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「第二の星で」を素人ながら、拙い文章で作らせて頂いてますが、息抜きで新しいアイデアも物語にしたくなったので、こちらも書いてみます。でも、あくまで優先するのは第二の星でです。こちらは不定期にのんびり挙げて行きたいです。読んでくださる方がいたら、ありがとうございます。



創世記1732年


海の中心にあった一つの陸地は、300年前の大戦で3つに分断された。


「エガーテ」「ノームン」「ガサンタ」

3つに別れた大陸は、それぞれ独自の文明を築いたが、

かつての大戦を始めるきっかけとなった、エガーテ人は迫害を受け続けた。


エガーテ人の迫害の理由となったものは、「魔力」の発見と発現だった。


 



村を囲う穏やかな森。

その森は私達を包み込み、豊かな生き物、水、作物、鉱石に至るまで、生活の必需となる全てをくれた。


しかし、今日の森を見つめると、深奥の暗闇から何かが見つめ返して来るような違和感があった。



湿気った地面に長靴と変わりない跡がついている。

しかし、その靴は人間が履いているものと同じ筈なのに、遥かに巨大であった。



「熊のものじゃない……。ここは、魔力も充満していない純然な森だから、そんな筈はない。」


ユラ・ヤコウは薪と木の実をごったに詰め込んだ籠から、中身が溢れてしまわないようにゆっくりとしゃがむ。


自身の足を地面に叩きつけて、足の痺れを感じながら、

その跡を見下ろす。

やはり、自分の長靴から作られた足跡では、それの大きさには遥かに届かない。


「まさか……巨人。」

中年のけむくじゃらの巨体を思い浮かべ、身震いを起こした。


途端、茂みから狼が飛び出し、その後方では、狼の頭だろうか、ボールのように転がり出ていた。


体の底から声を出したい衝動に駆られるが、口を押さえてゆっくりと後ずさる。


眼前の狼は、こちらには目もくれず、ただ茂みの先の木々を睨みつけていた。

目線が高い。明らかに人と対峙していない。

熊か、熊であっても二足で歩行する個体でなければ辻褄が合わない高さだ。


地面が揺れた。

ユラの心臓は鼓動より先に、寒気を全身に行き渡らせた。

遅れて鼓動がやって来る。

再び、揺れ。


木の細い枝をへし折る音が響き、狼は歯茎と牙を晒し、

最大級の威嚇としていた。


目線の先、追うつもりはなかった。しかし、視線を感じると、無意識にでも目を向けてしまう。

好奇心というのはこう言うことだ。

探究心などではない。命と脳みその了解を得ないで、体が自然に行うこと、それこそが好奇心だ。

しかし、人間はなんて愚かな生き物なんだろう。



眼前のそれは、鎧だった。

鋭角な角が2本。目元の窪みは消され、赤いラインが引かれている。

全身が黒で包まれたその機体は、恐怖と共に品を感じさせた。ヒロイックというのだろうか。従来の無骨なものではなかった。


体長は、横の木よりは遥かに低い。

しかし、熊より巨大だ。

巨人だった。5メートルはある筈だ。



その巨人は、剣を手に持ち、それは巨人の体長程はないものの、自身と並べばお釣りが来るサイズだ。

そして、盾。

こちらは巨人を完全に覆えるサイズだった。


その巨人は、盾を木に叩きつける。

木は初めて受けた衝撃に驚くように、薙ぎ倒された。


地面がズシリと揺れ、狼とユラは肩をビクリと震わせる。

狼に仲間意識を感じたのは、これが初めてだろう。



「不味いな、村の人間かも知れん。」

この騎体、「アイアンメイデン」のパイロット。

リズム・ズルムという女性は、狭いコックピットで独り言を呟いた。



ーーなに?貴様、人に見つかったのか!ーー


しかし、その独り言には返事があった。

自身を咎める声音がコックピットの中で響き渡る。

また、女性の声だった。

これが魔法だ。



「この巨体だ。そりゃ見つかる。」

リズムは眼前の、少女と狼を見据える。

体温を表す、気持ちの悪い画面から、色の付いた画面へ切り替える。

森林の緑と、少女の素朴ながら整った顔、純白の肌、白い服が瞳に入り込む。


「狼はやる。良いな?嬢ちゃんは考えるよ。」



ーー甘ったれを言うな。子供であっても、見られたのなら殺せ!ーー



「ふざけるなよ、こんな可愛い子をさ。」

声を一層張り上げる女性を無視して、壁からなる操縦桿を前に倒す、視界が一瞬傾いて、ズシリと正位置へ戻った。



「あ、歩いてる。」

ユラは呟きながら、後ずさる。狼はこちらを確認しながらも、全身を震わせ、その騎体へ吠えていた。

これでは仲間が寄って来るだろう。しかし、寄ってきたところで……



地面が弾け飛ぶ、衝撃に目を瞑り、何かが飛び散った。

服には赤いシミ。

血だ。意思疎通の可能性があった狼は、服のシミに変身したのだ。


視界が開ける。その機体は剣を持った右腕を振り下ろし、

その腕は地面に軽くクレーターをつくり、食い込ませていた。



身を翻し、足元に根を張る木々を飛び越える。

呼吸が荒くなり、籠を投げ捨て、身軽になった。


「み、みんな……!」

村の人々の顔が浮かび、涙が溢れた。

鋭い葉が腕を切り、長靴が足を巻き込みかけ、もたれるが、必死に駆ける。

このままでは、自分もミンチだ。


「くそっ、逃げられた!」

リズムは叫び、機体の頭部をユラの背中へ向ける。


「ルッソナ、1人行ったぞ。村に向かってる筈だ!」

機体の姿勢を再び垂直に変えて、東に方向を変える。

起き上がりも、旋回も遅い。

凹んだ地面に足を取られ、バランスを崩しかける。



「完全な巨大化とはならないか。」

リズムはその能天気さに苛立ちながらも、ノイズ混じりのモニターにユラを捉えた。しかし、中々早い。

このアイアンメイデンでは追いつかない。



「ナッドの騎馬隊はどうした!村の人間が逃げた、私では追いつかない!」

普段の説教臭い女の声は聞こえなかった。


「肝心な時は黙って、余計な時は喚きやがって!」

機体は再び、木を薙ぎ倒し、下の小動物を踏み潰しながら進む。



「余裕のない時に説教が出来ないのなら、普段からもやるんじゃない!」

モニターはノイズが激しくなりやがて、四角の形すら保てず、霧のようになる。ユラを捉えきれなくなっていた。


「魔力が落ちている。私の……」

コックピットを照らす光は消え去り、機体は地面に仰向けに倒れ込んだ。


「……うっ!」

背中が反発し、空の咳をし、深呼吸をした後、

暑苦しいだけの鉄の間から出ようと、扉を蹴る。

しかし、上から押さえつけられていると思えるほど、開かない。



「まさか……。これが戦闘不可と判断されてるのか…。

まだだ、私は………!」

コックピットの壁は無数の針を、何処からともなく現し、掲げた腕を差し置いて、密集する。

リズムの肉と血が、コックピットであったはずの鉄造りのカプセルに撒き散らされた。

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