1話:異世界転移
『見てくれマスター!新しい技を覚えたんだ。俺、まだまだ強くなるよ!』
(よし、これでやっと全員レベル50を超えた…!来週には新しい仲間が実装されるらしいしまたギルドを拡張しないと!)
スマホ画面に映し出された見目麗しい男性キャラクター。つい最近実装され、実装とともに貯めたお小遣いでガチャを回しに回して手に入れた。そこからは寝る間を惜しんで育成をしやっとの事で第1段階の最終レベルまで育成することに成功した。
目の下に大きなクマを作りながらも達成感に身を震わせていたが次の瞬間一気に現実に引き戻され高揚していた気分も急降下した。
「あれ〜?柳くん、またゲームやってんの?そんなことよりさ、またこれ頼むわ!」
「えっ、」
ドサッと机に置かれたのはクラスメイトたちの課題。もっと詳しく言うとクラスのリーダー格である天野優斗、来栖大雅、真城姫華、北条桜の課題だ。
「いつもごめんね〜、柳くん。あたしたち色々と忙しいからさ〜。」
「いやいや、姫華これは柳くんのためなんだよ!最近成績が落ちてるだろ?だから僕たちの分の課題もやれば必然的に成績も上がると思ってさ!」
「いやーん、さすが優斗!優しい〜。ってことで優斗の善意を無駄にしないように頑張ってね、柳くん!」
これは俺のいつもの日常だ。イジメとまでは行かないが日々雑用や課題をこの4人から押し付けられ、ほかのクラスメイトも担任も見て見ぬふりをする。
高校入学とともにこいつらに目をつけられ日々鬱鬱としていたがそんな時にスフィーダという育成バトルゲームと出会い、個性豊かなキャラクターと緻密なゲームデザインにあっという間にのめり込み、スフィーダをしている時だけは嫌なことも忘れることができた。
(何が俺のためだ。お前たちよりいい成績を取ったらもっと嫌がらせをしてくるくせに。)
本来、俺はこう見えても要領がいい方で勉強も運動も人並み以上にできる(ナルシストとかではなく)。ただ中学までの経験からあまり目立ちたくないというのと1度優斗たちの成績を抜いた時に嫌がらせの度合いが酷くなったというのもあり日頃からだいぶ手を抜いているのだ。
(まあいいや午後の授業中にさっさと終わらせてゲームしよう。)
時計を見ると昼休みが終わるまであと20分程となっていた。起きてたらまた何を言われるか分からないし睡魔も限界だったため机に伏せて残りの時間は眠ることにした。
目を閉じると共に一気に周囲の音が遠ざかっていきもうあと2,3秒で夢の世界へ旅立てるという時に甲高い悲鳴で意識を引き戻された。
身をビクつかせて顔を上げると教室全体が眩い光で包まれており、光源の床を見るとアニメや漫画、ゲームでよく見る魔法陣のようなものが一人一人の足元に出現していた。
「な、なにこれ!?」
「やばい体が透けていく!どうなってんだ!?」
「クソッ!扉があかない!」
「誰か助けて!いやぁ!!」
予想だにしない出来事にパニックになるクラスメイトたち。扉は開かず、窓の方を見ても普通なら運動場が見えるはずなのにまるで夜のように窓の外は闇に包まれている。そして段々と透けていく身体。
(これはもしかして異世界転移というやつでは…?)
周囲がパニックになる中、1人ゲームやアニメの知識を総動員して不謹慎にもワクワクしている俺。
(まさかこれは夢?実はさっきの一瞬で夢の中に入ったのか?)
自分の頬を思いっきりつねってみたが思わず声が出るほど痛かったためこれは現実だと仮定する。
(そうするとこれはクラス転移ものかぁ。どうせなら一人で転生か転移が良かったなぁ。異世界でもこいつらの顔を見ないといけないとかどんだけだよ。)
クラスメイトたちが1人、また1人と消えていく間、腕組をしながら思考を巡らす。
(ていうか転移ってこんな時間かかるの??光出してからもう5分くらい経ってるんですけど。)
どんどん人が消えていくためまだ残ってるクラスメイトたちのパニック度合いも最高潮だ。
「や、柳くんどうしようみんなどんどんいなくなっちゃう。怖いよ。」
自分でも教室外に行けないか試してみようと思い席を立つといつの間にか近くにいた星見聖羅が俺の制服の裾を掴みながら話しかけてきた。
星見はクラスメイトの中で唯一俺に積極的に話しかけ、優斗の幼なじみであるがゆえに度々優斗達にも苦言を呈していた女子で俺からすればいちばん信用の置ける友人だ。
「うーん、何となくだけど大丈夫だと思うよ。怖いんだったら手でも繋ぐ?あ、嫌じゃなければだけど。」
あまりにも震えて可哀想だったので何も考えずポロッと言ってしまったが言った後に誰がこんなやつと手を繋ぐんだと激しく後悔した。
「つ、繋ぐ!!」
だが、思ったよりも食い気味に返答を貰いギュッと手を握られたためそんなに怖かったのかと驚いた。
「あ、俺たちの番みたいだね。」
手を繋いでいるからか俺と星見は同じタイミングで体が消え始め、下半身が全て消えた段階で星見が目をギュッと瞑ると同時に片手を繋いだまま腕にもギュッとしがみついてきて違う意味で体がビクついた。
だがそんなこともつかの間、目を開けていられないくらいの光に全身が包まれたかと思うと次の瞬間には見たこともないだだっ広い宮殿のような場所にいた。
周囲には先に消えていったクラスメイト達もおり辺りをキョロキョロ見回している。
「星見、もう大丈夫みたいだよ。」
抱きつかれていない方の手で星見の肩を軽く叩き声をかけると恐る恐ると言ったふうに目を開け周りを見ていた。
「……ここどこ?」
もっともな質問に俺もそれが聞きたいなと思っていると前方から声が聞こえてきた。




