第6章02話
第6章02話
『哲司、これ持っていると良いぞ』
俺が起きてボケーッとしていると、戦利品の数珠を整理していた水美が、とでも細い数珠をくれた。
『何? これ』
『これは《妖力妖術封じ除け》だ。2種類の効力なのに相当強い力を持っている。哲司は対妖術が相当強いがこれを付けていれば、人間相手ならまず大丈夫だぞ』
喜んで左手に付けておいた。
術封じを掛けられたのは、この世界に来たばかりの頃に1度あるだけだった。それから強くなって、なんとか跳ね返していたのだが安全策を水美が勧めてくれたので素直に従う。
世の中12月になり忙しそうだから、出来るだけダラダラ生活は水の里でやっている。
『知世は朝6時くらいまで寝ている筈だから、こっちでまだ20時間くらいは使えるぞ』
実は知世さんにまた意識不明にされて、水美が助け出してくれたので、現在は睡眠タップリなのだ。
予想通り旦火の国は身動きが取れないらしく、まだ笹美の国に攻め入ってないが増兵中の噂は聞こえて来ている。
『哲司、何を考えている?』
『旦火の国の事だよ。笹美の国が一神教国になると面倒だなと思って』
『そうだな。奴等は精霊も否定するから妾もウザイとは思っている』
『彼奴は一般の人達が見えない物は全て否定だからね』
『水神と山の神に逆らえば国は滅びるのだが、宗教の連中は構わずやっている』
『旦火の国が身動き取れないなら平和だよ』
水美がニヤニヤしている。
『毎度で新鮮味が無いが旦火城を貧乏にしておくか』
『また屋根から吸い上げ?』
『あれと水止めが一番効く』
時間稼ぎには確かに良い手だ。善は急げですぐに行く事になった。
『旦火の国は夜中の3時くらいかな』
『何時でも構わん。金持ちと聞いているから皮袋を沢山持たないとな』
水美は俺に皮袋を大量に渡して来た。俺は省妖力の為に飛行と透明化の数珠を付けて旦火城に飛んだ。
旦火城は雪だった。俺と水美は屋根に乗らずに少し浮いたまま両手を繋ぐ。
そのまま集中していると水美が術を発動した。
『『術解除』』
効いたと思ったが水美が続ける。
『『術解除』』
『『術解除』』
『『収集』』
『『収集』』
『『収集』』
懐から皮袋が転げ落ちそうになるくらい集まった。
屋根の下から、術封じらしいのが今更ながら飛んで来た。全て跳ね返している。
水美が飛翔を唱えて水の里に帰って来た。
『凄いよ、懐からこぼれ落ちるよ』
『妾もだ。銀貨も集めたからな』
どおりで沢山有る筈だ。
『金貨が11袋半、銀貨が56袋だ』
『凄く金持ちの国だね』
『だから戦争したがるのだ』
水の里の床の間が金貨で埋まって来ている。前回から銀貨も集めたので銀貨は凄く沢山有るが、もう1度皮袋に入れて1袋になっている。
『銀貨まで置いておくと床の間が凄い事になってしまう』
銀貨は水美が大銀貨と銀貨に分類してくれているので、最近の着物代や飲食は全て銀貨払いにしているのだが一向に減らない。
銅貨で苦労していた知世さんの気持ちが分かって来た。
『哲司はまた金持ちになったな』
『使い道が無いよ』
『水神や嫁に着物や履き物を配り続けろ』
『増兵費用の一部が着物じゃ可哀想だな』
『戦力増強の為に大店から集めた金らしいから、これから見ものだな』
『暫く旦火城が大人しくしてくれれば、それで満足だよ』
俺は透明と飛行の数珠を外して、自分の財布にしまった。
『妖力妖術封じ除けを付けてたのは当たりだったな』
『あれは役に立ったと思う。水美のお陰で助かっているよ』
俺が妖力妖術封じ除け数珠を付けたままなのを見て、水美が満足そうにしていた。
屋敷に帰って朝食後、知世さんと善姫さんと俺で朝風呂を楽しんでいると水神様から連絡が入った。
『済まんが来てくれぬか』
『今、風呂なんで服着る時間が掛かりますが』
『済まんな。出来るだけ早くで良いから』
仕方無いので行く事にした。
「済まない。笹美城の善秀が会談を申し込んで来たのだ」
水神様が慌てていて、天狗さんがウンザリした顔をしている。
「善秀って、善姫さんの兄貴でしたっけ」
「そうだな。笹美城の後継ぎだ」
「で、水神様は受けたのですか?」
「返事はしておらん」
「まず、水郷城としては無理に話し合う必要が無いのです。次に会談ではなく水神様は神様なんですから、謁見を申し込んで来るべきでしょう」
「……それもそうだな」
「水神様がそれを言うのも変だから、俺が返事しておくよ」
天狗さんが引き受けてくれた。
「先に言っときますけど、喧嘩売って来たのは笹美城ですからね。詫びを入れに来るなら良いですけど、こちらに譲歩する理由は無いですよ」
「……哲司殿の言う通りだと思う」
なら 水神様が下を向いている。
「現状だって神様に喧嘩売った結果ですから、最低でもキチンと詫びて、水郷境と水郷城の完全自治。笹美の国の人間至上主義を止め一神教の排斥くらいしないと話す必要も無いのです」
「それは俺が言っておくよ」
「水神様も甘いのです。笹美の国の方針をキチンと理解してからじゃないと、謁見する理由が有りません。旦火の国や樫の国のように一神教国で坊主だらけの国と話す必要が無いのです。
水神様は自分が否定されているか無視されている事をしっかり認識して下さい」
「そうだな、そこをあやふやにしているから笹美城の前領主みたいに神に要求したり対等に考えたりする馬鹿が現れたと俺も思う」
天狗さんも今日は容赦ない。
「……済まん。言う通りだ」
「水神様、豊饒の精霊が揃っている国に逆らうなら、国を滅ぼす覚悟が要る事を知るべきだと思いますよ」
表向き、水の精霊と風の精霊は内緒になっているので抜いておいた。
水神様が都合が悪くなったので話題を変えて来た。
「早朝から旦火の国と吾蔵の国が険悪化しているらしいぞ」
「吾蔵の国?」
「哲司は知らんか。吾蔵の国は旦火の国の隣りだ。多神教で陰陽師を沢山抱えている。旦火の国が一神教で坊主だらけで僧兵も居るのと対照的なのだ」
『昨夜の泥棒は吾蔵の国と思われたな』
水美が笑っている。
『そのまま揉めていて欲しいな』
『旦火の国と水郷城では、離れているし付き合いも無い。近い国を疑り水郷城の名前すら上がらんだろう』
「水郷城に関係無いですよ。離れ過ぎてます。戦争でも何でも好きにさせておきましょう」
「善秀との話は哲司殿は参加しないのか?」
「だって善姫さんの兄貴ですよ。俺は参加しない方が良くないです? 不快だから話したくも無いですけど」
後は水神様と天狗さんに任せて善姫さんと光の精霊の治療に行った。




