19話:ルーナの仕事
ちょっと百合表現あり
与えられている宿舎に戻ってきた。
私は銃を下ろしてベッドにごろんと寝転がる。
「ははは、まだ手が震えてる」
「緊張と重圧でもちゃんと狙撃に成功したミリア様を私はすごいと思います」
「…ありがとうルーナ。でもこの手の震えは人を殺してしまったってことからだと思う。寒気がするの」
実際背筋は凍るように寒い。
司令官たちの前では平気な顔をしていたが、そんなの貴族の仮面を張り付けていただけに他ならない。
お母様、ミリアは貴族令嬢としての教育がこんなところで役立つとは思いませんでしたわ。
「では、私が温めてあげましょう」
「は?」
そういうとルーナが私に抱き着いてきた。
まってまって、どういうこと!?
「お寒いとのことでしたので、人肌で温めて差し上げようかと…それに」
「それに?」
「私の仕事についてはあまり大きな声では言えないモノで」
「な、なるほど」
あんまり納得できないが納得することにしよう。
ルーナのほうが背がデカいから私はすっぽり彼女に収まっているような状態だ。
よっこいしょと起こされるとそのまま後ろ抱きにされてしまった。
てか、ルーナ耳元でしゃべる気!?やめてくれない!?絶対くすぐったい!!!
*****
端的に言えば、ルーナの仕事というのは私の護衛だけではなく、暗部の下請けのようなことをしていたらしい。
同い年の女の子に何をさせているのか我が家…とちょっとムッと来たわけだけれど、なんでもルーナの家は昔からそういった”仕事”をしているのだそうだ。
お父様も承知のことだったらしい。
だから私の護衛ってルーナだけだったのね…普通貴族令嬢って最低でも護衛とメイドの2名体制での行動が普通なのに、私はルーナだけだったものね。
主な仕事は潜入・暗殺
暗殺って…
「というわけで、わたしはすでに人を殺めたことがあるのです」
「…それは私の護衛としての仕事も含まれているの?」
「私は今のところミリア様の護衛のみが仕事ですが、実は一度お嬢様は王都で襲われそうになっております。事が起こる前に私がなんとかしましたが」
そういって、親指を立てた手を首の前でスッと横へ動かすジェスチャーをする。
おっと、やっちまったのかいその暴漢。
いや、暴漢であったかも定かではないんだけれど…
「まったく気が付かなかったわ…」
これはからはもう少し身の回りに気をつけよう。
そもそも戦場にいるんだから、気をつけないといけないのは間違いないんだけど。
「ミリア様はもう少し周りを気にされたほうが良いかと思います。一点に集中する力は狙撃には向いていると思いますけれど…あと怖かったらなんでも言ってください。そういった荒事への対処には慣れておりますので相談に乗れると思います」
「…わかったわ。ありがとう」
まぁこうして後から抱きしめられて頭撫でられてるだけで落ち着いてきたわよ。
というかルーナがそんな危ない仕事をしている女だとは知らなかったわ…




