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第4章04話

第4章04話


 大々的に水神様達の新しい着物の御披露目式、元い神様会議が開かれ大盛況に終わった次の日に美嶺城の使いが来た。

 早速俺は水神様に呼ばれ話の打ち合わせとなった。


「美嶺城とは何処に在るのです?」


「笹美の国の隣だ。善姫の母君は美嶺の国の姫だったのだ」


「政略結婚ですね」


「笹美の国より小さいからな」


「そこから水郷城に使者ですか?」


「何か嫌な予感がしてな、哲司殿に来て貰ったのだ」


「何か予備情報は?」


「無い。善姫の同席を求めている」


「善姫さんの母君は今、どうしているのですか」


「善姫が向こうから帰る前に死んだと聞いている。詳しくは知らん」


「善姫さんに聴かなかったのですか?」


「善姫も良く分からんようだぞ」


 水神様が善姫さんを呼び出している。


「直接聞いてみようではないか」


 善姫さんが広間に入って来た。


「この度は哲司殿にまでご迷惑を掛け、申し訳御座いません」


 善姫さんは最近若く見えるようになって、25~6歳に見える。水郷城に慣れて来たのも有るけど、美人は得なのだろう。


「善姫の母君は何時、亡くなったのだ」


「私が攫われて直ぐと聞いてます」


「一度に美嶺の国の関係者が消えたのですか……」


「善姫の兄達の母君は違う腹か?」


 水神様は余り人の事を気にしないで発言する癖が有る。もう少し言い方が有るだろうに。


「はい。やはり死んでますが」


「何か怪しいですね」


「皆さん、病死と思いましたが」


「殺しおったな」


 水神様………


「まあ良い。そろそろ使者を呼ぶか」


 都合が悪いとすぐに話題を変える水神様に美嶺の国の使者は呼び出された。


「水神様、いきなりのお目通りを詫び、感謝致します。また水郷境の御屋形様にまで、ご迷惑をお掛けして申し訳無く思っております。

 申し遅れましたが、某は美嶺国で老中を勤める吉田開成と申します」


「良い良い。面を上げよ」


「我が君主が直接来るべき事ですが、笹美の国の手前そうも行かず某が名代で来た次第で御座います」


「それ程までに大事な話とは?」


「善姫の母君、義姫様の生存の可能性をご報告に参りました」


「何ですと!」


 善姫さんの大声に水神様も驚いている。


「1ヶ月程前に美嶺の国と笹美の国の国境で小競り合いが有り、その際に兵が小隊ごと違う世界に飛ばされ、先日その中の一人が偶然帰って参りました。

 その者の報告で義姫様を見たというのが有りまして……」


「母君は何処に?」


「ヤマコの村と……」


「母君は病死では無かったのか……」


「表向きは病死ですが、善姫様があちらに行かれて半年くらいで空間の割れ目に吸い込まれたと聞きます。笹美城は流行り病だったので火葬にしたと言い、お骨を送って参りました」


「……笹美城に送られたのなら私と同じ世界の可能性が高いのか?」


「我々の陰陽師も村は違うが、同じ世界の可能性が高いと言っております」


 吉田開成さんは、情報提供しか出来ないと涙を流して悔しがり帰って行った。


「水神様、私は一人でも母君を助けに参ります! 私は13年間生きる為に屈辱に耐え頑張りましたが、母君が20年以上あそこに居ると思うと我慢出来ません!」


「こんな事を言うのは辛いが、生きていたとしても精神的に壊れているかも知れぬぞ」


 水神様はもう少し言葉に気を付けるべきだと思う。


「その場合、私がこの手で斬ります!」


「……そうか。そこまで覚悟が有るならば手を貸そう……哲司殿、付いて行ってやってくださらぬか?」


「俺ですか?」


「そうだ。本来なら私が行くのだが、盆も近いしな。ホレ、宣姫や知世も行かせるとヤマコの二次災害の可能性も有る。それに神々の縄張りが有ってな、異世界への介入も禁止されておる。善姫と哲司殿で行くのが最良の選択であろう」


 何という無責任。呆れてしまった。


「哲司殿、申し訳無い」


 善姫さんが泣いている。


『これは断れ無いな』


 水美が面白がっている。


「……では、その方向で」


「知世には私からも説明しておくぞ」


 水神様が満足そうに微笑み、水美が腹を抱えて笑っていた。


『屋敷に帰って知世さんに説明しなくっちゃ』


『問題無いと思うぞ』


 水美が気軽に応える。


『だって、あんな美人と旅に出るんだよ』


『この世界では、妖怪の手付き女と関係を持つ男は居ない。だから用心の対象外だと思うぞ』


『呪われるの?』


『無い無い。かえって力を貰えるくらいだ。だが昔からの習慣で不浄の対象となっている』


『だから居ないみたいに扱われているの?』


『そうだ。哲司も善姫と殆ど話をした事が無いだろう? 善姫が遠慮してなるべく話さないようにしているのだ』


 どうりで、あんな美人が売れ残っている筈だ。


『善姫のように10年以上妖怪と関係の有った女が生きている場合、妖力を沢山持っていると言うか特殊でな。普通の人間だと関係を持つ度に妖力の影響を受けて病になったり、狂う男も多い。だから忌避されている。側に寄らない男も多いぞ』


 だから善姫さんは俺と話をしなかったのか。


『それじゃ水美だって同じじゃない』


『そうだ。精霊と関係を持つ男は少ないぞ』


 そりゃそうだ。会うだけでも大変だ。


 知世さんに事情説明をしに屋敷に帰ると、水神様に呼ばれて水郷城に行ったとのことだった。


『俺より先に話している……』


『水神様らしいではないか』


 隠し倉庫の在庫整理をしていると知世さんが水郷城から帰って来た。


「旦那様。水神様から話は聞きました。善姫さんは可哀想な身の上の方です。是非とも旦那様が力になってあげて下さい」


「違う世界に行くのだから、飛翔でもそんなに帰って来れない可能性だって有るんだよ」


「知世は大丈夫です。留守番は知世とヤヤさんで頑張りますから」


 どうせ殆ど水郷城に居るのだろうけど、本人がやる気を出しているのだから良しとして任せる事になった。


『善姫さんの母君を見付けるだけでも大変だよね』


『手掛かりが無いに等しいからな』


 知世さんも連れて、明日以降の相談しに水郷城に行った。



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