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お姫様は異世界人  作者: 早見 羽流
探索編
13/36

お姫様、パントマイムをする

さて、お待ちかねの現代パートです。

過去編ではキリッとしていたお姫様ですが、勝手の知らない現代日本では相変わらずの天然です。久しぶりなので散々弄りました笑

懐かしのおっぱい弄りもあります。

放課後(講義が全て終わった後のことをそう呼ぶらしいです)、私とリュウジは学年の違うアキと合流して、早速パワースポット?の探索に行くことにしました。

リュウジがいうにはここの周辺にはパワースポットはいくつもあり、中には怪物や怨霊の類が出没するという噂のところもあるようです。

怪物や怨霊と鉢合わせするのは避けたいですが、私の世界でもだいたいそのような怪異が出現する場所というのは、マナのたくさんある場所でしたので、期待していました。


しかし……


「うーん……」


私は案内された場所で目を閉じ、手を前に突き出した姿勢でマナを探りながら唸りました。


「……どう?」


と心配そうに尋ねるアキ


「……ありませんね」


「これで5回目だぞ……オカルト研究会もアテにならないな…」


げんなりして言うリュウジ。

そう、地図にあった場所を片っ端から回っていた私たちですが、今まで空間マナの多い場所には巡り会えていませんでした。


「こんな時にレーネのマジックアイテムがあればすぐにマナの多い場所を探知できるんですが…」


「えっ、そんな便利なものがあるの!?どこ?どこ?ていうかマジックアイテムっていう響きが唆るんだけど」


興味津々の様子のアキですが


「持ってきてるわけないじゃないですか…」


「いや、無いもののことを言うのはやめろよ、地道に探すしかないだろ」

「それもそうですね…」


「さて、次行くぞ次!」


少し不機嫌なリュウジに促されて私たちが次にやってきたのが、周りとは一味違う建物でした。

というか私はこのような建物に見覚えがあります。私たちの世界にも良く似たものがありました。僧侶(プリースト)たちが修行をしている修道院によく似ている、少し大きな建物です(といってもこの世界にはこれよりも大きな建物が山ほどありましたけど)。


「……修道院ですか」


「うーん……というかキョウカイ?」


とアキ


「教会ですか!そういえばそう呼ぶこともあったようななかったような…」


「しっかしボロい教会だな……こんなのこの近くにあったっけ?」


リュウジの言うとおり、その建物の外壁には所々亀裂が入り、また植物が覆っている部分も多かったりしておおよそ人が使っているような気配はありませんでした。

そして……


「あっ…」


私は思わず声を漏らしました。

外からでも分かるくらいの強い空間マナの気配…


私ははやる気持ちを押さえながら建物の中に入ろうとして…


「……いたっ!」


なにか見えざる壁に顔面からぶつかったかのような衝撃に襲われました。

慌てて両手を前に出して様子を探ってみると、ほんとにそこに壁があるかのような手の感触が……

「…お姫様なんでいきなりパントマイム始めたんだ?」


「……さぁ?」


少し先を歩いていたリュウジとアキが振り返りながら言います。というかパントマイムってなんですか!?


「パントマイムってなんですか!?」


「今お姫様がやってること」


とリュウジ


「マナを探すことですか?」


「いや、違くて……」


いや、問題はパントマイムが云々ではなく……


「というか2人は問題なく通れるのですね!?」


私の前だけに壁ができてしまうとはどういうことでしょうか…


「アイリちゃん、演技じゃなくてほんとに壁があって入れないみたいよ」


アキが能天気に言うと、リュウジはやっと状況を理解したのか


「マジか……」


とはいえ、このまま仲間はずれは癪なので、助走をつけてえいっ!と勢いよく建物に駆け込もうとしましたが


ゴンッ!


「……っ!?!?」


私は壁にぶつかった頭のあまりの痛みに声にならない悲鳴を上げて、頭を押さえながらその場でのたうち回りました。リュウジとアキがそんな私の姿を見て、声を上げて笑い始めました。


「このお姫様想像以上に面白いぞ!」


「もー、腹筋痛いからやめてよー!」


「……ひどい…」


もう知りません!私は帰ります!といっても私の帰るべき場所は……そう簡単に帰れそうにありませんが…

その後、落ち着いた2人に謝られ、宥められてなんとか探索の続行を承諾した私。


「でもなんでお姫様だけ入れないんだろ?」


リュウジの問いに、アキは、これは仮説なんだけどと前置きして


「私達にはなくて、アイリちゃんにあるものに反応して、結界が発動したとか!ほら、プリーストがよく使うじゃん結界!」


「結界ですか……しかしこの建物を覆うだけの大きさの結界は……」


並のプリーストには不可能です。というかアキがプリーストとか結界について詳しいということにそもそも驚きなのですが!


「でも、この教会からはマナの気配があるんでしょ?」


私はゆっくりと頷きます。


「なら、何かしらの存在がこの教会を守っていて、たまたまアイリちゃんが引っかかっちゃったって考えられないかな?」


「……たしかに」


しかし誰が?なんのために?

異世界から来た私を拒む理由とは……?


「俺たちになくて、お姫様だけが持っているものが原因の可能性が高いな」


とリュウジが呟くと、アキは指を折って数えるような仕草をしながら


「まず、アイリちゃんは私たちと違って異世界人でしょー?」


「異世界人…」


「次に金髪でしょー?」


「金髪…」


「次に美人じゃんー?」


「美人…」


アキの言葉に対していちいち真面目な顔でリュウジが復唱していくのがなんともシュールですが、ここは何も言わないでおきます。


「勉強ができないでしょー?」


「勉強…」


「運動ができないでしょー?」


「運動ね…」


「家事ができないでしょー?」


「姉貴もな…」


あの……あの!


「ちょっと待ってください!どさくさに紛れて酷いこと言ってませんか!?」

しかしアキは私の抗議には耳を貸さずにうーん…と唸ると、はっと閃いたような表情をしました。


「おっぱいだ!」


「やっぱりか!」


「なんでやねん!!」


私は2人の頭を思いっきり叩きました。これはアキに教わった「ツッコミ」という技術で、「私やリュウちゃんがボケたときは『なんでやねん!』って叫びながら頭を叩くんだよ。私もアイリちゃんがボケた時は遠慮なく叩くから!」と言われていました。ボケるとは何かいまいちよくわかりませんでしたが、きっと今のようなことでしょう。


「真面目に考えろよ。教会の主がおっぱいに嫉妬して、結界で入場拒否なんてことがあると思うか?」


リュウジはコロッと態度を変えてアキを責めます。


「そうです!嫉妬されるほど大きくはありません!」


「そこかよ!」


とボケたつもりはないのですが、リュウジのツッコミが入りました。彼は私の頭を叩いたりはしないのですが、時々辛辣なことを言ってきたりします。


「いやうん、まあ普通に考えて、アイリちゃんが魔法を使えるからっていうのが一番ありそうだね…」


とアキ


「私の体内マナに反応して……でしょうか?」


「……恐らく」


まああくまで仮説だって。そう言ったでしょ?とアキは締めくくりました。

「俺たちで捜索してもいいけど、お姫様が入れないならマナの補給はできないし、ひとまずここは放置して次行くか…」


「そうですね…」


と私たちは泣く泣くその場を後にするしかなかったのでした。



今回から探索編に入ります。

このパートからはだんだん戦闘シーンや頭のおかしな新キャラが多めに出没する予定となっております。

乞うご期待ということで…

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