65話:ロッシジャーニ辺境伯奪還戦2
翌朝、日が昇りきるとべリリム軍による突撃が実行された。
ライフルやマスケットによる射撃による牽制と槍兵による威嚇によって敵側が混乱に陥っているさなか、迷彩服の上からギリースーツを着こんでいる私とサブマシンガン持ち2名は主戦場を迂回しながら後方の町へ進んでいく。
「伏せて、こちらに気が付かれるわけにはいかない」
こちらの方を気にしている帝国兵に気が付いて私は伏せるように指示を出す。
もういっそ撃ち殺してしまうか?
でも発見されるわけには…
「タリム子爵令嬢殿、見る限り周辺に帝国兵は二人しかおりません。いっそ殺してしまっては?」
確かに帝国兵は他に見当たらない。
「…そうね、もう倒しながら進んでしまいましょう」
ここからだと200mもない。
間違いなく当てられる。
パスッ ガチャ パスッ
帝国兵がぐらりと崩れ落ち、周りで悲鳴が上がる。
突然人が倒れればそれはびっくりするだろうが、ここは戦場だ。
慌てた帝国兵が数人やってくるのが見える。
「このまま狙撃する。二人は先行して」
「わかりました」
人を盾にされなければ間違いなくやれるんだ。
こっちへ出てこい。
立て続けに帝国兵三人が倒れたところで帝国兵は奥へと引っ込んでしまった。
これでは狙えないな…
私はあきらめて隠れながら教会を目指す。
教会までの道中ですでに10名は敵を倒した。
残念ながらフリッツは陣の奥におり狙えなかったが、先行した二人が確保してくれた教会に入れば戦場全体が見渡せた。
「距離が少しありますが狙い放題です」
「タリム様、お願いいたします。さっさとこんな戦争終わらせましょう」
といってもフリッツ・ロッシジャーニを倒してもこの戦争は終わらないのよね…すでにロッシジャーニ辺境伯領都は帝国軍が詰めているという。
まぁどちらにせよこいつは倒さねばならないのだけれど。
私は単眼鏡で位置を確認したのちアイアンサイトを覗く。
辺境伯としては妥当だと思うけれど、今の戦場であんなに着飾って…帝国兵も未だに“帝国兵だ”と分かる格好をしているので仕方がないか…
フリッツ・ロッシジャーニに照準を合わせて引き金を引く。
パスッ
この一撃で敵軍は残念ながら壊滅に至らなかった。
案の定、フリッツ自身は何の指揮命令権も持っていなかったのだと分かる。
頭を撃ち抜かなくてよかった。
足ならまだ息はあるだろう。
私は近場に居た帝国兵に照準を変えて次々に打倒していく。
次第に領民たちが逃げ出し戦線は崩壊。
べリリム侯爵軍が領民であれば罪に問わずけが人は治療すると通達したことで恐慌状態は落ち着いていった。
「結局60発も使ってしまったわ」
「帝国軍の一割を一人で打ち倒すとは流石アヤタルですね」
「褒めても何も出ないわよ」
まぁ本当に褒められてるのかわかった物じゃないけれど。
とにかく、後はロッシジャーニ辺境伯領都へ進軍し帝国軍をたたき出すだけね。




