第一章 第17話 慣れるな
朝だった。
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空は、
よく晴れている。
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風が、
少し強かった。
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乾いた風だ。
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村の外れ。
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積まれた藁が、
かすかに揺れている。
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その前で、
数人の男が集まっていた。
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「こうだったか?」
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一人が、
水に浸した藁を持ち上げる。
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そのまま、
地面に置いた火の手前へと投げる。
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じゅ、と音がする。
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煙が上がる。
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「直接かけるな」
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別の男が言う。
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「直接かけるとどうなる?」
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「本当に弾くのか?」
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問いが続く。
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一人が、
水を手に取る。
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そのまま、
火へと振りかけた。
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バチバチッ!
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火が弾ける。
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「おいっ——!」
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慌てる声。
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だが、
もう遅い。
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火が広がりかける。
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「……っ!」
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すぐに、
動く。
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水に浸した藁を、
掴む。
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投げる。
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押し込む。
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さらに、
投げる。
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大量に使う。
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火の逃げ場を、
塞ぐ。
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空気を断つ。
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じゅう、と音が重なる。
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煙が立つ。
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火が、
弱まる。
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そして。
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消えた。
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「……おお」
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小さく声が上がる。
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「ほんとに消えるな」
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誰かが笑う。
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さっきよりも、
少しだけ慎重な空気だった。
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その少し離れた場所で、
ジョーが立っていた。
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何も言わず、
その様子を見ている。
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手は出さない。
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口も出さない。
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ただ、
見ている。
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「もういいだろ」
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誰かが言う。
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「これくらいなら」
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火は、
完全に消えていた。
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煙も、
残っていない。
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安心が、
広がる。
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ジョーは、
ゆっくりと息を吐いた。
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「……慣れるなよ」
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誰にも聞こえない声だった。




