61話:べリリム侯爵家
結果的に先行してべリリム侯爵本家へ徒歩移動中にルーナに追いつかれてしまった。
ルーナはさらなる証拠をそろえて私に追いついたようで、私って足遅いの? とおもってしまった。
「私が全力で追いかけただけです。ミリア様は貴族令嬢としては標準的です」
つまり足が遅いと言いたいのね。
まぁそこは貴族令嬢と護衛メイドの力の差と認識しておく。
そもそもの鍛え方が違うのだからしょうがない。
「ミリア様、まだ歩けますか? このままべリリム侯爵家まで向かいたいのですが」
「頑張るわ…荷物捨ててもいい?」
「弾薬以外なら私が持ちます」
素直に装備のほとんどをルーナに持ってもらい、街道を突き進む。
ストローンの町だけは迂回したが、後はべリリム侯爵家まで一直線である。
翌日の朝方にべリリム侯爵家に到着した。
しばらく体を洗うことも出来なかったためか、私を見たジェニファー様がお風呂を使わせてくれて一息つくことができた。
そして昼前に私とルーナはジェニファー・べリリム様とのお茶会という名の状況報告会に出ることになった。
私達の服装はお世辞にもお茶会に出られる格好ではないのだが、まぁ名目上というやつだ。
「そう、マルセルまでかかわっていると」
「はい、ロッシジャーニ辺境伯領の占領を見返りにフリッツ様を領主とする計画で、べリリム侯爵家の切り崩しも画策しているようです」
「我が家に泥を塗り王国内での立場を弱らせようというのね…マルセルは領主代行ですか…しかしよくこのような密書を見つけましたね」
「ルーナのおかげです」
「あぁそういえばガリム伯爵家の執事はそういう家系でしたね」
上位貴族だとうちの執事集団が隠密部隊なのって知れ渡っているんだなぁと改めて思った。
そういうことは早めに教えておいてほしいのよお母様…私今回の戦争で初めて知ったことが多すぎるのよ。
「すぐにマルセルには引いてもらいましょう…問題はロッシジャーニ辺境伯ですね。現辺境伯がかかわっていないかの裏取りもしないとヘタに動けないわね」
「そのお役目、我が家にお任せいただければと」
「…ルーナ貴女直答を!」
私の後ろに控えていたルーナが突然声を上げたので咎める。
侯爵様に直答するなど突然どうしたの!?
でもジェニファー様は特に嫌な顔せずにいらっしゃる。
「わかりました。どれぐらい時間がかかります?」
「2週間ほどいただければと」
ルーナの答えにこくりとジェニファー様が頷いた。
「ミリア様、これより私が一時お嬢様の護衛を離れます事、ご了承願います」
私は思わずポカーンとしてしまって反応が遅れてしまったが、ジェニファー様の方を向けば特に咎めたりということもないようなので頷き返す。
「では御前失礼いたします」
サッとルーナが消えてしまった。
あぁこれが隠密ってやつなのか…
「べリリム侯爵申し訳ございません」
「気にしなくていいわミリアちゃん。隠密なんてあんなものよ」
「その前に私の専属メイドのはずなのですが…」
「ことは急を要するからこの度は不問とします。それとミリアちゃんはしばらくうちの屋敷で休養してほしいわ。ずいぶんやせてしまったようじゃない。詳細が分かったら我が領軍に同行してほしいのでお願いするわね」
「わ、わかりました。ありがとうございます」
まぁまともなご飯は食べられなかったもんね…侯爵からの申し出を断ることも出来ないので素直におうけすることにした。
そういえばべリリムもタリムと同じぐらい食の都なんだったっけ…しばらく美味しいものが食べられるといいのだけれど。




