表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
〇〇〇の神の申す事には  作者: 日曜定休のsai山
【第2幕】日曜日
96/121

第10.1話 日曜日のおやつ時。バーガー&カフェ・ホロホロ。【天気】霧雨

 日曜日。おやつ時。霧雨(きりさめ)が時々強くなる肌寒い天気。


 (りく)たちは、知流姫(ちるひめ)について知りたがる咲久(さく)雨綺(うき)に任せると、空腹を訴えるしいなを連れて、とあるバーガーショップに来ていた。


 ▽ ▽ ▽


 「Burger(バーガー)Cafe(カフェ) Holoholo(ホロホロ)


 それは、氷室神社(ひむろじんじゃ)から南西に歩くことおよそ5分。市役所の通り向かいにある小さなハンバーガーショップだ。

 このお店は、値段こそちょっぴり張るけれど、チェーン店では出せないリッチなハンバーガーが味わえるとして、和風が基本の川薙(かわなぎ)にあって隠れた名店と評判の店だった。


 △ △ △




「そう言えばさっき雨綺が、小宮山(こみやま)君は鏡使えなかったとか言ってたけど」


 アメリカンな内装がちょっと物珍しさを(かも)す店内の一角。

 4人掛けのテーブル席で、この店の名物バーガーをナイフとフォークで切り分けていた陸は、ようやく神社での話題の続きに入った。


「うん。色々試してみたんだけど、ぼくには普通にただの鏡だったんだよね」


 と、海斗(かいと)

 ハンバーガーを切らなかった彼は、もう付属の紙袋にハンバーガーを入れ終え、今は蒸らしている最中だ。


「――これたぶんなんだけどさ。あの鏡、ぼくには使えないんじゃない? 『それは氷室の人間にしか使えない!』的な意味で」


「や~……でも鏡で御魂(みたま)を見るって、要は破滅騒動の時と同じやつでしょ? あの時オレは普通に使えたけど」


 陸は切ったハンバーガーを紙袋に入れながら反論した。


 鏡に映し出した者の御魂の状態を視る。――それは陸がもうすでに使ったことのある技だ。

 それはその時一緒にいた海斗も知っているはず。


「でも陸君が使ったのは昔の(・・)鏡の破片だったでしょ? 今回のは今の(・・)鏡なわけだし」


「それは……」


 陸は、海斗の言い分がいまいち()に落ちなかった。


 海斗の言う通り、あの時使用した鏡の欠片(かけら)と、今の円鏡(えんきょう)は別物だ。けど、本当にそれで片付けちゃっていいものか……


「そうだ。鏡は――」


「雨綺君が持ってる」


 鏡は氷室の者じゃなくても使える。

 そう実証(じっしょう)したかった陸は、出鼻(でばな)をくじかれてしいなの方を見た。


「ん? なんじゃ? ものほしそうなかおでわらわを見おって。それよりもこのハンバーガーとかいうものはまだ食えぬのか?」


「……あ~はいはい」


 鏡の所有者としての意見を求めたのに、ちっとも伝わっていない。

 陸は仕方なく、ぴょんぴょんと体を上下させて期待を膨らませるしいなに、たった今作ったハンバーガーのパックを渡した。


「おお! これが――!!」


「あ。それデカいから一回潰してから食えって」


「……つぶす?」


「しいなちゃん。こう、ぎゅっと」


 陸の代わりに、自分のハンバーガーを潰して見せる海斗。


 この店の名物バーガー。抜群に美味しいらしいのだけど、その分大きいのだ。

 上下のバンズの間には、目玉焼きやら、パイナップルやら、チーズやら、パティやら、トマトやらレタスやらとまあとにかく具だくさん。

 長いピンで止められ皿に載っててくるハンバーガーなんてしいなに限らず初めての体験だった。




「おお! うまい! なんということじゃ! わらわ、こんなにうまいもの食うたことがない!」


「あーはいはい。分かったからもっと落ち着いて食べなさい」


 予想以上のハンバーガーの美味しさに、色々(おろそ)かになっているしいなを注意した陸。

 陸は、目をキラキラと輝かせてハンバーガーを頬張(ほおば)るしいなの口を紙ナプキンで拭った。


「おしぼり、いりますカ?」


「あ、はい。ありがとうございます。それと、すみません」


「とんでもなイ! こんなに喜んでいただけてうれしイ」


 海斗がおしぼりを受け取ると、外国人オーナーシェフが笑顔で応えた。


「いやこれはほんとうにうまい! そなたらも早うに食うてみよ。こんなにうまいもの、あたたいうちに食わねば、バチが当たるというもの」


「あーもう! 分かったからせめて座って食べなさいって!」


 川薙の破滅がかかった真剣な話をしに来たはずなのに、なぜか育児の苦労を疑似体験(ぎじたいけん)している。

 どうしてこうなったのか考えずにはいられない陸だった。


(りく)    ……主人公君。高1。へたれ。

咲久(さく)   ……川薙(かわなぎ)氷室(ひむろ)神社(じんじゃ)宮司家(ぐうじけ)の娘。ヒロインさん。高1。割といいかげん。

海斗(かいと)   ……陸の友人。高1。さわやかメガネ。

雨綺(うき)   ……咲久の弟。小6。ハスキー犬系男子。

朱音(あかね)   ……元迷惑系動画制作者。高1。根はいい子。

(さき)先生  ……朱音の担任。家庭科教諭。うっかりメガネ。


木花知流姫(このはなちるひめ)……桜の神様。ギャルっぽい。

奇稲田姫(くしなだひめ) ……川薙氷室神社かわなぎひむろじんじゃ御祭神(ごさいじん)。訳あって縮んだ。

しいな  ……小さくなってしまった奇稲田姫の仮の名。


川薙(かわなぎ)   ……S県南中部にある古都。

茅山(かやま)   ……川薙の南にある工業都市。


【更新履歴】

2025.5.29 微修正


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ