夢の主張
今日も早く起きることができた!
この時間ならまだリラが仕事を始めていないはず。
急いで階段を降りて厨房に顔を出すと、リラが座っているのが見えた。
「おはようにゃ。何でイリスが居るにゃ!」
リラだけでなく、イリスまでいた!
「ユメちゃん、おはようございます。見学です」
「ユメちゃん、おはようございます。お母さんついてきちゃいました」
ついてきたって、リラとイリス、どっちが保護者なんだ・・・。
「おはよう。ユメちゃん、ケーキ食べる?」
「ユリ、ありがとにゃ」
ユリが差し出したケーキを受け取り食べることにした。
桃とキウイフルーツが入っているのか。ところで、何で四角いケーキなんだろう?
丸い型が足りないのが主な理由である。
7号なら10切りで20台以上、5号なら6切りで30台以上必要だ。
私が食べている間、ユリはリラに仕事の指示をしていた。
イリスはおとなしく聞いているので、確かに見学なのかもしれない。
「何すれば良いにゃ?」
「ユメちゃん、もう始めるの?」
「起きてるから仕事するのにゃ」
「ユメちゃんって、ワーカーホリック?」
「仕事中毒にゃ? ユリよりは仕事してないにゃ!」
ユリより仕事をして居る人はいないじゃないか。
朝早くから、みんなが帰ったあとまでいつも何かしている。
単語に疑問を持ったリラが聞いていた。
「ワーカーホリックって、仕事中毒って意味なんですか?」
「まあ、そうね」
「Sの日にイクラを食べに来た人が、『ハナノさんって、ワーカーホリック?』って言っていたんですけど、意味がわからなくて」
焼肉屋か、ラーメン屋か、外から来る人にまでそう見えてるのか。まさか自覚がなかったなんて。
「そうにゃ、仕事中毒は、ユリのほうにゃ」
「私は常日頃休みたいと思ってるけど、仕事が多すぎて終わらないから、責任をもって仕事しているだけよー」
「多すぎる仕事に困ったとき、仕事を減らさず、仕事をする人を増やす辺りが、歴としたワーカーホリックにゃ!」
「ガーン・・・」
「ユリは、私やリラにしっかり休めといつも言うけど、本当に休んでほしかったら、まずユリがしっかり休むべきにゃ!」
「だから、休めるように給仕の人を雇いたいって・・・今ですら、食べに来た人全員には提供できていないのに、仕事を減らすのは無理があると言うか・・・」
その考えが、すでに無理なのがわかっていないのか。
「ユリの理想は何人で仕事するのにゃ?」
「厨房で3人、店に2~3人」
「もしその人数が揃ったらどうなるにゃ?」
「もう少し早く開店して・・・あ!」
「ワーカーホリックは、ユリにゃ」
「うー・・・」
「ユリ様って、素晴らしい経営者なんですね。使用人より働く主人なんて、滅多にいませんし、こんなにも素晴らしい職場は他にありませんね」
イリスがユリを誉めていた。商家に育った者の見方なのだろう。
「こんにちはー・・・イリス!何でこんな時間から居るんだ?」
納品に来たマーレイも驚いていた。
ユリは納品されたものを確認にいってしまったので、急いでケーキを食べて片付けた。
「ユリ、何したら良いにゃ?」
「クロ猫ッカンと黒猫クッキー作れる?」
クロッカンは作れるけど、黒猫クッキーは、全部は作ったことがない。
「無理だったら言うにゃ」
「お願いしまーす」
ユリが仕事を振り分けるつもりなら頑張ろう。
「ユメ様、お手伝いいたします」
「ありがとにゃ」
マーレイが手伝ってくれるらしい。
「型を用意したら、クルミとアーモンドを切ってほしいにゃ」
「かしこまりました」
一緒にクロッカンに使う型を用意して、私は使って良いパイ生地を切り始めた。
一度に全部作ると、生地も柔らかくなってしまうし、ナッツも沈んでしまうので、25個ずつ4回に分けて作った。
猫の飾りに使う生地を薄く伸ばしていると、マーレイが塗りたまを用意してくれた。
卵を塗ったものからマーレイが冷蔵庫にしまってくれた。
黒いクッキー生地と、青いクッキー生地を出してきて、黒いクッキー生地を大きい猫型で抜いた。
瞳を青い生地で作って黒猫クッキーを作った。
リラの華を作るのと、作り方は変わらないので、予想ほどは難しくなかった。
「ユメちゃん、どこまで終わった?」
「クロッカンと、黒猫クッキーが途中にゃ」
「黒猫クッキー終わらせたら、こちら手伝ってください」
「わかったにゃ」
クロッカンは明日焼く分なので冷蔵庫にしまったが、黒猫クッキーは、今日焼く分なので、マーレイはおいておく場所に悩んでいるようだった。
「マーレイさん、黒猫クッキーもそのまま冷蔵庫にお願いします」
今、釜にはユリが芋を入れているので、あとで焼くのだろう。
あの芋は何になるのかな?
クッキーを終わらせたので、ユリにどうするか聞きに行った。
「ユメちゃん、鳥モモ肉23枚を、包丁かキッチン鋏で、小さめにカットしてください」
「わかったにゃ」
「マーレイさん、玉ねぎ23個を薄切りにしてください」
「かしこまりました」
切った鶏肉をボールに入れていると、マーレイの切っている玉ねぎが目に染みた。
そういえば、マーレイもユリと同じで、平気そうに切っている。なんでだろう?
「ユメちゃん、おわん6個に、卵3個ずつ割り入れてください。
リラちゃん、手が空いたらリラの華おねがいします。
マーレイさん、トマト缶12缶開けてもらえますか?」
全部切り終わる前に、ユリが次の指示を出してきた。珍しい。
切り終わった鶏肉を全部ユリに渡し、おわんに卵を割ってコンロのそばに用意した。
「マーレイさんは、これを食べて少し休憩してください」
ユリがマーレイにショートケーキを渡すと、イリスが冷茶を持ってきていた。
一人ケーキを渡されたマーレイが困っているように見えた。
「他のみんなはさっき食べたにゃ」
教えると、ホッとしたように見えた。
「他のケーキもあるから今食べちゃった方が良いわよ」
「はい。ありがとうございます」
「ユメちゃんも少し休憩してね」
イリスが、お茶を出してくれた。
「ありがとにゃ」
ユリは大きなボールで、ごはんと何かを混ぜていた。
あれはオムライスの中身かな?
「ランチ、始まるわよ! リラちゃん、ユメちゃん、イリスさんの補助をしてね」
「はい!」「任せるのにゃ!」




