1-ex2.リンカ①
更新が遅れごめんなさい。。。
先週告知した通りリンカ視点のエピソードです!
のつもりが、リンカの父親と母親の話になってしまいました、なぜ??
メインストーリと交わる部分があるので、最後までお読みいただけると嬉しいです!
リンカはアストフ村にある宿屋の看板娘だ。この宿は現村長である祖母が若いころに始めた宿屋で、そこから母親を挟みリンカで3代目となる。
宿の女主人となったばかりの頃は、祖母からよく叱られていた。「ここは何のための宿屋なのか!」と。しかし母親を亡くし直ぐの頃のリンカは、最後に遺されたものを守ることに必死でそんなことを考える余裕はなかった。
いつも通り何とか1日の仕事を終え倒れ込むように寝ていた時、まだ幼かった頃の夢を見た。母親であり当時宿屋の主人を継いでいたシータに父親との馴初めを訪ねたときの夢だった。
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アストフ村は広大な森林に囲まれた村で、その森には希少な植物が多く存在することから採取依頼を受けた冒険者が昔から多く訪れる。森は奥深くまで行かなければ遭遇したとしても低ランクの魔物が大半で、訪れる多くの冒険者は駆け出しの人たちだ。
そんな冒険者達が翌日の依頼に万全の態勢で臨めますように、或いは初めての依頼を成し遂げた冒険者達が安心して休めますようにと、シータは日々精一杯働いていた。
ある日のことだった。装備などから見てとても駆け出しとは思えない4人組の冒険者が宿を訪れた。聞いてみたところ結成して5年目になる冒険者パーティで、ランクはS~Eまである中でBランクと、平時であればこんな村を訪れるような存在ではなかった。
しかし今は時折ある非常時。基本的に強い魔物と出会わない森と言っても、相手は未開の大自然。奥地から凶悪な魔物が現れることも少なくなかった。そしてそういったタイミングには強い冒険者に依頼を出し、元凶となっている魔物を討伐してもらっていた。
事前調査によると今回の討伐対象は高さ2m全長4m程度の猪のような魔物で、Bランクに分類されている魔物だ。Bランクの魔物とは、Bランクの1パーティが戦闘不能者を出さずに討伐することができる魔物と設定されているため、何事も無ければこの魔物が討伐されるのは時間の問題だとされていた。
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それから2週間、まだ件の魔物は討伐されていなかった。というのもどうやらとても警戒心が強いようで、痕跡を見つけることはあっても直接対峙することができていなかったからだ。その日の探索も徒労に終わり宿屋に帰ってきていた。
「皆さん、お疲れ様!!ご飯にする?お風呂にする?それともぉ…」
バシッ!!!
「嫁入り前の娘が何馬鹿なことやってるんだ!」
宿屋の看板娘兼女主人であるシータがボケて、母親のメリダがツッコミを入れる最早職人芸と言っていいレベルで洗練されているこの光景は、この宿に泊まり始めてからお馴染みの光景だった。今まで一度も同じネタを見たことが無いのでバリエーションも豊富のようだ。
当人たちとしては意図してやっている訳ではなかったが、何とも言えないこの馬鹿らしい光景を見て「帰ってきた」と実感する冒険者は実はとても多かった。かく言う俺カシィもその一人で、連日成果が無い状況でナーバスになりそうな所を支えてもらっている実感がある。
パーティメンバと笑いつつご飯のリクエストを入れ、そのまま2階へ上がっていく。大部屋につくと各々装備を手入れしつつ、明日の作戦について話し合う。
「もう少し森の奥まで進んでみるか。」
「異議な~し。大体魔物のレベルも分かったし、大丈夫っしょ!」
「珍しく意見が一致しましたね。私も同意します。」
「俺は、リーダの決定に従うよ。」
リーダが案を出し、楽観派と慎重派の二人が意見を出し合って俺は最後に同意する。概ねいつもこんな感じで作戦が決まっていく。正直ここ数日戦った魔物は雑魚ばかりで、早く大物と戦いたい気分だった。
「ご飯の準備、できましたよ~」
階下からの声が作戦会議終了の合図となった。ここの宿、人とベッドとお風呂は最高なんだけど食事がなぁなんてことを考えつつ食堂へ向かって行った。
その日の夜は雨が降った。まるで既に流れた血を洗い流すように。
◆◆
翌日、いや厳密には翌々日、討伐の証明となる立派な牙を持ったカシィが一人で帰ってきた。決して目を合わせようとしないその顔は、泥と血で汚れていた。
「………っ。ご飯にする?お風呂にする?それともぉ…」
残念ながらメリダからのツッコミは入らない。当初帰ってくる予定だった時間を6時間は過ぎていたからだ。その間シータは他の宿泊者の対応を終え一人待ち続けていた。危険度が低いとはいえ魔物が闊歩する森だ。当然そういったことは過去にもあったし、今回も覚悟していた。しかし慣れられるようなものではない。
「あぁ、ご飯をお願いするよ。」
シータは手早く濡れタオルを渡し、食事の準備に取り掛かる。と言っても既に完成しているシチューを温め直すだけだが。しかしと思い直し、メリダに内緒で買った高級蜜を一回し隠し味として加えてみた。
「お待たせ。今日のご飯はシチューだよ。」
何とか食卓についたボロボロのカシィの前に、パンとシチューを並べる。
「いただきます。」
今何を考えているのだろう。とても丁寧に礼儀正しく手を合わせたカシィは、一口一口噛みしめるように食事を進めていく。そのままゆっくりと食べすすめ完食した。
「ごちそうさまでした。少し甘ったるかったけど、とても温かくて美味しかったよ。」
「そりゃあ高級蜜をたっぷり入れたからね!最高でしょ!!」
思わず少し笑いがこぼれてしまう。つられたのだろうか、目の前で大笑いを始めるシータにくぎ付けになる。…が、ふと背後に気配を感じ慌てて振り返る。
「あんたら、今何時だと思ってるんだい!!!」
目の前から最大級の怒号が突き刺さる。今日戦った魔物の咆哮よりもよっぽどおっかない威力だ。
「取り敢えずそこの臭いやつは風呂入って早く寝な!!!」
その後は、お風呂に入って昨日よりも広く感じる部屋で朝を迎えた。そうだ、朝食前にいつも通りトレーニングをしよう。そう思うも体に力が入らない。早く起き上がらなければリーダにどやされてしまう。あぁ、昨日は武器の手入れをしていない。もし武器が錆びたりしたら、1Ôのずれすら許さない鬼畜野郎からまた金がかかるなぁと暫く小言を言われ続ける日々だ。あっでも今回はあのお気楽者も同罪かな?いつかみたいに完璧な言い訳を考えてもらおう。
しかし部屋は静まり返っている。誰もいない部屋で、ただ一人ベッドで横になっている。
そんな中、ドタドタとまだ少し早い空気を読まない春雷が近づいていた。
◆◆◆
その後カシィは事実上冒険者を引退し、アストフ村へ定住した。村へやってきたカシィはシータに頼み込み、住み込みで宿屋の従業員を始めた。最近では名料理人として話題になりつつある。また宿に泊まる新人冒険者へ指導を行っているようだ。場合によっては探索に同行することもあり、近場のギルドは初めて受ける依頼としてアストフ村のものを選ぶよう推奨しているなんていう噂も出回っていた。
それからは幸せの連続だ。カシィがアストフ村へ来てから2年後にはシータと結ばれ、リンカという子宝を授かった。6歳になった最愛の娘が「パパとママみたいな宿屋さんになる!」と言った際には、宿屋に冒険者たちが来るたびに自慢しており、「親バカが過ぎる」とメリダ村長にこっぴどく叱られた。リンカが10歳になるころには宿の手伝いをしてくれるようになり、「親子そろって看板娘だ!」と家族で大喜びした。
◆
夢から覚めたリンカは思い出に浸る。冒険者だった父と、宿屋の娘だった母、それに二人の間に生まれた私、3人の幸せな生活はこのくらいの時がピークだったかもしれない。昔の記憶を掘り起こすと3人で宿屋を切り盛りしていた光景がぼんやりと頭に浮かぶ。しかし、そんな幸せな日々は長くは続かなかった。
物書きの皆さんってどうやって名前を考えているんでしょう?
そもそもどのレベルのキャラまで名前を付けるべき??
今回登場した人物なんて、本編に登場する予定ないのになぜ名前持ちのキャラが増えたんでしょうか?キャラごとに個性を出すってどうやるんだろぅと苦戦している中、なぜかキャラが増えていくのでした。
もしアドバイス等あれば、誰か助けてください。
さて、本当は次話から本編に戻るはずだったのですが、結局リンカについて書きたいことがまだ書けていないため、次回もリンカの話になる予定です。ただでさえ話の進み遅いんだから寄り道してないで早くしろよと言われそう(というか自分が思っている)ですが、お付き合いいただけますと幸いです。