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第一話 始まり

俺は人生に嘘をついて生きてきた


「ハァ、、う、ぐぅ、、ぁあ」


それの報いがこれなのか?


(骨が床を擦れ激痛が走る)


「あぁぁぁぁあ、っっ、、ぅうあぁっ」


それなら甘んじて受け入れよう


「ハァ、、ぁあ、、あ」


でも、でもまだ


「う、ぅうう、」

「こう、かい、、がっ、ゴハッ」


あの人たちに謝ってお礼しなきゃだめなんだ

だから


「まだ、、」


まだ


「死にたく、、ない!」


(ドサッ)


ーーーーーーーーーー


俺は学校では陽キャという者に分類されていると思っていた。

中学生までは、、、


「またテストかよ〜」

「最近多くね〜?」


前の席でブツブツとふざけあいながら文句を言い合ってる。


「そ、それなぁ〜」


少しノリがいい奴みたいな感じで話しかけてみた。

しかし結果はいつもと同じ。


「お、おおう」


困惑して言われ、二人はそそくさと教室を出て行った。


「またミスったか〜?」


誰もいない放課後の教室、グラウンドでは遠くから野球部やサッカー部の掛け声、

上の階からは途切れ途切れに聞こえる楽器の練習音、音は確かに聞こえるのに、どれひとつとして自分には届かない。世界のすべてがそれぞれの「放課後」をせわしなく生きている中で、この四角い教室と自分だけが、時間の流れから取り残されてしまったような気がした。


夕方が近づき、窓から差し込むオレンジ色の光が、机の影を長く伸ばしていく。そのどれもが俺を避けるように、ただ静かに床に張り付いていた。ポケットの中で、誰からも通知の来ないスマホが、やけに重く感じられた。


「ハァーどーしよーかな、これから」


この男緋依真黎(ひよりしんり)はずっとこうだった訳ではない、

中学に入ったばかりの頃は、ただ毎日が楽しくて、放課後になるのが待ち遠しかった。

チャイムが鳴れば、当たり前のように机をくっつけて、いろんな人とくだらない冗談で声を上げて笑い合っていた。机の上にカバンを放り出したまま、誰からともなく「今日どこ寄ってく?」なんて話が始まって、夕暮れなんてあっという間に過ぎていった。


あの時の自分は、放課後の教室がこんなに広く、こんなに静かな場所になるなんて、想像すらしていなかった。

あの賑やかで眩しかった時間が、まるで遠い昔の夢だったかのように、今の静寂が妙に冷たく胸に染みてくる。


高校に入って仲の良かった友達は全員違う高校に行き、俺は高校でまた新しくたくさん友達を作った。


いや作りたかった。


「なんでこんなことになってんだろ」


いじめられた訳でも、ハブられた訳でもない、ただ“友達の作り方を忘れてしまった”のだ。

そのせいで知らない人との接し方がわからず孤立した。


「帰ろ」


ぽつりと溢した声は、驚くほど小さく、そして冷え切った教室の壁にあっけなく吸い込まれていった。重い腰を上げてカバンを肩にかけ、誰もいない教室を振り返る。夕日の斜光に照らされた無数の机が、まるで自分を拒絶する墓標のように規則正しく並んでいた。


イヤホンを取り出し、耳に押し込む。お気に入りの曲のイントロが流れた瞬間、周りの雑音も、

遠ざかっていく、すべてがシャットアウトされた。


ーーーーーーーーーー


街頭を見ながら一人でトボトボと歩いていると、ポケットの中でスマホが短く震えた。どうせ公式アカウントの通知だろうと、期待せずに画面を開く。だけど、そこに表示された名前に、心臓が跳ね上がった。一年前、別の街へと転校していった、あの頃一番仲の良かった友達からだった。


『久しぶり!急に思い出しちゃって。最近そっちはどう?楽しい?』


画面を見つめたまま、立ち尽くす。親と同じように、安心することができる連絡で返信する。嘘をつきたいわけじゃない。ただ、今の惨めな自分を知られたくなかった。文字を入力する指先が、嘘の重みで少しだけ震える。


『うん!最高超絶楽しい!!お前も昔みたいにバカすんなよ!』


っと送り返し、何もなかったかのようにスマホの電源を切りポケットに突っ込む。液晶が暗くなった瞬間、画面に映り込んだ自分の顔が、ひどく情けなくて目を背けた。「最高」なんて言葉とは一番遠い場所にいるのに。過去の自分にまで嘘をついてしまったような気がして、胸の奥がチクリと痛む。俺は、また少し心にモヤを抱えながら長く伸びた自分の影を踏みつけるようにして、再び前を向いて歩き出した。


街灯の光が、俺の影を何度も追い抜いていく。明日もまた、あの静かな教室が待っている。それでも、ポケットの中のスマホの熱だけが、冷え切った俺の手にほんの少しの体温を分け与えてくれているような気がした。


ーーーーーーーーーー


玄関のドアを開けると、いつも通りの見慣れた我が家の匂いがした。


「ただいま」


返事がないことは分かっていたけれど、静寂を紛らわせるように小さく声を出す。自分の部屋へ上がり、カバンを床に放り出すと、どっと重い疲労感が押し寄せてきた。制服のままベッドに大の字になって寝転がる。ポケットからスマホを取り出し、恐る恐る画面を光らせた。

——通知は、ない。さっき送った『最高超絶楽しい!!』という自分のメッセージが、液晶の中でやけに浮いて見えた。嘘の明るさで塗り固めた自分の返信が急に恥ずかしくなって、画面を裏返して枕元に投げ出した。部屋の明かりを消し、ベッドに入る。目を閉じると、放課後の誰もいない教室の静けさが、暗闇の中に鮮明に浮かび上がってくる。そして、スマホの画面に並んだ、偽物の自分の言葉。深くため息をつき、掛け布団を頭まで引き上げる。耳の奥で鳴り響く激しいドラムの音が、頭の中の雑音をかき消してくれればいいのに、と思う。だけど、目蓋の裏に映るのは、やっぱりあの眩しかった中学の教室と、今の頼りない自分の姿だけだった。


イヤホンから流れるお気に入りの曲に意識を預けながら、俺はゆっくりと、寂しい現実を忘れさせてくれる眠りの底へと落ちていった。


ーーーーーーーーーー


『ー、、は、、づく、、ー、!』


ん、ぁあなんだ?誰かが話して、


『、ー、には、かづく、、な!』


なんなんだ?誰だ?


『ーーーーーには近づくなぁ!!』


その言葉を最後に、頭を締め付けていた重苦しい静寂が、ガラスが割れるような音を立てて弾け飛ぶ、目を覚ますと眼に飛び込んできたのは見覚えのある自分の部屋、、、ではなく見渡す限りの砂漠だった。足元には、すりガラスや赤黒い結晶のような、見たこともない奇妙な石がゴロゴロと転がっていた。


「え?ここは?」


周りは見渡す限りの砂漠と、、、


「街、、か?」


吹き抜ける熱い風の向こう、陽炎の隙間に、乾いた木材を継ぎ接ぎして作られた見知らぬ街が浮かんでいる。


「っていうか、これ」


突き刺さるような灼熱が、容赦なく俺の肌を照らしている。その熱さは、自分が今、本当に見知らぬ場所にいるのだと冷酷に突きつけていた。だが今の自分の状況について考えると、暑さは感じなかった。


「異世界転生?」


灼熱に照らされた結晶の石たちが一瞬、ギラリと強く輝いた気がした。



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