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第5章12話

第5章12話


 松木神社の移転先が決まったのは一週間後だった。


「皆がお詣りして、祭りなどを考えて大ナマズ様の祠の近くになりました」


 タマ左右衛門さんの報告を聞いてホッとした。人も小者達も行きやすく、住み良い場所だ。


「出来上がるのに一月程掛かりますが良い物をと考えております」


 俺と嫁さん達と依能さんで土木工事は引き受けた。境内や階段も作らなくではならない。

 工事の日程を少しでも早めて、日常を取り戻してゆかないと周りがザワザワしてかなわない。

 屋敷で相談していると鈍い音がした。


「バキーン」


『結界破りだ』


 水美と俺が窓から飛び出すと、屋根の上に陰陽師が3人見える。


『降雹』


「降雹」


 俺と水美が同時に唱えた。屋敷の周りに5人居たが知世さんと善姫さんと依能さんがアッという間に片付けた。


『哲司、水郷城の屋根!』


 移動で屋根に跳び氷撃を2人で連射する。


『氷撃』


『氷撃』


「氷撃」


「氷撃」


 5人目は俺が叩き斬って終わった。


『真似をして結界破りで金貨集めだったのだが、妖力が弱くて結界破りが出来なかったのだろう』


 あの鈍い音は結界破りの失敗だったようだ。


『もっと良い陰陽師は居ないのかな?』


『皆、我々に倒された後ではないのか?』


 水美と俺でも結界破りは結構キツイのに間に合わせの陰陽師数人では無理だ。


『水郷城の周辺には居ないようだが、警備隊全員で調査』


 水郷城には6感持ちしか居ないので、洗い出しは楽だ。

 水郷境はタマ三郎さんが警備隊を率いて警戒に当たっている。そもそも、水郷境に直接飛び込める飛翔を持っている者は殆ど居ない筈なので被害は少ない。


『笹美城は真ともな飛翔持ちを、また減らしたようだな』


 水美がニヤニヤしている。


『哲司。復讐に行くぞ』


『行っても、余り持って無いと思うよ』


『良いではないか。今度は銀貨まで根こそぎ取る』


 水美に即されて透明化して笹美城の屋根に行くと、透明化した陰陽師が7人程屋根に居た。

 中途半端な妖術使いの透明化なので良く見える。


『術解除』


 水美が陰陽師達の術を解除して実体化した。


『氷撃』


『氷撃』


 俺と水美が氷撃を撃つと、透明化と飛行で精一杯だったのか結界が張られて無く簡単に墜落して行った。


『降雹』


 水美の降雹で残りの陰陽師も居なくなった。


『哲司。早く終わらすぞ』


 俺は水美と手を繋ぎ屋根に降りた。


『『術解除』』


 簡単に結界が無くなった。強い結界を張れる陰陽師が居なくなったようだ。


『『収集』』


 水美の皮袋が3袋取れた。


 矢が飛んで来ている。結界に矢が当たってカタカタ音を立てている。我々は上空に逃れて下を見ると弓兵が100人くらいで屋根をメクラ撃ちしている。


『哲司。ここで待て』


 水美が急降下して風撃4発で全員吹き飛ばしてしまった。


『たまには違った妖術も混ぜないと、如何にも水系の妖術使いで水郷城が疑られるからな』


『今更、遅いと思うよ』


 水美が笑っている。

 水の里に一度帰って皮袋を置き、笹美城の城下町に飛んだ。


『念の為に大店も片付けておこう』


『2店潰れたから4店だね』


 大店4店を片端から襲って行く。2店に一度水の里に戻って皮袋を取り換えて全店終わらせた。


 結果としては城と大店を合わせて、金貨は半袋くらいで残り満杯11袋と4分の1袋のの銀貨だった。


『凄く銀貨が多いな』


『前回金貨しか集めなかったので、銀貨なら安全と思ったのかも』


『なる程な。哲司が正しいのかも知れんな』


 面倒なので水の里の居間に置いたままにして、呼び出される前に水郷城に向かった。


 城の廊下でタマ左右衛門さんに会った。


「呼び出されたの?」


「はい。被害が無かったか調べろとの事で」


「有ったの?」


「いえ。水郷城も水郷境も被害は有りません」


「浸入者は?」


「水郷境は結局、御屋形様と奥様方が倒した8人だけでした」


 大した事の無い騒ぎだった。水郷城と水郷境は建物自体の結界が大掛かりな上に、宝物庫には別に結界が張られている。外から破ろうとしてもなかなか難しい。


 城の謁見の間に行くと不機嫌な水神様と天狗さんが待っていた。


「哲司殿。御苦労だったな。お陰で被害が無くて済んだ」


「笹美城は既に、まともな陰陽師を持って居ないと思われます」


「そうみたいだな。哲司殿がさんざん倒した後だからな。今回でまた減らしただろうしな」


「天狗の里にも3人くらい来たが、カラス天狗に退治される程の陰陽師だったぞ」


「妖術使いの在庫が無くなったのですよ」


「陰陽師と妖術使いを大量に揃えて力を維持して来た笹美城が遂に力を失ったのだろうか?」


 水神様が聞いて来た。


「そうだと思いますよ」


「周囲の国は笹美の国に攻め込むのかな?」


「しない可能性は高いでしょう。笹美の国に攻め込んだ時の水郷城の動きが読めないでしょうから」


「そうだな。我々でさえ決めていないからな」


「笹美城が美嶺の国に攻め込んだ時、我々が動きましたからね。それで様子見になると思います。普通は神様が怒るような喧嘩は売らないものですから」


「今回の報復はどうする?」


「難しいですね。これ以上、水を減らすと土地が干上がってしまいますし、範囲を広げると民が困ると思います」


「そうだな。様子見しか無いか」


 水神様が少しガッカリしているようだ。


「ですね。出来るだけ争い事は避けましょう。」


「そうだな。水郷城には軍は無いしな」


「攻めて来てくれれば我々だけで何万かの軍でも何とかなりますけど、攻める力は無いですから。でも干上がらせる事が出来ますので、相手も水郷城と喧嘩は躊躇すると思いますよ」


 これからも《笹美の国》と《樫の国》の両方を牽制していかないとならない事を考えると頭が痛くなった。




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