第七章 第5話 救出
「ジョーッ!!」
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ハインの怒鳴り声が、
豪雨へ響く。
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濁流。
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荒れる水面。
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だが。
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返事は無い。
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トールが、
水路を覗き込む。
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「見えねぇ!!」
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「流された!!」
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雨が、
容赦なく叩き付けてくる。
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ダンが、
歯を食いしばった。
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「最悪だ……」
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泉へ繋がってる。
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この流れで飲まれれば、
まず助からない。
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ハインが、
拳を叩き付けた。
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「クソッ!!」
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「ロープ寄越せ!!」
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「まだ近くに居るかもしれねぇ!!」
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自警団員達が、
必死に濁流を探す。
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だが。
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見えない。
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暗い。
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濁流が激し過ぎる。
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トールが、
叫んだ。
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「ジョォォォー!!」
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返事は無い。
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その時だった。
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「ダン!!」
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リーネが、
雨の中を駆けてくる。
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全身ずぶ濡れだった。
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「ジョーは!?」
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誰も、
すぐ答えられない。
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その沈黙だけで、
十分だった。
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リーネの顔色が変わる。
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「……嘘」
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ハインが、
唇を噛んだ。
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「泉側へ流された」
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「今探してる!!」
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リーネが、
勢いよく水路へ近付く。
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だが。
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ダンが、
腕を掴んだ。
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「行くな!!」
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「今飛び込めば、お前も飲まれる!!」
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リーネが、
震える。
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「でも……!」
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雨音。
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濁流。
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鐘。
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全てが、
混ざり合う。
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その時だった。
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「泉を割るしかない!!」
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年配の女が、
叫んだ。
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皆が、
振り返る。
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「水魔法使いを集めな!!」
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「人数が居れば、水を押し退けられる!!」
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ダンが、
即座に怒鳴った。
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「ブルネンミッテ中の水魔法使いを集めろ!!」
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「使える奴は全員だ!!」
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豪雨の中。
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人が集まり始める。
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若者。
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老人。
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子供まで居た。
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皆、
泉の前へ並ぶ。
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リーネも、
震える手を握り締めた。
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「……お願い」
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「返して」
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水魔法使い達が、
一斉に杖を構える。
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雨が唸る。
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泉が荒れる。
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その瞬間。
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「今だ!!」
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魔力が、
一斉に解放された。
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ゴォォォォッ!!
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荒れ狂う泉が、
左右へ押し退けられる。
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巨大な水の壁。
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その中央に、
一本の道が現れた。
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「……見えた!!」
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誰かが叫ぶ。
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泉の底。
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そこに、
ジョーが倒れていた。
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動かない。
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ハインが、
即座に飛び込む。
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トールも続いた。
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激流の中を、
二人が駆ける。
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「ジョー!!」
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ハインが、
肩を掴む。
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冷たい。
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だが。
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「……生きてる!!」
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リーネの目から、
涙が溢れた。
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トールが、
ジョーを担ぎ上げる。
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「急げ!!」
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その瞬間。
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ドゴォォォッ!!
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押し退けられていた水が、
限界を迎える。
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「閉じるぞ!!」
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水魔法使い達が叫ぶ。
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ハイン達が、
全力で駆ける。
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そして。
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泉から飛び出した次の瞬間。
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ゴォォォォォッ!!
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巨大な水音と共に、
泉が元へ戻った。
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豪雨の中。
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リーネが、
ジョーへしがみ付く。
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「……バカ」
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震える声だった。
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だが。
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ジョーの胸は、
確かに動いていた。




