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第6章01話

第6章01話


 天狗さんと会って数日経つた頃、水神様から招集がかかった。


「水神様に呼び出されたので俺は行きますけど、善姫さんも帰ります?」


「帰ります。此処に5日以上は退屈ですよ」


 こっちに居ると町並みからして退屈になる。


「ですよね。今回は中止という事で」


「賛成です。美味しい物も食べたいですよね」


 晩御飯もまだだったのでちょうど良かった。


 今回で善姫さんも大分良くなったようだ。明るくなったようだし、こちらに居ても天狗さんなんかに会うと服を着るようになった。


「とにかく水郷城に行きましょう」


 2人で水郷城に飛んだ。水郷城は昼前だった。


「私は知世さんと宣姫さんに会います」


 俺は謁見の間に行った。


「哲司殿、探索中に済まんな」


「何か起きました?」


「笹美城の領主が死んだようだ」


「あらら。面倒な事態は嫌ですね」


「なのだ。私はどうしたら良いかのう」


「無視しか無いでしょう」


「無視か?」


「水神様ね、自分が神である事を忘れたら駄目ですよ。笹美城とは半分戦争状態ですし、仕掛けて来たのは向こうです。ドーンと構えて、笹美城が土下座でもして来るまで何もしたら駄目です」


「水量もあのままか?」


「水神様はもっと減らしたいです?」


「そうでは無くて、香典変わりに少し雨を振らせるとか……」


「そんな事したら、あの馬鹿息子が図に乗るだけの可能性が高いです」


「それもそうだな」


「水神様。無視です。無視。あの国は神を舐めている」


「……そ、そうだな」


 水神様が馬鹿な考えを止めてくれたようだ。


「旦火のたんびのくにが笹美の国を狙っていると聞こえて来ているぞ」


「如何にも危なそうな名前の国ですね。何処の国です?」


「哲司殿は迷い人だから知らないか。笹美の国の隣国で日進の国統一を目指している大国だ。あちこちと喧嘩しておる。

 あそこはちょうど反対側だから水郷城とは相当離れている。旦火城の城下は華やからしいぞ」


「面倒ですね。笹美の国に攻めて来たら俺が止めますけど。その時は水も止めて下さいね」


「裏切りはせん。任せろ」


 一応の同意が取れたようだ。不安になるとオロオロして優柔不断になる。神様らしく無い。


「哲司殿が天狗の所の下品な女を追い出してくれたようだな。礼を言うぞ」


「俺が追い出した訳じゃ無いですよ。何処も指名手配食らっていると聞いたのでヤマコの国で家渡して手切れ金を払えばと言っただけです」


「それで天狗が実行したから、やはり哲司殿の手柄だな。ところで,あそこはヤマコの国と言うのか?」


「本当の名を知らないので、俺が勝手にヤマコの国とかヤマコの里とか呼んでいるだけですよ」


「そうか。確かに呼び名が無いと不便だからな。私はヤマコの里にするか。天狗が飛ばされていた世界はなんと呼んでいる」


「余り用の無い世界なので決めてません」


天狗郷てんぐきょうでどうだ」


「天狗の里と間違わなければ良いですけど」


「とりあえず私と哲司殿が話す時はそうせぬか? あの世界にまた追放する場合も出て来るだろう」


「そうですね。では、そうしましょう」


 簡単、無責任に決めてしまった。


「哲司殿はこれから戻るのか?」


「まずは飯でも食べて考えますよ。寿司屋に行こうと思ってますが水神様も行きます?」


「行くぞ!」


「荷物を屋敷に置いて、着替えたらすぐ行きますよ。寿司屋で会いましょう」


「汚い所から帰って来たのだ。風呂でも使ってから来ると良いぞ」


 別に屋敷に用は無かったのだが、宣姫さんと知世さんが依能さんなんかを集める時間を作ってあげただけだ。


 屋敷に帰ったら知世さんと善姫さんも来た。


「旦那様。ご苦労様でした」


「こっちの時間では3日経つて無いけどね」


 知世さんに思い切りキスして貰った。


「本来なら私が、お風呂にお入れしなくてはならないのですが、まだ不浄の期間なもので」


「気にしないで良いよ」


「善姫さんに旦那様を任せて、依能さんを呼びに行きます」


「良かったらヤヤさんとスミさんも呼んだら」


「そうします」


 知世さんが飛んで行った。


「今回は重いようですよ。水神様と依能さんが見てくれているようですが」


 善姫さんが心配そうにしている。あの2人が治療しているなら心配無い。


「我々は風呂に入ろうよ」


 善姫さんと3階の風呂に入って夫婦仲を良くしてから、汚れ物を全部脱衣場に置き新しいのを着た。

 ヤヤさん洗い物ばかりでゴメンナサイ。


「さて寿司屋に行こう」


 寿司屋に行くと全員揃って始めていた。天狗さんも居たので隣に座った。


「天狗さん旦火城に行ける?」


「行けるぞ。中では透明化しないと騒ぎになるが」


「また、人族至上主義?」


「そうだな。ついでに一神教の世界で坊主だらけだぞ」


「水神様の敵だね」


「樫の国と同じ宗教だけど宗派が違うようだ。同じなのは何処とでも喧嘩腰な所かな」


「旦火城は笹美の国に攻め入ると思う?」


「待ってましたとばかりに旦火の国が周囲から攻め込まれるんじゃないかな。敵が多いからな、笹美の国に攻め入るなら、余程兵を増やさないと自分達が滅ぼされる」


「獸人や妖怪は」


「もう何十年も弾圧しているので、多くは逃げてしまった後らしいぞ」


 なんか凄い国だなと思う。


「地元の神様達は?」


「祠や神社は潰して、寺を作りまくっているようだぞ」


「今度、連れて行ってよ」


「面倒だから今、行こう」


 俺と天狗さんは透明化して旦火城の城下町に行き、すぐに戻って来た。


『哲司、明日にでもゆっくり見に行こう』


『そうだね』


 水美が楽しみにしていた。



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