第七章 第7話 復興
嵐は去った。
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黒雲は流れ、
朝日がブルネンミッテを照らしている。
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だが。
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町は、
泥だらけだった。
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用水路は溢れ、
道には流木が転がり、
畑は水を被っている。
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それでも。
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ブルネンミッテは、
止まらなかった。
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「流木こっち回せ!!」
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「水路先に開けろ!!」
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「泥掻き出せ!!」
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怒鳴り声が、
町中へ響く。
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自警団。
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準自警団。
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農民。
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職人。
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町人。
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皆が、
一斉に動いていた。
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ぬかるみに足を取られながら、
流木を退かし、
泥を掻き出し、
崩れた箇所へ土嚢を積み直していく。
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止まらない。
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止まれば、
復旧が遅れる。
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だから、
誰も止まらない。
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ダンが、
泥まみれの地図を広げる。
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「北側水路、生きてる!!」
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「西側開通急げ!!」
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ハインが、
即座に怒鳴る。
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「準自警団、こっちだ!!」
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若者達が、
泥を跳ね飛ばしながら走る。
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その横では、
女達が炊き出しを始めていた。
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湯気。
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大鍋。
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温かい汁が、
疲れた人間達へ配られていく。
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「これも飲んで!!」
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「食べなきゃ動けないよ!!」
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怒鳴り声すら、
活気へ変わっていた。
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その時だった。
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「……なんだこれ?」
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泥を掻いていた若者が、
手を止める。
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ぬかるみの中。
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小さな緑色の石が埋まっていた。
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「石?」
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拾い上げる。
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薄い緑色。
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だが。
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トールの持つ精霊石のように、
光ってはいない。
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「こっちにもあるぞ!!」
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別の場所から声が上がる。
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さらに。
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「あっちにも!!」
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泥の中から、
次々と見つかっていく。
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緑色の石。
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小さい物。
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拳大の物。
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形はバラバラ。
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だが、
全て同じ色をしていた。
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あの、
精霊石だと叫んだ年配の女が、
それを拾い上げる。
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泥を拭う。
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そして。
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目を細めた。
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「……風の魔石か」
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周囲が、
ざわつく。
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ダンが、
振り返る。
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「知ってるのか?」
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年配の女が、
静かに頷いた。
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「珍しい魔石だよ」
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「だが、こんな量は見た事がない」
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彼女は、
町の外を見る。
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旧クベルハイム側。
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あの、
風の強い草原の方向を。
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「嵐の中心……か」
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ハインが、
腕を組む。
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「つまり、あの嵐で地中から出てきた?」
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「だろうね」
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年配の女は、
静かに石を見る。
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風の魔石。
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本来なら、
滅多に採れない魔石。
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それが、
無数に転がっている。
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トールが、
泥だらけの顔で近付いてきた。
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「また石かよ」
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腰には、
精霊石。
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手には、
普通の風魔石。
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「何が違うんだ?」
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年配の女が、
精霊石を見る。
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そして、
少しだけ眉を上げた。
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「……そっちは別物だね」
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トールが、
首を傾げる。
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「へ?」
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女は、
風魔石を軽く掲げた。
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「これは魔石」
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「自然に力が溜まって出来る物さ」
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そして。
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トールの持つ精霊石を見る。
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「だが、お前さんのは……」
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一拍。
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「精霊そのものの力に近い」
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トールが、
ぽかんと口を開ける。
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「なんか怖ぇな……」
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その横で。
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ダンが、
泥まみれの町を見回す。
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崩れた箇所。
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動く人々。
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そして、
次々と見つかる風魔石。
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風が吹く。
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朝の、
穏やかな風だった。
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泥の中には、
無数の緑色の石が埋まっている。
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後に、
風の魔石と呼ばれる物。
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この嵐を境に。
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ブルネンミッテは、
風の魔石を採掘出来る土地となった。




