われているからで『災いを運ぶ』とも言われています。
この世界でもやはり教会や寺院にとって魔法使いは災いを運ぶ存在であると認識されているようでした。
「でもまあそうだなー、キミはなかなか可愛いし、お小遣いくれた分助けてあげなくはないんだけど、転移の魔法をここの魔力を使って唱えようって思ってるならそれは無理」
「どうしてですか…?」
「転移の魔法ってすごく魔力を使うでしょ?ここの魔力はウチがこの土地を守るためのものだから、ある程度残しておいて貰わないと困るんだよー。ただでさえ誰も管理しなくなった神社だから魔力の湧き出しも魔力量も減ってるんだし…」
少女はなおも抱きついて来ようとするアキを軽い身のこなしでひょいひょいかわしながらいいます。私よりもだいぶ短いスカートで跳んだりステップを踏んだりするので、下着が見えてしまわないか心配です。
私の視線に気づいたのか、少女はにゃははっと笑って
「魔力を使って絶妙に見えないようにしてるから大丈夫だよん!」
「もっと別のことに魔力を使ってください!?」
「いーじゃん、私のものなんだからどう使っても」
「そうですけど……」
そのマナを私に分けてほしい……とは言えませんよね。
「まあ魔力をある程度貸すのは大丈夫だし、他に方法がないか探すの手伝ってあげるのもいいよ。ただ転移魔法使えるほどは貸せないからそこはごめんねっ」
「……仕方ないですね」
「キツネの化け物の協力を取り付けられたってことは、俺の金は無駄ではなかったんだな…?」
リュウジはなんとも言えない表情です。
「化け物じゃないよ!……って、そうそう!協力ついでにアドバイスしとくね!……私もそうだけど、キミの魔力はわかる人にはすぐに分かるくらい大きいものだから、隠しておかなきゃ狙われちゃうよ?最近〝死神〟も動いてるみたいだし」
「グリムリーパー?」
新しい単語にアキが反応し、尋ねました。
「うん、ウチら怪異とか、魔法を使える相手に特化して狩るヤツら。隣町では数人やられてるみたいだよ?」
「ひぇっ……」
なんということでしょう。この世界では魔法使いは教会や寺院だけでなく、その他の組織にも狩られる存在のようです。その中でこの少女は神社という不可侵領域を持つことで上手く生き残れているということでしょうか。
「隠すってどうすれば…」
私の問いに少女はちょっと待ってと言いながら右手を掌を上にして前に出しながら目を閉じます。私が魔法を使う姿勢と少し似ていました。
すると、少女の差し出した掌の上にポッと光る輪のようなものが発生しました。
少女はゆっくり目を開けると私を手招きします。
私が少女に近づくと、彼女は私の手にその輪を握らせました。
少女の手を離れた瞬間、その輝きはおさまり、青い小さな輪になりました。
「へぇ、これヘアゴム?」
アキが私の手を覗き込みながら言います。
「そ、ウチの魔力を込めた特性の小型結界!普段はそれを付けておくこと!」
「は、はいっ!」
「んじゃウチはこの辺でー!こっちでも色々探してみるから頑張って!困ったらまたおいで!」
そう言うと、少女はすっと消えるように立ち去りました。
「……よく分からないやつだったな……ほんとに信用していいのかあいつ」
とリュウジ
「とりあえず信じるしかないでしょう。他に頼るあてもないですから…」
「それもそうだけど……俺の金が……」
「それは……ごめんなさい…」
「ううん!貴重な体験ができたしナイスだよアイリちゃん!」
と、アキは興奮冷めならぬ様子でした。
「あとアイリちゃん、髪になにかついてる…」
アキが私の頭の上に乗っていたなにかを取りました。
それはなにか広葉樹の葉のようなもので、よく見るとなにか文字が黒いインクで書いてあるようでした。
『タピオカありがと〜!!』
読んでいただきありがとうございます。
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