お姫様、お小遣いをあげる
飲み会があったので更新時間遅くなってごめんなさい。
最後の方はアルコールを入れた状態で書きました。
多分次回更新で微修正かけます。ご了承ください。
目的のジンジャは住宅地の一角にあり、そこだけが木が鬱蒼と生い茂っていて森のようになっていました。
「本当にここなのですか?」
心配になった私が尋ねると、リュウジは黙って頷きます。…なるほど
「とりあえず入ってみるか」
「はいっ」
「……あっ、ほらこれ見てみろよ」
リュウジが生い茂った草をかき分けて指し示したのは、石でできた柱のようなもので、何やら文字が掘られているようでしたが、経年劣化とびっしり生えた苔によってよく読み取れません。「〜神社」とジンジャの名前が記されているようでしたが…
「これは……だいぶ古い遺跡ですね…」
「あぁ……ずっと放置されてたんだろうな。神様怒ってるぞ多分…」
私たちは草をかき分けながら森の奥に進みました。森には一応奥へと続く道のようなものがあり、草はたくさん生えていましたが、地面には石が敷かれていて、その上を踏んでいけばぬかるみや木の根に足を取られることはなさそうでした。
そして、ところどころ石造りの像や柱のようなものがびっしりと苔が生えた状態で放置されており、私たちを迎え入れるかのようでした。
「リュウジさん、ジンジャの入り口ってどこからなのでしょうか?」
「うーん、普通ならトリイっていうものがあってそこが入り口みたいなもんだから、そこで挨拶して入ったりするんだけど、ここのはもう崩れちゃったりしたのかな……」
「なにか門のようなものでしょうか。たしかに見当たりませんね…」
私たちはしばし顔を見合わせると、やっぱり挨拶して入らないとマズいんじゃないかと口々に言い合ってその「トリイ」なるものを探して草をかき分けたり草むらに踏み込んだりしていましたが、私が道から外れる度に木の根やぬかるみに足を取られて転び、服が泥だらけになってしまったので、諦めることになりました。
というかなんで私だけなのでしょうか!
「お姫様は運動神経が悪いからなぁ…」
と笑いながら言うリュウジ
「悪くないです!普通……のはずですけど…」
「あぁ、じゃあ俺が良すぎるだけかー」
「……むっ」
釈然としないものがあります。転移魔法を失敗したことといい、よく迷子になるここといい、乱暴な人に捕まるここといい、この世界の勉強や運動についていけないことといい、私はただ、運が悪いだけです。そうです、そのはずです!
「まあじゃあしょうがないし、この辺で挨拶しておこう。こう、簡単にお辞儀をするだけでいいからさ」
私はリュウジのやって見せたとおりに軽く会釈をして先に進むことにしました。
「あっ、そういえば……」
あることに気づきます。
「結界に邪魔されてないね今のところ……」
リュウジも気づいたようです。
「結界がないってことは、ここにはもう何もいないのかもなぁ……」
「なんで私が入れない前提なのですか!」
そんなことを言い合いながらさらに森の奥の方に入っていくと、少し開けた場所に出ました。森独特の土の匂いが一層強くなっています。
そしてその場所の真ん中にあったのが……
「これは……」
私は思わず声を上げました。そこには小さな石造りの祠のようなものがあり、その前に小さな賽銭箱が置かれていたのです。しかもここまでの道中の荒れ具合に比べてそれらはしっかりと手入れされ、苔などは一切生えていませんでした。
「……なんか不気味だな」
リュウジが言います。
するとその時、後方の草むらがガサガサと揺れたかと思うと、すごい勢いで人影が飛び出してきました!
「妖怪タピオカだぞ〜っ!」
「ひいっ!?」
妖怪タピオカは一直線に私に襲いかかると、両手に持ったもので私の顔を挟みました。水の感触とヒヤッとした感覚が…
「冷たい!?」
「いぇい!アイリちゃんを仕留めたぞー!」
「……なにやってるんだ姉貴……てか早かったな」
「走ってきたからねー」
妖怪タピオカ改め、アキは額に汗を光らせながら笑いました。
両手には透明な容器に入った飲み物が……
「よくもまあ飲み物を持って走る気になるわ…」
と呆れ顔のリュウジ
私はアキの持っていた飲み物をお礼を言いながら受け取ると、蓋を開けて一口口に含みました。…うーん、なんとも言えない味です。
「ちゃんとストローあるんだからストローで飲めよ…」
「ストロー?」
「ほら、この蓋についてる筒みたいなのあるじゃない?それをくわえて吸ってみて?」
と、解説されるがままに吸ってみると…
「!?」
たしかに口の中に先程の飲み物の味が!
「俺の分はないのな」
「私の飲みかけならあるけど」
「誰が好き好んで姉貴と間接キスするんだ、アホなのか?」
「あっ、リュウくん酷いよそういうこと言うの!」
と、ほのぼのと話していた2人ですが
「ていうかタピオカもいいけど早いとこマナ探して帰ろう…」
リュウジは早くここから立ち去りたくて仕方ないようでした。
「わかりました…」
私は片手にタピオカを持ったまま両手を前に突き出すと、目を閉じて意識を集中させてマナを探します。
するとどうでしょうか、今までの教会や寺院ほどではないにしろ、祠を中心に、周囲には空間マナが溢れていました。しかも私と相性の良い光属性のマナが……!
しかし、私がそのマナを体内に取り込もうとすると、マナはしっかりと祠に吸い寄せられているかのように固まり、ビクともしません。おかしなことです。
『ふぅーん?これが欲しい感じなの?』
突然聞こえた女性の声に私はびっくりして周囲を見渡しましたが、リュウジとアキが全く反応していないことを見ると、どうやら私にしか聞こえていない声のようです。
『欲しいならその手に持ってるものをウチにちょーだい?あと、お小遣いも欲しいな!』
私は急いで手に持っていたタピオカを祠の前に置くと
「お小遣い!」
「お小遣い!?」
突然叫んだ私にアキが驚いた様子で復唱します。
「お小遣いが欲しいそうです!」
「え、いくら?」
リュウジは祟られたら困ると思ったらしく、大人しく財布を取り出します。
「後でエルブラン公国の国庫からお支払いしますので!」
私は言うと、リュウジの財布を取り上げ、中身を全て小さな賽銭箱に突っ込みました。硬貨と紙幣がいくつかありましたが、エルブラン公国の国庫で問題なくお支払いできるでしょう。
「あっ、こら!なにすんだよ!!」
びっくりしたのはリュウジで、かつてないほどの勢いで私に詰め寄ります。
「お小遣いくれたらマナをあげると…」
「いや知らんし!てかどうすんだよ。お金がないとこの世界じゃ生活できないぞ!」
「国庫から…」
「……それいつ払ってくれるの?」
「……うっ」
私が言葉に詰まっていると
「ちょっと、ウチの恩人になにしてくれてんの?」
とリュウジの背後から聞いたことのある声が聞こえて、その人物は私からリュウジを無理やり引き離しました。
「……誰?」
「ここの主だってば!失礼っしょそれは…」
そこに立っていたのは、私たちと同じ制服を着て、茶色い髪を後ろで束ね、何故か頭部から獣の耳を生やし、しっぽも生やした同い年くらいの少女でした。
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