「コウノトリ」
絵:ししゃも
詩:NAO
きっと誰もが
授かる器を持って
生まれて来るのなら
神様にも
見落としがあるのね
うちの行方不明になった鳥は
まだ 見つかりませんか
ハンドルを握る手に
思わず力が入る
ラジオから聞こえる
ニュースキャスターの言葉は
今日も
同じフレーズを繰り返している
お金がなくて とか
望んでなかった とか
大人の事情を振りかざし
しつけだった とか
泣き止まなくて とか
虐待である事を
認めようとはしない
何故こんな大人に
親になる資格を
与えるのだろうか
神様にも
間違いがあるのね
どんなに望んでも
授かれない人も
いると言うのに
一人くらいは欲しいわね
授かりものだから
ないものねだりも良くないけど
あなたももういい歳でしょう
ごもっともなご意見で
ぐうの音も出ない
私の所へ来ない理由を
決して
体のせいにはしたくないので
笑ってこう答える
「うちのコウノトリは仕事しないのよ」
心の中は嵐だったのに
かくて 女と言うものは
いつからこんなにも
母親になる事を望む生き物に
変わるのだろうか
うちの行方不明になったコウノトリは
どこをほっつき歩いているのかしらね
信号が変わると
前の車のリアウィンドウ越しに
子供がこちらに手を振っている
それは一生懸命に
笑顔で手を振り返して
ウィンカーを出す
【2020年度 芸術祭出展】
【第34号掲載 「入選」】