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第6章03話

第6章03話


 大ナマズさんから呼び出しが来たので行ってみると松木の神様も居た。


「どうしました? 神社建設で何か?」


「違う違う。坊主の追放を御屋形様が宣言した事でな、儂と松木さんの所に相談して来るのが増えているのだ」


「どんな相談?」


「一目坊主、青坊主、白坊主、赤坊主ついでにカッパまで自分達が追放にならないかと心配しておる」


「あれは一神教の坊主で、他の神様達や精霊、妖怪を否定するので追放したんですよ。決して名前に坊主が入っているからとか毛が無いからと言う訳では無いです。

 皆さんからも良く伝えてやって下さいよ」


「ホレ松木よ、儂の言った通りだったろうが」


 神様と生神様でブツブツ言っている。


「わかんない時は依能さんに聞いても分かるから」


「実は、もう1つ頼みがあってな……」


 松木の神様が話し辛そうにしている。


「うちの3匹が居るだろう」


「あのモモンガみたいな生意気な奴等?」


「それそれ。あいつらが頼まれて来たのだが、鬼熊が移住したいと言って来ておる」


「鬼熊って凶暴じゃなかった?」


「ここの鬼熊はデカいだけで優しいぞ」


 大ナマズさんが応える。


「評判と違うね」


「それで鬼熊も困っておる」


「儂もあの鬼熊が迷惑を掛ける妖怪では無いことは保証するぞ」


 大ナマズさんが胸を張っている。ナンカ話が違う。鬼熊は妖怪でも有名処過ぎる。


「依能さんと相談するよ」


「あの綺麗な精霊さんだな」


「ここの偉い人が連れている精霊の方が美人だ」


 大ナマズさんの一言にドキリとする。見える筈が無いのだが。


「御屋形様は滝の裏に池が有るのは知っているな」


「……知っているよ」


「あの池の水面は真実の鏡と同じ働きをする」


 大ナマズさんがニヤリとした感じがした。


『チッ』


 水美が苦笑いをして舌打ちしている。


「儂は他では話さんよ。知ると怒るかも知れん人達も居るかも知れんからなぁ。例えば奥さんとか奥さんとか。余りに美人過ぎる精霊だとなぁ」


「……鬼熊さんを受け入れれば良いの?」


「いや、儂は脅している訳ではないからなぁ」


「大ナマズさんズルいよ」


 俺が依能さんに連絡して鬼熊さんの受け入れを進め始めると松木の神様と大ナマズさんが嬉しそうにしていた。


「でも哲司殿が精霊使いという事は、神達や妖怪では公然の秘密になっている事を知った方が良いよ。皆、見た事は無いがな」


 松木の神様が教えてくれた。


「儂も見たとは言っておらん」


 何百年も生きているとナマズもずるくなる。


「哲司殿。鬼熊を引き受けるんですって?」


「……うん、なんとなく」


 依能さんが笑っている。


「あの気弱な鬼熊さんは見つかるのかな?」


「今、案内役を呼んだ」


 松木の神様が手配をしてくれている。


「哲司、ナンカ用か?」


「何か食わせろ』


「依能は良いケツをしているな」


 大福を配ってやると大人しく並んで食べている。


「アンタら、鬼熊の居場所知っているの」


 依能さんが聞いているが、大福を食べ終えるまで返事をする筈が無い。


「鬼熊は松木神社に居るぞ」


 食べ終わった1匹が教えてきた。


 急いで依能さんと松木神社に行くと賽銭箱の前にチョコンと座っている超大型の熊さんと30匹くらいの小物達が居た。俺達を見て逃げようとしている。


「鬼熊、逃げるな!」


 依能さんの大声にビクビクしている。


「俺を討伐に来たのか?」


「違いますよ。松木の神様と大ナマズさんに頼まれて保護に来ました」


「私は鬼熊さん担当の豊饒の精霊だ」


 鬼熊さんがホッとしている。


「俺は河瀬哲司。怖がらなくても良いよ」


「アンタが御屋形様かね。松木の神様に聞いているよ」


「どうしたの? 誰かに狙われているの」


「そういう訳じゃ無くて……松木の神様も小物達も居なくなってしまってな、寂しくて……ここいらには俺しか居ないみたいなものなんだよ」


 これが気弱な鬼熊さんの本性か。


「小物達は、まだ沢山残っている筈だよ」


 鬼熊さんが首を横に振っている。


「村人や兵士に狩られたり逃走してな、俺が残ったこいつらを保護しているんだよ」


 話している鬼熊さんを見ると、一寸目は怖いが確かに熊が良さそうと言うか良い熊相をしている。


「ここだと牛鬼も出るしね」


「牛鬼は俺が退治した。心配無い」


 鬼熊さんは相当強い事は確かだ。


「哲司さん、取り敢えず全員を水郷境に運びましょう」


 依能さんと一緒に全員を水郷境に運んだ。松木の神様と再会して皆さん喜んでいるようだ。

 タマ三郎さんも現れ居住場所の相談を依能さんとしている。


「取り敢えず鬼熊さんは松木神社の境内にでも住んで貰って、環境に慣れてから山なり森なりに移動して貰ったら?」


「境内にですか?」


 タマ三郎さんが心配そうだ。


「鬼熊さんが大人しいのを住民にも知って貰う必要も有ると思うよ。もう少しで本殿建設も終わるから一寸我慢して貰って」


「そうですね。慣れるまで餌集めも大変ですし、私は賛成です」


「私もそうして貰えれば鬼熊さんが慣れるのにも協力出来ると思う」


 松木の神様もそう言っているので、話が決まった。連れて来た小物達は近所の妖怪などに付いて行き、全員居なくなっている。


「御屋形様、騒がして済まんかつたな」


 大ナマズさんが礼を言って来た。


「大ナマズさん、内緒ですよ」


「分かっておる」


 ニヤニヤしている大ナマズさんと別れて、知世さんと善姫さんを連れて昼食にウナギ屋さんに行った。




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