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「君が幸せである様に」
君は広い芝生畑を
一人で走り回るのが好きだった
息が上がるまで走り続けて
呼んでもなかなか帰っては来なかった
そんな君も年をとった
目や耳も利かなくなって
私の呼ぶ声に振り向かなくなった
最近ではわがまま振りを発揮して
ご飯は食べないし
散歩には行かないし
広い芝生畑に立って
走る彼の姿を見ている
君はもうあの頃みたいに
風の様には走らなくなった
私は後どれくらい
君と一緒にいられるのだろうか
君がどんなに長生きをしても
先に逝くのはどうしても君で
置いていかれるのは私のほうで
私はまた命の重みを
悲しみと言う形で知るのだろう
広い芝生畑に立って
走る君の姿を見ている
私に気がついた君が駆け寄ってくる
「君はうちに来て良かったの?」
君の顔を覗き込むと
笑ってるみたいに尻尾を振る
君が何を考えているかは分からない
それでも
願うことがあるとすれば
君が幸せである様に