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想い出  作者: 彼岸  章華


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不理にて

 理解が及ぶ範疇は、人によって異なる。

 その事を、私は理解していた筈なのに……。




 これは、哀れにも私の予想が外れ、放心状態になっていた時の事である。


 ……だが。

 そのような状態になった理由は、とても単純だった。


 なにせ雄一郎さんが、私の期待を捻じ曲げるように、私を正気に戻すように……。


「なるほど。失敗談以外の面白かった出来事ですか。それなら、お祭りですかね」

 

 このような、何も狂れていない、普通の思い出話を始めたのだ。


 そう。

 捻子のある話を、雄一郎さんは話し始めたのである。


「え、お祭り?」


 何かの隠語か?


 ああ。

 だから、これは仕方がない。


 私が思わず、こんな考えを雄一郎さんに向けてしまったのは、仕方のない事なのだ。


 なにせ、話の螺子が外れていなかったのである。


 ……可笑しい。

 雄一郎さんの思い出話が、いつもの奇想天外な、愉快で滑稽な話ではない、とは。


 だが、雄一郎さんがこんな日常の一幕を、態々意味もなく私に話すだろうか。


 何か、裏があるのでは?


 ちなみに、この時の私の頭の中には、他にもこんな言葉が渋滞していた。


「一体、雄一郎さんは何を言って。これが、聖夜の奇跡?」 


「いや。これは悪ふざけだ。後で本命の捻子の飛んだ話が聞けるんだ。とりあえず、明日の天気確認しなきゃ。(ヒョウ)だっけ?」


 そう。

 こんな感じだ。


 まあ、大混乱だった。

 ちなみに、次の日の天気予報は快晴だった。


 だが、こんな時でも雄一郎さんは優しかったのである。


 そう。


 私が混乱して

「警察のお世話に?」

 などと言っている時でも、雄一郎さんは大人だったのだ。


「なっていませんよ。普通のお祭りです」


「……なってないの?」


「ええ。なにせ神輿を担いだり、りんご飴や射的の屋台が立ち並ぶ、日本の行事の一つですからね」

 

 このように親切丁寧に、子供でも解るように私に祭りについての知識を教えてくれたのだから。


「いや。お祭りが何なのかは、解ってるよ」


 ……まあ。

 一つだけ不満があるとすれば。


 既に知っている事実の解説を、丁寧に解りやすく、子供でも理解出来るように、かみ砕いて説明してくれた事だろう。


 おかげで、心に虫が湧いた。


 いや。

 解っている。

 この言葉の原因は私なのだ。それは知っている。


 だから

「事の発端が偉そうに文句を言うな」

 と、言われても仕方がないと解っているのである。


 だが、この時の私に正論は通じなかった。

 なにせ私は、雄一郎さんの言葉を聞き、混乱状態になっていたのだ。


 日本語など、通じる訳がなかったのである。

 

 しかし、このような状況でも雄一郎さんは、冷静だった。


 目の前で混乱して頭の可笑しい私に向かって、特に心配する素振りもなく

「おや、ご存じでしたか。それは良かった」

 と、こう言ったからである。


 いや。

 これは単に、私の行動に興味がないだけか……?


 まあ。

 そんな事、私には関係ない。


 なにせ、この時の私は……。


 混乱から生み出された理不尽な怒りと、雄一郎さんの親切心に対する感謝で板挟みになり、感情が爆発しそうになっていたのだ。


「まあ。流石に、そこまで無知ではないからね」


 だが、私は成長していた。感情を制御出来るようになっていたのである。


 そう。

 私はもう、怒りを他者に向けて泣く、赤子ではなかったのだ。


 だから、例え心の中が嵐の様に荒れていても、それを表面に出す事がなかったのである。


 先程の混乱云々、不機嫌云々は……。

 記憶にございません(ノーコメント)、というやつだ。


 成長しても、未熟な部分はあるのだから。


 そう、思った時だった。


 私の思考を遮るように、雄一郎さんが

「そうですか。それを聞いて、安心しました」

 と、言ったのである。


 え、何に?


 ああ。

 そう聞かなかった私を、誰か褒めてほしい。


「そう。それなら、良かったよ」


 そして雄一郎さんが何に安心したのか一切解っていない状態でも、こう言った私、良くやった。


 まあ。

 その疑問を聞いた瞬間、呆れられる未来が見えたから聞かなかっただけなのだが、それは言わないのが、お約束というやつである。


 ……なにせ、私の失態が増えるだけなのだから。

お読みくださり、ありがとうございます

それでは、続編をお待ちください

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