夢の後輩
ランチが始まり、リラとイリスと三人で注文をとることになった。
ユリは厨房から出ないらしい。
「黒猫様、あの人は誰ですか?」
「イリスにゃ。今日から働くにゃ」
「黒猫様、部下ができましたね」
「部下にゃ?・・・」
部下になるのかなぁ?
ポンコツじゃないと良いなぁ。
リラも同じように聞かれているようで、母だと答えていた。
4人テーブルでイリスが注文を聞くようだ。
少し心配で耳を傾けていた。
なんと、イリスは実は優秀だったらしい。
一度で覚え、まとめていた。
しかも最後に微笑み、客も安心したらしい。
イリスが4人テーブル1つ、私が4人テーブルと2人テーブル一つずつ、リラが2人テーブルと、カウンター3人を聞いた。
「オムライス2、カレー2、フルセット2、フルフルセット2です」
「オムライス2、カレー4、フルフルセット6にゃ」
「オムライス2、カレー3、フルフルセット5です。私がまとめます」
リラは注文を通すと、そのまま厨房にいくらしい。
「オムライス6、カレー9です」
「オムライス6、カレー9了解です」
ユリが返事をして注文が通ったので、その他のものを出すためイリスと手分けした。
「お茶、冷茶、サラダ、パイ、黒猫クッキー、ケーキの順にだしてにゃ」
「はい」
イリスが一度で理解して、特に聞かれることなくケーキまで出し終わり、厨房の方が忙しいみたいなので、カレーをよそってイリスと運んだ。
「オムライスできましたー。お願いしまーす」
ユリに呼ばれたので取りに行き、運んだ。
一緒にお店を見ていて驚いたのは、お客がお茶のおかわりを言い出す前に、イリスがヤカンを既に持って客のそばにいたことだ。
湯飲みの中身まで見えるの?透視?・・・あ、身長か!
それにしても、物凄く有能だ。
そのうち客が帰り始め、私は片付けと凍結グラタンを買う客にグラタンを持ってきていた。
4人テーブルひとつ、2人テーブル2つが帰って入れ替わった。
イリスは一人で全て注文を聞き、私に告げてきた。
「オムライス3、カレー5、フルフルセット8です」
「注文を厨房へ通すと良いにゃ。お茶と冷茶とサラダを出しておくにゃ」
「はい。注文を通します」
イリスが注文を通すので、私は先にお茶と冷茶とサラダを用意することにした。
「オムライス3、カレー5です」
「オムライス3、カレー5了解です!」
イリスがパイとクッキーとケーキを用意して運んできた。
カレーを用意しようと思ったら、リラが作ってカウンターの前まで持ってきてくれていた。
それを運ぶ頃には全席入れ替わり、新しく注文を聞いた。
「オムライス1、カレー3、フルセット4にゃ!」
「オムライス3、フルセット3です」
「私が注文を通しておくにゃ」
「はい」
イリスはお茶と冷茶とサラダを用意し出した。
「オムライス4、カレー3にゃ!」
「オムライス4、カレー3了解です!」
パイとケーキを用意し、カレーをよそって、出し終わる頃にオムライスができて、全てを出すとイリスが聞いてきた。
「ユメちゃん、いつもこんな感じですか?」
「いつもは人手がたりないから、プレートに全部乗せてから運んでたにゃ」
「成る程、それだと全部出来上がるまで食べられないのですね」
「ユリは来店する客全てに提供したいらしいにゃ」
「4人テーブルに、椅子を増やしたらダメなのですか?あのテーブルはかなり広いので、充分座れますし」
「他は知らないけどにゃ、普通は、知らない人は同席しないにゃ」
「そうですね」
「この店は、席が少ないから、空いた順に、同席して座るにゃ」
「え?そうなのですか!?」
「貴族と平民が同席する不思議な店なのにゃ」
「では、一緒に注文とってはダメな場合があるのですね」
「初めて来る客はそうかもしれないにゃ」
「その辺は教えてくださいね」
「わかったにゃ」
客が入れ替わると、一人で来た人や、同席で座る人が増えてきた。
そういう客は、注文を決めるタイミングがバラバラになってくる。
「黒猫様、オムライスとケーキセットください」
「私も同じで」
「お茶は温かいのと冷たいのがあるにゃ」
「私は温かいので」
「私は冷たいのを貰おうかな」
「オムライス2つ、ケーキ2つ、お茶と冷茶にゃ。持ってくるにゃ」
他はまだ決まらないらしいので、注文を通した。
「オムライス2にゃ」
「オムライス2、了解です!」
イリスの方は、客が悩んでいるらしく色々聞かれていた。
「今日のデザートのショートケーキって、どんなデザートですか?」
「生クリームたっぷりで、美味しいフルーツが挟まっていて、四角いお菓子です」
「いまいちわからないけど、美味しそうだ。それを頼むよ」
「ケーキセットでよろしいですか?」
「ああ」
「バターチキンカレーとケーキセットですね。お茶は温かい物と冷たいものがございます。どちらになさいますか?」
「おすすめは?」
「冷たいお茶です。個人的にですが」
「ならそれで」
「ではお持ちします」
イリスは何も教えなくても、特に困ることなく仕事をしていた。
今までのポンコツぶりが嘘みたいだ。
時間的に最後の客の注文を出し終わった頃、ユリが店に顔を出した。
ユリがイリスに何か話しかけると、イリスはニコニコして厨房へ行ってしまった。
そんなイリスを見送っているとユリが話しかけてきた。
「ユメちゃん、お疲れさま。今日は全部頼っちゃってごめんね。大変だったでしょ?」
「イリスが予想外に有能で楽だったにゃ。今までのあのポンコツぶりはなんだったのにゃ。レギュムが、『仕事はできる』と言ったのがよくわかったにゃ」
「あ、そんなになのね」
ユリは知っていた上で納得した感じだった。
まあ、注文を通したり運んだりを見ていれば、優秀であることはわかっていたのだろうし。
空いたテーブルの食器をユリと一緒に下げ、最後の客が帰るまで私は店で待っていた。
食べ終わった客は、すぐに支払いをして帰っていった。その食器を下げると、既にオムライスができていて、ソウも帰ってきていた。
このオムライスは、ほとんどリラが作ったらしい。マーレイとイリスが、涙目になりながら食べているのが印象的だった。
先に食べ終わったユリとリラは、厨房に何かを取りに行った。
「紅茶のシフォンケーキよ。ソウは二つね」
「お、サンキュー!」
「おもしろいケーキにゃ」
生クリームがたっぷりかけてある。
「ユリ様、もうひとつの方はどうするのですか?」
「味見のために食べたいなら食べて良いわよ。今食べないなら夕飯の時に食べるけど」
「お客に説明できるように今食べるにゃ!」
「それもそうね。今食べる人ー」
全員、手をあげていた。
ソウは3個目だけどまだ食べるの?
「じゃあ今度は、ユメちゃんとイリスさんに手伝ってもらおうかしら」
そうか、さっきはリラに説明するためだったのか。
ユリが出してきたケーキは、中が桃色できれいだった。オレンジの香りがする。
オレンジピールと紫芋の粉が入っているシフォンケーキだといっていた。
「切っておくから、皿にのせたら霧吹きをして、レードルで1杯この緩い生クリームをかけて出してね。はい、みんなの分を作ってみて」
言われた通り作ってみた。
難しいことはなく、皿にのせて霧吹きして生クリームをかけるだけなのですぐに出来上がった。
イリスも手早く作っていた。
「ソウ、足りなければもうひとつ食べても良いわよ。あと、ショートケーキもあるわ」
ユリはソウにどれだけケーキを食べさせるつもりなんだろう?
5個?さすがに無理なんじゃないかなぁ?
シフォンケーキはどちらも美味しかった。
でも、また食べたいのは、オレンジピールの方だなぁと思った。
ユリがみんなに聞くと、回答が男女に別れた。
この桃色が素敵なのに、ソウは桃色がショッキングだと言っていた。
そもそも、紅茶のシフォンケーキは、ソウが食べたいと言ったから作ったらしい。




