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クロネコのユメ  作者: 葉山麻代
◇私はユメ◇

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夢の主張

今日も早く起きることができた!

この時間ならまだリラが仕事を始めていないはず。

急いで階段を降りて厨房に顔を出すと、リラが座っているのが見えた。


「おはようにゃ。何でイリスが居るにゃ!」


リラだけでなく、イリスまでいた!


「ユメちゃん、おはようございます。見学です」

「ユメちゃん、おはようございます。お母さんついてきちゃいました」


ついてきたって、リラとイリス、どっちが保護者なんだ・・・。


「おはよう。ユメちゃん、ケーキ食べる?」

「ユリ、ありがとにゃ」


ユリが差し出したケーキを受け取り食べることにした。

桃とキウイフルーツが入っているのか。ところで、何で四角いケーキなんだろう?

丸い型が足りないのが主な理由である。

7号なら10切りで20台以上、5号なら6切りで30台以上必要だ。


私が食べている間、ユリはリラに仕事の指示をしていた。

イリスはおとなしく聞いているので、確かに見学なのかもしれない。


「何すれば良いにゃ?」

「ユメちゃん、もう始めるの?」

「起きてるから仕事するのにゃ」

「ユメちゃんって、ワーカーホリック?」

「仕事中毒にゃ? ユリよりは仕事してないにゃ!」


ユリより仕事をして居る人はいないじゃないか。

朝早くから、みんなが帰ったあとまでいつも何かしている。


単語に疑問を持ったリラが聞いていた。


「ワーカーホリックって、仕事中毒って意味なんですか?」

「まあ、そうね」

Sの日(おひさまのひ)にイクラを食べに来た人が、『ハナノさんって、ワーカーホリック?』って言っていたんですけど、意味がわからなくて」


焼肉屋か、ラーメン屋か、外から来る人にまでそう見えてるのか。まさか自覚がなかったなんて。


「そうにゃ、仕事中毒は、ユリのほうにゃ」


「私は常日頃休みたいと思ってるけど、仕事が多すぎて終わらないから、責任をもって仕事しているだけよー」

「多すぎる仕事に困ったとき、仕事を減らさず、仕事をする人を増やす辺りが、(れっき)としたワーカーホリックにゃ!」

「ガーン・・・」


「ユリは、私やリラにしっかり休めといつも言うけど、本当に休んでほしかったら、まずユリがしっかり休むべきにゃ!」


「だから、休めるように給仕の人を雇いたいって・・・今ですら、食べに来た人全員には提供できていないのに、仕事を減らすのは無理があると言うか・・・」


その考えが、すでに無理なのがわかっていないのか。


「ユリの理想は何人で仕事するのにゃ?」

「厨房で3人、店に2~3人」

「もしその人数が揃ったらどうなるにゃ?」

「もう少し早く開店して・・・あ!」

「ワーカーホリックは、ユリにゃ」

「うー・・・」


「ユリ様って、素晴らしい経営者なんですね。使用人より働く主人なんて、滅多にいませんし、こんなにも素晴らしい職場は他にありませんね」


イリスがユリを誉めていた。商家に育った者の見方なのだろう。


「こんにちはー・・・イリス!何でこんな時間から居るんだ?」


納品に来たマーレイも驚いていた。

ユリは納品されたものを確認にいってしまったので、急いでケーキを食べて片付けた。


「ユリ、何したら良いにゃ?」

「クロ猫ッカンと黒猫クッキー作れる?」


クロッカンは作れるけど、黒猫クッキーは、全部は作ったことがない。


「無理だったら言うにゃ」

「お願いしまーす」


ユリが仕事を振り分けるつもりなら頑張ろう。


「ユメ様、お手伝いいたします」

「ありがとにゃ」


マーレイが手伝ってくれるらしい。


「型を用意したら、クルミとアーモンドを切ってほしいにゃ」

「かしこまりました」


一緒にクロッカンに使う型を用意して、私は使って良いパイ生地を切り始めた。

一度に全部作ると、生地も柔らかくなってしまうし、ナッツも沈んでしまうので、25個ずつ4回に分けて作った。

猫の飾りに使う生地を薄く伸ばしていると、マーレイが塗りたまを用意してくれた。

卵を塗ったものからマーレイが冷蔵庫にしまってくれた。


黒いクッキー生地と、青いクッキー生地を出してきて、黒いクッキー生地を大きい猫型で抜いた。

瞳を青い生地で作って黒猫クッキーを作った。

リラの華を作るのと、作り方は変わらないので、予想ほどは難しくなかった。


「ユメちゃん、どこまで終わった?」

「クロッカンと、黒猫クッキーが途中にゃ」

「黒猫クッキー終わらせたら、こちら手伝ってください」

「わかったにゃ」


クロッカンは明日焼く分なので冷蔵庫にしまったが、黒猫クッキーは、今日焼く分なので、マーレイはおいておく場所に悩んでいるようだった。


「マーレイさん、黒猫クッキーもそのまま冷蔵庫にお願いします」


今、釜にはユリが芋を入れているので、あとで焼くのだろう。

あの芋は何になるのかな?


クッキーを終わらせたので、ユリにどうするか聞きに行った。


「ユメちゃん、鳥モモ肉23枚を、包丁かキッチン鋏で、小さめにカットしてください」

「わかったにゃ」

「マーレイさん、玉ねぎ23個を薄切りにしてください」

「かしこまりました」


切った鶏肉をボールに入れていると、マーレイの切っている玉ねぎが目に染みた。

そういえば、マーレイもユリと同じで、平気そうに切っている。なんでだろう?


「ユメちゃん、おわん6個に、卵3個ずつ割り入れてください。

リラちゃん、手が空いたらリラの華おねがいします。

マーレイさん、トマト缶12缶開けてもらえますか?」


全部切り終わる前に、ユリが次の指示を出してきた。珍しい。

切り終わった鶏肉を全部ユリに渡し、おわんに卵を割ってコンロのそばに用意した。


「マーレイさんは、これを食べて少し休憩してください」


ユリがマーレイにショートケーキを渡すと、イリスが冷茶を持ってきていた。

一人ケーキを渡されたマーレイが困っているように見えた。


「他のみんなはさっき食べたにゃ」


教えると、ホッとしたように見えた。


「他のケーキもあるから今食べちゃった方が良いわよ」

「はい。ありがとうございます」


「ユメちゃんも少し休憩してね」


イリスが、お茶を出してくれた。


「ありがとにゃ」


ユリは大きなボールで、ごはんと何かを混ぜていた。

あれはオムライスの中身かな?


「ランチ、始まるわよ! リラちゃん、ユメちゃん、イリスさんの補助をしてね」

「はい!」「任せるのにゃ!」

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